がん抑制遺伝子p53をスパイクタンパク質のサブユニットがブロック

新型コロナのスパイク蛋白はがん細胞の生存を助ける=ブラウン大学のプレプリント

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質が抗がん作用を妨げ、がんを促進する可能性がある。最近発表されたブラウン大学による細胞研究のプレプリント(査読前原稿)で明らかになった。

ブラウン大学がんセンター所長ワフィク・エル・デイリー博士率いる著者らが、がん細胞をスパイクタンパク質のサブユニットに曝露したところ、サブユニットががん抑制遺伝子であるp53をブロックし、がんの生存と増殖を促進する可能性があることを発見した。

p53はがんに関わる最も重要な遺伝子で、がん細胞の増殖を阻止し、DNA修復を促進する。

「p53を阻害すると、がんの増殖だけでなく発生も促進する可能性がある」とエル・デイリー博士はエポックタイムズに語った。

化学療法を受けた場合でも、スパイクタンパク質のサブユニットを含むがん細胞は生存可能性が上がった。

「いくつかの化学療法剤による治療後、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のS2サブユニットの存在下でがん細胞の生存率が上昇することが分かった」とエル・デイリー博士は述べた。

スパイク蛋白のサブユニットががん抑制遺伝子をブロック

SARS-CoV-2のスパイクタンパク質は、S1とS2という2つの領域からなる。この研究では、研究者らはいくつかのヒトがん細胞株(肺がん、乳がん、結腸直腸がん、肉腫がん細胞)におけるS2の影響をテストした。

すべての細胞は正常なp53遺伝子を含むように改変され、一部にはスパイクタンパク質S2のDNAが導入された。

続いて研究者らは、化学療法薬を使用してp53遺伝子を活性化し、がん細胞死を引き起こした。

しかし、スパイクタンパク質のS2を含むがん細胞は、がん抑制遺伝子と化学療法の影響を受けても生き残る傾向があることが分かった。また、これらの細胞でp53の活性が低下していることも観察された。

なぜスパイクタンパク質のS2を持つがん細胞の生存率が高かったのかはまだ分かっていないが、エル・デイリー博士は、「S2タンパク質がp53の活性を妨げていると見ることができる」と述べた。またS2タンパク質には、有毒な化学療法の存在下で「細胞の生存を促進する他の効果」を引き起こす可能性もあるという。

コロナワクチンも同様の影響をもたらす可能性

エル・デイリー博士の研究は、SARS-CoV-2またはそのウイルスのサブユニットががんの活動を促進する可能性があるかどうかをテストするために設計された。

しかし、この研究はさらに、新型コロナのmRNAワクチンやタンパク質ワクチンのような治療薬が同様の影響をもたらす可能性があることをも示唆した。

「何に由来するかに関係なく、スパイクタンパク質を研究することが私たちの目標だった」とエル・デイリー博士はエポックタイムズ に語った。「感染やその他の方法によってヒト細胞内で発現する可能性のあるスパイクタンパク質に焦点を当てた。これはワクチンで作られたスパイクタンパク質にも当てはまる」

単純な細胞培養研究だったことを含め、研究には多くの限界があることをエル・デイリー博士は注意深く強調した。さらに、スパイクタンパク質にはウイルス変異株やワクチンごとに様々なバリエーションがあるため、健康への影響についてはさらなる研究が必要だ。

より徹底的な調査が必要

スパイクタンパク質がS2に曝露された場合、ヒトのがんも同様のリスクを伴うのかとの質問に対し、エル・デイリー博士は、現在のデータは予備的すぎて知ることができないと述べた。

「がん感受性をより徹底的に評価するには追加の動物実験が必要になるだろう」

博士はまた、正常な細胞型の振る舞いと、さまざまなスパイク変異体に対するそれらの反応を調べたいと考えているほか、将来のワクチンによって生成されるスパイクタンパク質がp53の活性を抑制しないことを望んでいる。

エル・デイリー博士は、これらの潜在的ながん促進効果は可逆的かどうか、スパイクタンパク質が細胞内でどのくらいの期間存続するか、そしてこれらのリスクを軽減できるかどうかなどの疑問はまだ解決されていないと付け加えた。

「ロングコビッド(コロナ後遺症)や、ワクチンを繰り返し投与することによって安定したRNAが正常細胞に導入されることに関して疑問がある」という。

がんとコロナパンデミックを関連付けるいくつかの研究

最近のいくつかの研究では、新型コロナウイルス感染症のパンデミックと同時期のがん増加が示されている。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、死因コードを調査した2つのプレプリントで、2020年にがん新生物(新たなかつ異常な組織増殖)による超過死亡のわずかな増加が判明した。

アメリカの若者における新生物による超過死亡率は、2020年には1.7%だったが、2021年にはほぼ3倍の5.6%に増加し、2022年には7.9%に増加した。

あるプレプリントは、「2021年以降、新生物による死亡の増加につながる新たな現象が15~44歳の米国人に存在しているようだということをこの結果が示している」として、新型コロナワクチン関与の可能性をほのめかしている。

アメリカの高齢者に関する別の追跡調査でも、同様の結果が示されている。

先月8日にCureus誌に掲載された日本の査読済みの研究では、新型コロナmRNAワクチンの3回目接種が実施された2022年以降に日本でがん死亡が増加したことが観察された。

2010~19年にかけては一般的ながんにおける超過死亡率は減少しており、パンデミックの最初の年にはがんの超過死亡はなかったが、2021年にはいくつかの種類のがんの増加が、2022年にはさらなる増加が観察され、ワクチンの集団接種と同時発生していることを論文著者らは指摘した。

著者らは、乳がんによる死亡率の上昇が特に顕著であることを発見した。乳がんによる死亡率は2020年に大幅に減少したが、2022年には超過死亡に転じた。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。