奈良市では能登半島地震の被災地に市職員の派遣を行っています。この度、先遣隊から第5陣までの派遣職員に対しアンケート(中間報告)を実施。被災地の現状把握につながる意見とともに、奈良市で災害が起こった際に活用できる貴重な意見が多く寄せられました。奈良市ではこれらのアンケート調査をもとに、今後の災害対応に反映します。
◆先遣隊から第5陣の派遣職員のうち、33名からアンケートを回収。約9割の職員が「派遣に従事して良かった」と回答し、今後の派遣についても64パーセントの職員が「また派遣に従事したい」と回答。
◆奈良市の災害対策に生かせる点として、「市役所内の災害の室内レイアウトの想定の必要性」、「ネット環境の遮断時に、本部と避難所間の伝達手段を複数用意する必要性」、「余震が続くなか、他県からの派遣職員(支援者)が被害に遭わないようにする必要性」、「現地ニーズの情報分析、それを決定権のある上層部に正確に伝えられる能力の育成」等があげられました。
◆災害時の市の体制に生かせる点として、「受け入れ自治体に支援物資は届くが、荷捌きに時間と人員を要し、被災者になかなか届けられなかった」等、受け入れ自治体の受援計画の大切さを指摘する意見も。「奈良市業務継続計画」「奈良市災害時受援計画」を策定していますが、今回の経験を生かして見直しを図っていく機会と考えており、併せて避難所配置職員の人数や交代の考え方等体制についても、見直しを図る必要性があると考えています。
◆約1週間の派遣においては、派遣職員にも相当な負荷がかかります。奈良市では派遣職員に対する事前説明会を行うほか、メンタルヘルス対策を行う等の配慮をしています。
具体的には
1、 派遣前・派遣中の所属・同僚が配慮すべき注意事項(派遣先の状況の十分な説明、現場での急性ストレス時の対応等)
2、 帰任後の注意事項(十分な休養、活動への評価)等を定めています。
◆また帰任後、1週間後と1か月後に「ストレスチェック表」の記入を依頼し、職員のメンタルヘルスのチェックを行っています。状況に応じ保健師の面談等を行います。
● 被災地支援に参加してよかったですか
● 寄せられた意見
◆災害時の被災地支援という経験は人生において初めてであったが、実際に被災された方々に接することで、深刻な状況を知ることができ、また、それらに対する支援の重要性を直に体感することができた。
◆被災者の方々からの感謝の声を頂くにつれ、参加してよかったと思えるようになり、被災地で日々の支援業務に取り組むことの意義の深さを知ることができた。
◆被災地、避難所の現状を自分の目で見ることにより、発災初期の対応等、自治体職員としての心構え等を学ぶ貴重な経験ができた。
◆現地では、被災者だけでなく、市職員も大きく疲弊しており、当該職員が担う業務の一助になれたことで、参加してよかったと感じられた。また、避難所の運営、被災後の市役所の状況、支援物資の届き方など、被災現場でしかわからない経験ができた点も、今後の業務遂行における新たな知見になった。
◆小さい子どもがいる職員は子どもを実家に預けて業務にあたっておられた。
◆派遣された避難所では手が足りていたため、交通誘導を行うのみだった。被災地側のニーズを拾っていくことが大切だと感じた。
● 消耗品、携行品や装備品で、あったらよかったと思うものはありますか
◆派遣職員用の飲料水や食料
◆ガムテープや養生テープ、軍手、カイロ等が不足して困った。消耗品は日数+α必要である(※対応済み)
◆トラック等から支援物資を積み降ろしするフォークリフト(運転免許の取得)
◆利用する車両すべてにカーナビが必要
◆長靴(派遣が決定し、自前で調達している職員が多くいた)
◆ビブス(釣り用ベストの様なもの)役割や職種のプレートにより身分を明示できるため。
● 現地での活動を行う上で、困ったことはありましたか
◆片道1時間半以上かけての通勤は拘束時間も長く、疲労も蓄積しやすい。
◆他の自治体の応援職員と意見が違う時、強く自分の意志を押し通すことができなかった。
◆災害現地で使用する車両について、商用タイプ(普通貨物車)ではなく、乗車人員が多い(ワンボックス)をタイプの車両を用意してほしかった。
◆あまり深く運営に入り込み過ぎないようバランス感覚が必要と感じた。
◆現地職員との関係構築に時間と気遣いを擁した。
◆奈良市の職員としては1人で行動する日があり、やや不安があった。
◆車両での移動の際、走破性が足りず、現地の方々に車両を押してもらった事態が発生した。
● 現地での活動を行う上で、学んだことはありましたか
◆災害発生から10日以上経過しても、被災地では断水が続いており、改めて水の大切さを学んだ。小中学校のプール残水の生活用水(飲料水を除く)への活用。
◆悩む時間もなく、すぐに回答を出す決断力が必要と感じた。
◆被災者が避難したところが避難所になると学びました。想定外の自主避難所がたくさんできると知りました。
◆時間が経つとともに、被災者のニーズが変わっていくのだということを知りました。
◆奈良市でこの規模の災害が起こった際には、高齢化や地域のつながりがその後の復興に非常に影響すると思います。業務を行う上でも平時からどのような準備が必要となるか、コミュニティの醸成と健康管理、危機管理をどのように融合させていけばよいかと考え、学ぶ機会となった。
● 奈良市の防災対策に反映すべきことはありますか
◆七尾市の避難所対応を見て、本市の避難所対応においても、シフトを散らせる必要があると感じました。現在、本市では、避難所配置職員が開設要員2名、交代要員2名の体制かと思いますが、配置職員に当たっていない職員は、避難所対応にあたる認識がないものと思われます。
◆庁舎内の什器の固定、災害時を想定した室内のレイアウトをすぐにでも検討するべき。避難訓練もしていない現状では大きな人的被害が出ると思う。市役所の被害が大きいと、その後の住民への支援が十分にできないと知った。
◆避難所によって、ネット環境が遮断され、ポータルサイトが見られないことによって、町役場本部からの決定事項を受け取ることができず、防災無線を聞いて初めて知る等の状況があった。本部と避難所間の伝達方法を複数準備しておく必要がある。
◆被災した場合の支援の方法などあらかじめ対策できることをしておくこと。
◆現地ニーズの情報分析、それを決定権のある上層部に正確に伝えられる能力。
◆地震、余震が続く中、危険を感じる場面がありました。職員の安全確保の視点で、「やめ際、引き際の判断」が難しいなと思いました。 支援者が被害に遭わないようにすることは絶対だと思います。
◆不慣れな土地での移動方法(他自治体では、タクシーを利用するなどしていた。)
◆宿泊先は極力被災していない地域から支援に入れた方が、体力的にも精神的にも休息ができる。派遣日数は7日以内(短すぎても活動が継続しにくいし、長すぎると疲弊するため)。
● 今後、被災地支援の要請・協力依頼があった場合、参加しようと思いますか
参加したい
◆断る理由がないです。自治体職員として積極的に参加したいです。
◆今回の派遣のように、少しでも多くの職員が直接的・間接的に被災地支援に関わることによって、市としての防災意識や防災力が高まると思いました
◆被災地に赴き、被災者(七尾市職員含む)の人から「奈良からはるばる来てくれてありがとう」といった感謝の声を頂くにつれ、参加してよかったと思えるようになり、被災地で日々の支援業務に取り組むことの意義の深さを知ることができたため。
◆今後奈良市でも同じような災害が起こった場合にどうすればよいかを考える良い機会になったので、今後も派遣等があれば、積極的に参加したいと思います。
どちらでもない
◆家庭の状況等によって、参加できるか否かは分からない。
◆派遣時期等によって、通常業務に支障をきたすことがあるため。
◆被災地での支援は、日常の業務では得られない、多くの知見を得ることができる機会であるため、
同一の職員が行くより、未経験の職員こそ積極的に行くべきと思いました。
◆ある程度準備期間があるのであれば参加したい。防寒具等の準備等についても、自己負担があるままだと派遣期間が長くなるほど参加が難しい。
参加したくない
・派遣先において、余震や津波が発生した際の避難ルートが確保されていないことへの不安があった。トンネル内の渋滞中には恐怖を感じた。
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