食品添加物は本当に安全? 見過ごせないリスク(2)

(続き)

GRASに隠されているリスク

客観的に言いますと、一部の食品添加物には長所があります。

「防腐剤は食品保存に役立ち、その効果が悪影響を上回る場合があります」とダンフォード氏は述べています。例えば、適量の亜硝酸塩を添加することで、ベーコンなどに含まれるボツリヌス菌による中毒を防ぐことができます。ボツリヌス菌がもたらす健康被害は添加物の亜硝酸塩よりも大きいです。

彼女は「それと比べて、単純に色や食感、風味をよくするための添加物は人間にとって必要ない」と指摘しました。

超加工食品の過剰摂取による健康被害は科学研究によって証明されています。例えば、早死、心血管疾患、呼吸器疾患、慢性腎臓病、メタボリックシンドローム、そしてがんなどとの関係性が明らかになっています。

フランスでは4.5万人の中高年者を対象とした研究で、超加工食品の摂取量が10%増加するごとに早死のリスクが14%増えることが示されています。イギリスで行った大規模な前向きコホート研究では、心血管疾患のリスクが6%上昇し、呼吸器疾患のリスクが15%上昇することが観察されました。

もちろん、超加工食品に使用される高糖質、高塩分、高脂肪、低食物繊維などの原材料も健康被害の一因となります。しかし、比較的安全とされている添加物も健康被害をもたらす可能性があり、一層警戒が必要です。
 

リン酸塩添加物について

研究によると、超加工食品が健康に害を及ぼす背後のメカニズムは、大量の無機リン酸塩の摂取と関係しています。写真は「リン酸塩不使用」のイメージです(Shutterstock)

 

「私なら、リン酸塩添加物を警戒し、使用を避けます」とダンフォード氏は言います。

リン酸塩添加物は単一の物質ではなく、さまざまな効果を持つ一連の物質を含んでいます。例えば、安定剤、増粘剤、乳化剤、酸塩基調整剤、質感改善剤、風味向上剤、抗酸化剤、防腐剤、着色剤などがあります。一部のリン酸塩添加物は安定剤や増粘剤であると同時に、乳化剤や抗酸化剤としても機能します。

2023年に『Journal of Renal Nutrition』に発表された研究によると、アメリカでは市販されている約24万種類の加工食品のうち、31%にリン酸塩添加物が含まれていることがわかりました。さらに少し前に発表された研究では、アメリカ人が最も頻繁に購入する食品の44%にリン酸塩添加物が含まれていることが明らかになりました。

研究は超加工食品が健康被害をもたらす背後には、無機リン酸塩の過剰摂取が関係していると指摘しました。人体がリンを吸収する速度と効率は種類によって異なります。

天然食品に含まれるリンの場合、体に溶け込むスピードが遅く、全てが吸収されることはありません。しかし、食品添加物としての無機リン酸塩は体内に入るとほとんど速やかに血液に溶け込み、血液中のリン酸塩濃度が急激に上昇します。この時、腎臓からリン酸塩を排出させるホルモンが大量に分泌されます。これらのホルモンは心血管、腎臓、骨に負担をかけ、一連の悪影響をもたらします。

詳しく言えば、ビタミンDの減少、低カルシウム血症、骨の減少、血管の老化心室肥大、善玉コレステロールの減少、腎臓のろ過能力低下などです。

動物の細胞実験で無機リン酸塩添加物を投入するテストを行うと、即座に副作用が現れることがあります。「これだけでも、同じ副作用が人間の体にも発生する可能性があることを裏付ける」とウリバリ医師は述べました。

FDAは50種類以上のリン酸塩添加物を承認していますが、メーカーがよく使用する無機リン酸塩は約30種類です(残りは有機リン酸塩や天然含リン添加物です)。これらの添加物は「一般に安全だと見なされる物質(GRAS)」に分類されており、添加する量や種類はほとんど規制されていません。

2023年に『Nutrients』(栄養素)誌に発表された研究によると、アメリカのトップ25の食品・飲料メーカーが製造する商品のうち、パンの62%、即席食品の59%、加工肉の47%に無機リン酸塩添加物が含まれています。朝食用シリアルの34%、乳製品では28%に無機リン酸塩添加物が含まれています。さらに、果物や野菜を原材料とする食品(例えばドライフルーツや野菜チップスなど)でも、12%の製品に無機リン酸塩が添加されています。

人間の体に必要なリンの1日の推奨摂取量は700ミリグラムです。リン酸塩添加物含有食品は天然食材よりリンを2倍提供しています。リン酸塩添加物の使用量と使用範囲が拡大するにつれ、ほとんどのアメリカ人は推奨量を大幅に超えるリンを摂っています。20歳以上の成人では、1日食品から女性が平均1189ミリグラム、男性が平均1596ミリグラムのリンを摂取しています。

2023年に発表されたスウェーデンの成人女性を対象とした9年間のコホート研究によると、リンを多く含む超加工食品を過剰摂取した人は心血管疾患のリスクが57%上昇しました。また、約1万人のアメリカ成人を対象とした前向き調査では、リン酸塩の摂取量が高ければ全種類の死亡リスクが高くなることが示されました。特に、1日のリン摂取量が1400ミリグラムを超えると死亡リスクが高くなります。

(つづく)

李路明