マスト細胞活性化症候群(MCAS)という病気は様々な症状があるため、診断には時間が必要です。しかし、指導された一連のステップに従うことで、適切な診断に向かう道を築くことが可能です。
もし多くの説明し難い症状の根本的な原因がMCASではないかと疑っている場合、この記事が診断を受けるためのステップを理解する手助けになれば幸いです。
まず、MCASの診断に至るまでには時間がかかることを覚えておいてください。これは、早く答えを求める患者にとってはストレスに感じるかもしれません。しかし、慎重で系統的なアプローチを通じて診断を進めることが、正確な診断を確実にし、適切な治療計画を立てる上で最も良い方法です。
MCASを診断するための4つのステップ
MCASの診断を目指す際には、通常以下の4つのステップに従います。これらのステップが全ての患者に必ずしも必要なわけではなく、一般的には正式な診断に至るまでのプロセスです:
1、全ての臨床症状を特定し、それらを認識する。
2、治療に対する反応を観察し、詳しく調べる。
3、炎症メディエーター(仲介物質)検査を受ける。
4、他の可能性のある診断を考慮し、排除する。
それでは、これらのステップについて1つずつ見ていき、それぞれが具体的に何を意味するのかを考察していきましょう。
ステップ1:症状の確認
MCASの診断にあたって最初に行うべきことは、様々な身体のシステムに現れる臨床症状を把握することです。MCASに悩まされている多くの患者は、原因となる要因によって症状が現れたり消えたり、またその重さが時間と共に変わることを経験します。MCASは体のあらゆるシステムに影響を与える可能性があり、次に挙げる症状が含まれます:
◆全身的な症状
・疲れやすさ
・全身の不調感
・炎症反応
・食べ物、化学物質、薬、その他の環境要因に対する過敏症
・体温の調節がうまくいかない
・リンパ節の腫れ
・体の腫れ
◆筋骨格系の症状
・筋肉痛
・骨の痛み
・骨粗鬆症および骨密度低下
・関節炎
・関節の異常に柔らかい
◆皮膚に関する症状
・じんましん
・赤みがかった肌、紅潮、または腫れ
・発疹
・あざ
・灼熱感
・デルモグラフィー(皮膚を引っ掻いた後に残る白いまたは赤い痕)
・傷が治りにくい
・酒さ様皮膚炎
・乾癬
・湿疹
◆循環器系
・心拍数の急増
・動悸
・めまい
・低血圧
・失神
◆消化器系
・下痢
・便秘
・腹痛
・おなかの膨満感
・吐き気
・嘔吐
・胃酸逆流
・飲み込む際の困難
・喉の違和感
・栄養吸収不良
・食物に対する過敏性
・食物アレルギー
・過敏性腸症候群
◆神経系
・頭痛や偏頭痛
・思考のもやもや
・記憶力の問題
・不安
・抑うつ
・集中力の欠如
・神経痛
・不眠
・めまい
・耳鳴り
・手足の痺れやチクチク感
・体温の変動
◆呼吸器系
・副鼻腔の詰まり
・副鼻腔の腫れ
・咳
・息切れ、呼吸困難
・喘鳴
・喘息
◆眼
・目のかゆみや涙目
・赤みや目の炎症
・視覚のぼやけ
◆生殖器系
・不妊
・子宮内膜症
・月経の問題
・ホルモンバランスの乱れ
◆尿路系
・排尿時の痛みや熱感
・尿路の炎症
MCASに関連する可能性のある他の症状
MCASには多くの症状が関連しています。MCASが病気を引き起こしているのか、あるいは病気の症状がMCASに似ているのかを明らかにすることは難しいのです。しかし、この相関関係を理解することで、自分が経験していることを理解できるようになります。以下に挙げる状態が、MCASに関連している可能性があると考えられます:
・自閉症スペクトラム障害
・リウマチ性関節炎、ループス、橋本病、ギラン・バレー症候群、バセドウ病、シェーグレン症候群、多発性硬化症などの自己免疫疾患
・特定のがん
・慢性ライム病
・クローン病
・自律神経失調症や体位性頻脈症候群
・エーラス・ダンロス症候群
・線維筋痛症
・間質性膀胱炎
・カビによる疾患
・多重化学物質過敏症
・筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群
・2型糖尿病
ステップ2:治療に現れる反応
この診断の段階で重要なのは、患者が特定のMCAS治療に良い反応を示した場合、その人がMCASを患っている可能性が高いと考えられるという点です。ただし、これは全ての人に当てはまるわけではありません。治療で現れる反応は人によって異なりますので、MCASの症状を悪化させない適切な治療法を見つけるために、医療関係従事者と連携することが極めて重要です。
MCAS治療のための様々な薬剤には、以下のようなものがあります:
・肥満細胞安定化薬(クロモグリク酸ナトリウムやケトチフェンなど)
・プロスタグランジンを抑える薬剤(ナプロキセン、イブプロフェン、アスピリンなど)
・ヒスタミンH1受容体拮抗薬(ジフェンヒドラミン、ロラタジン、セチリジン、フェキソフェナジンなど)
・ヒスタミンH2受容体拮抗薬(シメチジン、ファモチジン、ニザチジンなど)
・ロイコトリエン受容体拮抗薬(モンテルカストやザフィルルカストなど)
これらの薬剤は適切な量で使用することで、マスト細胞のコントロールとバランスを取り戻してくれます。
また、以下のような天然成分のサプリメントが抗ヒスタミン効果を持ち、マスト細胞を鎮めるのに役立ちます:
・ビタミンC
・イラクサ
・生はちみつ
・ケルセチン
・ルテオリン
・レスベラトロール
・クルクミン
・ジアミンオキシダーゼ
ただし、治療にあたっては、根本的な原因に対処しているかを確認するため、担当医師と話し合うことが重要です。
根本的な原因への対処
以前に触れた通り、MCAS患者はそれぞれ異なるため、MCASを引き起こす根本的な要因も人によって異なります。これらの原因が解決されるまでは、患者は症状の悪化を繰り返すことになります。根本的な原因は多岐にわたりますが、特に共通して見られる主な原因は以下の通りです:
・食べ物の誘因
・遺伝的要因
・栄養素の欠乏
・感染症と毒素
・ホルモンバランスの乱れ
・ストレスや幼少期のトラウマ
・低酸素状態(酸素不足)
◆食べ物の誘因
多くの人は、自分の食べたり飲んだりするものがMCAS症状を引き起こす可能性に気づいていません。食べ物は間違いなく薬の役割を果たしますが、同時に症状を悪化させることもあります。ワインやビール、チョコレート、魚介類、サラミ、なす、トマト、イチゴなどヒスタミン含有量が高い食品を控えることは、良いスタートです。さらに、長期保存が可能な加工食品はヒスタミンが多く含まれる可能性があることも忘れないでください。
食べ物の誘因を特定すると、何を避けるべきかを知り、これにより安心感が得られ、また、炎症を引き起こすことなく体に栄養を与えサポートしてくれる新しい食べ物を試す新たな機会が開かれます。
◆遺伝的要因
医師と協力して適切な遺伝子情報を得ることは、MCASへの対応において非常に有益です。個人の遺伝子と検査データを分析することで、患者一人ひとりのニーズに合わせた治療計画を立てることが可能になります。ただし、遺伝的変異を持っているとしても、それが必ずしも現れているわけではありません。環境要因が遺伝子の活性化に重要な役割を果たしています。
◆栄養素の欠乏
食物アレルギーや食べ物に対する過敏症を抱える患者は、様々な重要栄養素が不足する状態になりがちです。便秘、栄養吸収不良、下痢などの消化器系の問題は栄養素のバランスに影響を及ぼし、腸が栄養素を適切に吸収できなくなります。栄養不足を特定することは、治癒への具体的な一歩となります。
◆感染症と毒素
患者が潜在的な感染症、カビ、または重金属による毒性に直面している場合、免疫システムが過剰に反応し、MCASの発作を頻繁に引き起こすことになります。ライム病、寄生虫感染、カンジダ、細菌の異常増殖など、一般的な感染症がMCASを誘発することがあります。適切な食事を心がけていても、感染症や環境毒素の問題が解決されなければ、症状が改善されないことがあります。
◆ホルモンバランスの乱れ
ホルモンはマスト細胞に重要な影響を及ぼします。多くの女性は、エストロゲンのレベルが高くなる月経周期中に、MCASの症状が顕著になりやすいです。合成的な治療法を探求するよりも(更なる炎症を引き起こす可能性があるため)、自然な方法でホルモンバランスを整えることのほうが良いでしょう。
◆ストレスや幼少期のトラウマ
現代生活がストレスに満ちていることはよく知られていますが、特に幼少期のトラウマは、ストレスや環境要因に対する体の感受性を高めることがあります。これはマスト細胞の過剰活性につながることがあります。ストレスを減らし、幼少期のトラウマを克服することで、神経系が落ち着き、マスト細胞の安定に繋がるでしょう。
◆低酸素状態(酸素不足)
気道の閉塞により呼吸が困難な患者は、適切な酸素を取り込むことに苦労しています。また、貧血も体の酸素供給を低下させます。これらの低酸素状態は、体にストレスを与え、炎症を引き起こす原因となっています。
ステップ3:炎症メディエーター(仲介物質)検査
検査はMCASの診断に役立つ方法ですが、血液や尿の検査で問題点が大きく変動する可能性があるため、確実ではありません。マスト細胞の仲介物質は、患者が症状を感じている時にのみ増加し、その後は正常値に戻ることがあります。最も精度の高い検査は、患者がMCASの症状を呈している時に慎重に扱われた検体を用いるほうが検査の精度が最も高いです。よく行われる検査には次のものがあります:
・N-メチルヒスタミン(24時間尿検査)
・プロスタグランジンD2、DM、F2α
・血中ヒスタミン
・血中トリプターゼ
・血中マトリックスメタロプロテアーゼ-9
・血中ロイコトリエン
・血中ヘパリン
皮膚テスト
一般的ではないのですが、MCASの診断に皮膚テストを推奨する医師もいます。これは、皮膚の反応を観察するために、患者の皮膚を軽くなでる手法です。患者の背中に2本の線を軽く引っ掻いて、直ちに赤く腫れ上がる反応を見ることで、デルモグラフィー反応があるかを確認します。これがMCASの存在を示しますが、このテストだけでMCASの診断を下すことはできません。それでも、さらなる評価が必要かどうかを判断するのに役立ちます。
ステップ4:他の病状や診断の可能性を排除
MCASの診断を目指す際には、他に考えられる病状や、患者が複数の病気を抱えている可能性も念頭に置くことが大切です。MCAS患者がエーラス・ダンロス症候群やマルファン症候群といった結合組織の障害、2型糖尿病、体位性頻脈症候群、血管炎、アジソン病、その他の自己炎症性疾患を併発していることも少なくありません。
これら4つのステップがMCASの正確な診断を約束するものではありませんが、医師と共に進めるべき具体的な手順のガイドラインとしては役立つでしょう。このシリーズを通じて、MCASの治療における食事の配慮や、食べ物による誘因を避ける方法について、今後もさらに詳しく解説していきます。
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