食品添加物は本当に安全? 見過ごせないリスク(3)

(続き)

乳化剤について

今まで健康被害がないとされていた添加物の中でも、判断が覆されたものもあります。それが乳化剤です。

乳化剤は乳化と増粘の特性を持ち、食材の状態を安定させ保存期間を延ばす効果(例えば、ピーナッツバターを分離させないようにする)があります。加工食品で最も使われている添加物の一つです。乳化剤は機能によって安定剤、増粘剤、固化剤、光沢剤に分かれ、乳化の安定性を確保し向上させるために、一つの食品に複数種類の乳化剤が使用されることもあります。

FDAは171種類の乳化剤を承認しており、EUでは63種類を承認しています。フランスの研究では成人が最も多く使っている10種類の食品添加物のうち、7種類が乳化剤として分類されています。2024年にランセットに発表された最近の研究によると、アメリカの家庭が購入する3300万種類の加工食品のうち55%に乳化剤が含まれています。85%のキャンディやグミ、81%のプリンやアイスクリーム、72%の冷凍スナックやピザに乳化剤が含まれていることも示されています。

科学誌『ネイチャー』に発表された研究では、研究者が2種類の乳化剤、カルボキシメチルセルロース(CMC)とポリソルベート80(P80)を1%の濃度で12週間にわたりネズミの水に入れました。その結果、ネズミの腸内細菌群の多様性と安定性が低下し、粘液層が侵食され、有害菌が過剰に増殖し腸が炎症を起こし、多くの毒素が腸壁を通過して血液に入り込むことがわかりました。

乳化剤は腸を傷つけるだけでなく、代謝症候群も引き起こし、ネズミは異常に食欲が増し肥満になり、血糖コントロールも乱れました。乳化剤の使用を停止した後も影響は6週間続きました。FDAが承認しているP80の添加上限は1%、CMCは「一般に安全だと見なされる(GRAS)」に分類され、添加上限は2%です。

「過去半世紀にわたり、食品添加物の消費量は確実に増え続けています」と研究者は指摘しました。しかし、多くの添加物は早期にGRASの承認を受けたため、「慎重なテストが行われませんでした」現在使用されている添加物は動物を使って急性毒性と発がん性のテストが行われていますが、「テストはこれだけでは不十分かもしれません」

2022年に『胃腸病学』誌に発表された短期小規模二重盲検ランダム人体対照テストでは、乳化剤の大量摂取が健康に及ぼす脅威が明確に示されました。健康な成人志願者16人を2つのグループにランダムに分け、11日間行いました。両グループは同じ食事を摂りましたが、一方のグループの食事には15グラムのCMCが入っています。この量は加工食品を多く摂取する人々が摂取する乳化剤の量に近いとされています。

その結果、CMCを摂取したグループでは食後の軽い腹痛が増加し、腸内細菌の多様性が減少し、善玉菌を生成する短鎖脂肪酸が枯渇し、腸壁の粘液層が侵食され細菌の侵入が確認されました。研究者は、食品に広く使用されている乳化剤が「慢性炎症性疾患の発症率を増加させる可能性がある」と指摘しています。

2023年に『イギリス医学会雑誌』に発表されたフランスのNutriNet-Santé大規模コホートデータを使用した前向き研究では、乳化剤の摂取量が多い人は心血管疾患、冠状動脈疾患、および脳血管疾患のリスクが高くなりました。さらに、その後の研究では乳化剤の摂取量が多くなるほど全種類の発がんリスクが高まることがわかりました。
 

長期影響は予測不能

添加物は短期間の摂取では大きな問題にならないかもしれませんが、「長期間にわたり大量に使用する時に問題が起きる」とダンフォードさんは説明します。しかし、長期的に摂取した場合にどのような被害が起きるか、どれくらいのリスクをもたらすかは予測しにくいのです。

「医学的に因果関係を証明するのは非常に難しい」とウリバリ医師が説明しました。ある種の添加物が人の健康に影響を与えることを実証するには少なくとも1万人の志願者が必要で、ランダムに2つのグループに分け、一方のグループには添加物を摂取させ、もう一方は摂取させずに5年間続ける必要があります。大規模かつ長期間のテストを実現するのは非常に難しいのです。これが喫煙が肺に有害であることを確定するまでにかなり時間がかかった主な理由でもあります。

ダンフォードさんは、テストを実現する難点はもう一つあり、それは人々が毎日異なるものを食べているということです。例えば、食パンの場合、異なるブランドやパン屋では異なる成分や添加物を使用しています。

「正直、食品添加物の種類と量を正確に把握できない」とカルボさんは述べました。食品ラベルに記載されている情報は限られています。全国的でも小規模でも、食品添加物の含有量や種類を継続的に、かつ全面的に追跡する研究は未だ行われていません。

さらに、安全とされている添加物でも組み合わせを間違えば問題が起きるかもしれません。

「異なる添加物を混ぜると何が起きるか予測できない」とダンフォードさんは言います。「この分野の安全性研究も行われていません」

「添加物の積み重ねで有毒物質が生まれる可能性がある」と彼女は「数粒のメントスを一気にコーラの瓶に投げ込むとコーラの液体が激しく噴出する」という子供たちがよくやっていたいたずらを例に挙げました。
 

少ない選択肢の中でも、主導権を握る

「加工食品を食べるために生まれてきたわけではない」とグッドイヤー医師は言います。人間の体は人の手を加えた食品ではなく、自然界で生まれた食材を処理するためにできているとダンフォードさんは説明します。

多忙な現代人は食事を一から準備するのが難しいため、つい利便性のあるものに手を出します。それは避けられないとウリバリ医師は理解を示しました。「しかし、もっと慎重に選ぶべきだ」と続けます。

「私は母親なので幼い子供たちの世話をしなければならず、時間も限られている。多くの場合、私も加工食品を使いますが、子供たちにより多くの自然食品を摂取させるように努力しています」とダンフォードさんは言います。可能な限り、毎日、彼女は子供たちにベリー、果物、野菜、そして加工度の低いタンパク質を食べさせるようにしています。

「食べ物が愛でなければ悪だ」とグッドイヤー医師は言います。

「人々は食品添加物と呼びますが、この名前は危険性の感覚を和らげます。しかし、実際には化学添加物です」とグッドイヤー医師は強調します。

実際に地球上の全人類が食品添加物のテストに参加させられているのです。「例外は一人もいない」と彼は断言しました。

(完)

 

(翻訳編集 正道勇)

李路明