オミクロン第一波以降、マスクに効果はなかった: 新研究

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが始まったころ、ウイルス感染を防ぐ公衆衛生対策としてマスク着用が推奨されました。しかし、オミクロン株が流行の主流になった時期に、マスクは感染リスクの低減に効果がなかったことを新たな研究が示唆しています。

科学雑誌PLOS ONEに発表された研究で、オミクロン株がSARS-CoV-2の優勢な変異株となった2021年12月に、マスク着用を含むいくつかの感染危険因子が大きく変化していたことが判明しました。

パンデミックの初期には感染リスクの減少と関連した介入が、なぜ後期には予防効果の低下やリスク増加に関連したのでしょうか。研究者らはその理由を説明するために、英国立統計局(ONS)から得た2週間ごとにCOVID-19の検査を受けた20万人の調査データを調べました。

ONSは罹患率に関するデータを公表するとともに、特定の危険因子がCOVID-19検査陽性と関連しているかどうかを調べるために、2021年11月から2022年5月にかけて、環境や習慣に関する質問を行いました。最後の数週間にはデルタ株、オミクロン株BA.1およびBA.2など、複数のSARS-CoV-2亜種が存在していました。

研究によると、2021年11月以前に職場や学校、密閉空間でマスクを着用し続けていた大人や子供では感染リスクが減少しましたが、オミクロンの第一波が発生した後は減少しませんでした。

オミクロンの第1波では、マスクを着用しなかった場合、感染リスクは成人で約30%、小児で10%上昇しました。しかし、2022年2月以降のBA.2亜種によって引き起こされた第2波では、マスク着用は成人には予防効果がなく、小児には感染リスクを増加させる可能性がありました。

「パンデミックの初期には、COVIDに感染する危険因子について多くの研究が発表されましたが、最初の1年くらいを過ぎてからの研究ははるかに少なかったのです。我々の研究は、オミクロンBA.2株が優勢になった頃に、いくつかの危険因子に変化があったことを示しています」と、筆頭著者であるイースト・アングリア大学・ノリッジ医科大学のポール・ハンター博士はニュースリリースで述べています。

危険因子の変化が説明となりうる

論文の責任著者で、英国ノリッジ医学大学の公衆衛生上級研究員であるジュリー・ブレイナード氏は、エポックタイムズへの電子メールで、いくつかの危険因子がパンデミックの全期間を通じて変化していることが、今回の調査結果の説明となりうると説明しました。

「事態が収束しつつあったというのが、ベストな推測です。 英国では2021年12月までに、ほとんどの人が複数回のワクチン接種を受け、自然感染を少なくとも1回は経験していました」とブレイナード氏は述べました。

「COVIDパンデミックが始まったとき、誰でも感染してしまうというのがその異常さでした。軽症の人もいれば、医療逼迫を起こしかねない重症患者も多くいました。ソーシャルディスタンスやマスク着用は完全な防御にはなりませんでしたが、おそらく2020年に多くの感染を防ぎ、優れたワクチンが開発されるまでの時間稼ぎには役立ったでしょう」

「しかし、ワクチン接種と自然感染が繰り返されたことで、2022年初頭には重症度は平均的にかなり落ち着きました。実際、軽症であるため、無自覚のうちに感染する人も多くいたでしょう。家庭内でもそうだったはずです。家でマスクをする人はほとんどいません。具合が悪くないのに、最も近しい相手の前で警戒を解かない人はいません」

ブレイナード氏によれば、新しく出現した病気に見られるように、自然な流行の進展もまた、後期の変異株と初期の変異株とでは感染経路が異なるという今回の研究結果を説明する可能性があります。例えば、後期の変異株の感染力や伝染力が強くても、時間が経てば軽度になる可能性があります。さらに、ウイルスが気道に異なる影響を与える可能性もあります。

SARS-CoV-2のようなウイルスに対して恒久的な免疫が形成されないことも要因の1つだと、ブレイナード氏は述べています。ウイルスが人の間で広がり続ける限り、軽症のCOVID-19感染を一生繰り返す可能性があります。

「伝染力が強く、非常に一般的で、軽症となる可能性が高い感染症というのは、小さな社会集団や家庭内で広まるのにうってつけです。信頼のおける社会集団内で伝染する可能性が非常に高いため、家庭外でのマスク着用はそれほど効果的な予防手段ではないかもしれません」

マスクによるリスク軽減はわずか

ブレイナード氏と共著者のポール・ハンター氏は、マスク着用に「あまりにも大きな信頼」を寄せている人々がいると感じているとエポックタイムズに語りました。彼らの2020年のシステマティック・レビューによれば、感染者と感受性者の双方がマスクを着用した場合、マスクはインフルエンザ様疾患の感染リスクを約19%とわずかに減少させるだけでした。

ハンター博士は、2002年までさかのぼる世界保健機関(WHO)の声明を繰り返し引用してきました。その声明によれば、非薬理学的介入は伝染病が流行するまでの時間を稼ぐだけであり、薬理学的解決策が実際に伝染病を縮小させ、罹患率と死亡率を減少させるといいます。

「マスクを熱心に勧める人々に遭遇した際は困惑しました。マスク着用に込めた深い信頼と、マスクをつけるか否かに対する怒りに対して困惑したのです」とブレイナード博士はエポックタイムズに語りました。

同時に、論文の調査結果に関して「多くのことは驚くほどではない」と彼女は述べました。

「私たちはこれまでの研究によって、伝染病がどのように発生していくかを知っていました。伝染病は自然にピークを迎えて沈静化しますが、再流行することもあります。また、新しい微生物感染症は時間の経過とともに伝播性が高まり、危険性が低下する傾向があること、そして集団が新しい病気に対する耐性を獲得することもわかっています」

「さらに、呼吸器疾患は非常に伝染しやすく、封じ込めが難しいことも分かっています。ほとんどの伝染は、物理的距離が近い人々の間で発生します」

政治学の背景を持つ弁護士兼調査ジャーナリスト。栄養学と運動科学の追加認定を取得した伝統的な自然療法医でもある。