COVID-19とワクチンに起因する稀な自己免疫疾患が増加:研究結果

イギリスのヨークシャー州では2020年から2022年にかけて稀な自己免疫疾患の症例が急増し、2021年にピークに達しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への罹患と新型コロナワクチンに起因してこの増加が起こった可能性が、ランセット誌の姉妹誌であるeBioMedicineに掲載された最近の研究で明らかになりました。

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は、筋力低下、発疹、急速に進行する肺疾患を特徴とする、非常にまれな炎症性疾患です。

2019年、人口360万人のヨークシャー州では、2人の陽性者が報告されました。2020年には8人で、2021年には35人が新たに発症し、ピークに達しました。2022年には16人に減少しました。

この新たな自己免疫疾患の症例は、新型コロナウイルスとワクチンのリボ核酸(RNA)の相互作用から発生した可能性があると、同研究の上席著者であるリーズ大学医学部の臨床教授 デニス・マクゴナグル氏はエポックタイムズに語りました。

この研究以外にも、新型コロナウイルス感染症への罹患やワクチン接種後に新たな抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の症例が記録された事例研究がいくつかあります。

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎とは

抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎とは自己免疫の状態で、身体が自分自身を攻撃する病気です。明確な原因なしに発症することが多いです。

皮膚筋炎は皮膚、筋肉、肺を侵す傾向があります。抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎は急速に進行する肺疾患を伴うため、予後不良です。

MDA5は筋肉や組織の外側に存在するタンパク質で、肺において特に顕著です。そのため、身体がMDA5を攻撃する抗MDA5抗体を形成すると、関連する臓器や組織の状態が悪化する可能性があります。

MDA5は新型コロナウイルスのRNAなどの外来RNAを検出し結合します。検出した場合、外来の侵入者、あるいはワクチンと闘うよう他の免疫細胞にシグナルを送ります。

その理由について、マクゴナグル博士は「MDA5がウイルスRNAの受容体あるいはドッキング部位であり、これが何らかの形でMDA5に対する抗体を誘発するからだ」と語りました。

新型コロナウイルス感染症の場合、MDA5がRNAに結合することにより、MDA5活性が過剰になる可能性があると、カリフォルニア大学サンディエゴ校ネットワーク医学研究所所長で、研究のもう一人の責任著者であるプラディプタ・ゴーシュ博士はエポックタイムズに語りました。

新型コロナ患者は肺液中のMDA5遺伝子活性が高いことが示され、さらにウイルスが新たなMDA5症例を誘発した可能性が示唆されました。

抗MDA5以外にも、15種類の自己抗体が類似の皮膚筋炎に関与している可能性があります。新型コロナおよびワクチン接種におけるMDA5の役割が、パンデミック期間中に抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎症例のみが増加し、皮膚筋炎に関与する他の自己抗体が増加しなかった理由の説明となるかもしれません。

2020年から2022年にかけて、ヨークシャー州の新規の抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎患者60人全員を診断したところ、全員が症状を発症しました。

40%以上が間質性肺疾患を発症し、予後が悪化しました。この研究が発表されるまでに半数が死亡しました。

著者らは、パンデミック期間中の抗MDA5症例はパンデミック前の症例とは若干異なっていることを指摘しました。

パンデミック前に比べ、パンデミック期間中に報告された抗MDA5症例は肺疾患の割合が低く、死亡率も低かったとゴーシュ博士は述べました。この病気は、以前はアジア人が多かったのとは対照的に、白人にも発症しました。

パンデミック時期の患者は、発疹、手指の血流減少、筋肉痛などの皮膚関連症状を訴える傾向があります。

増加の偶然一致

2021年4月から7月にかけての抗MDA5症例のピークは、ヨークシャー州における新型コロナワクチンの接種とかなり一致しており、「2021年中に同地域でSARS-CoV-2陽性率が高かった」時期に発生したと著者らは報告しています。ヨークシャー州では2021年1月にワクチン接種が開始され、10月に終了しました。

ヨークシャー州の人口の約90%がワクチン接種を受けており、60例中49例で新型コロナワクチン接種が確認されていました。

対照的に、新型コロナウイルスの感染が確認されたのは60人中15人だけでした。

当時、多くの人が新型コロナ陽性でしたが、著者らは、新型コロナ陽性者が増加した直後に抗MDA5陽性者が増加したわけではないことを指摘しています。

その他の報告

ヨークシャー州の報告に加え、他の研究でも抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎と新型コロナウイルスおよびワクチンとの関連性が示されています。

Frontiers in Immunologyに掲載されたイタリアの症例研究では、新型コロナウイルスの感染後1ヵ月で抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎を発症したワクチン未接種の高齢女性の症例が報告されています。女性には関節痛が起きたほか、胸、顔、手に発疹と病変が起きました。

著者らは、様々なサイトカインの活性化に関与するMDA5が、SARS-CoV-2に暴露されると炎症反応を促進する可能性があると主張しました。

SN Comprehensive Clinical Medicineに掲載された別の論文では、新型コロナワクチン接種1週間後に発症した抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎の症例が報告されています。研究者らは、SARS-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体が、MDA5のようなヒトのタンパク質と交差反応する可能性があるという仮説を立てました。

しかし、ゴーシュ博士は、スパイクタンパク質は他の自己免疫疾患にも関与しているが、抗MDA5疾患はスパイクではなくMDA5に対する抗体によって引き起こされる、と述べました。

「ウイルス、その粒子、そのRNA/タンパク質、さらにはワクチンとして使用される主要成分をコードするRNAに対して、なぜ、あるいはどのように私たちの身体が反応するのかを理解し始める前に、やるべきことはたくさんあると思います」とゴーシュ博士は説明しました。

ニューヨークを拠点とするエポックタイムズ記者。主に新型コロナウイルス感染症や医療・健康に関する記事を担当している。メルボルン大学で生物医学の学士号を取得。