漢方では「百病起於寒(ひゃくびょうきおかん)」という言葉があります、つまり、「冷え」体質は様々な不調や合併症を引き起こし、病気に繋がる恐れがあると言います。果物を食べ過ぎることによって、冷え症になりやすい人の特徴は次の通りです。
・高温多湿な地域で生活している人
・冷房が効く部屋に長時間いる人
・冷たい飲み物を過剰に摂取する人
・運動をあまりしない人
・体が弱くて疲れやすい高齢者
・ストレスが溜まっている人
このような人々は陽気(身体の中から温める力)が欠如しており、果物の過剰摂取を控えるべきです。
果物の過剰摂取は湿気が溜まりやすい
台湾では果物が豊作で、生産技術の向上により、近年は甘くてみずみずしい果物が多く、人々に好まれています。さらに、台湾は海に囲まれ、湿度も気温も高く、台湾盆地は特に蒸し暑いのです。人々は冷たい飲み物を過剰に摂取し、冷房の効いた部屋にこもりがちで運動もしません。その上、果物をたくさん食べると、体内に湿気が大量に溜まってしまいます。湿気は冷え症の原因となります。
老弱病人は陽気が不足しており、果物の寒気と湿気に耐えきれません。長年の臨床経験から、上気道疾患、皮膚のアレルギー、便秘、婦人科の問題などは、果物を控えることで目に見える改善が見られました。
もちろん、気功などの高度な修練者はどんな食べ物でも消化できるので、この限りではありません。しかし、一般の人で長年にわたり寒気が大量に溜まっている人は、果物を食べ過ぎると残り少ない陽気をさらに消耗してしまいますので、適切な範囲まで控えることを推奨します。
果物を食べないことは、体内の寒気を排出し、体を守るためです。しかし、人は慣れた生活習慣を簡単に変えることができませんから、実行は難しいのです。
誤った果物の食べ方で病気を招く臨床例は数え切れません。ある患者さんは、夫の話を共有してくれました。
「夫は冷えたビールを飲んで発疹が出た後、さらに血圧を下げるためにスイカを食べ続けました。食べ終わった後、赤い発疹が多く出ました。私はスイカとビールが原因だと思いましたが、夫は服の衛生面の問題だと決めつけ、残りのスイカを完食しました」
「案の定、足にじん麻疹が発症し、背中にもぶつぶつができてしまいました。スイカの後遺症だと私が言っても、夫は聞く耳を持たず、服から虫を探しまくっていました。洗濯や着替えを繰り返したり、薬を塗ったりしても効果はありませんでした。夫は体が弱くなって、もうだめだと一人で思い込んでいたようです」
漢方では、スイカは「天生白虎湯」とも呼ばれています。「陽明病」の治療にも使われています。「陽明病(全身が熱で満ちた病気)」の症状は極端な熱、渇き、発汗です。その症状を抑えるためには、極端に冷える性質のものを薬として使わなければなりません。スイカの冷却力の強さがわかりますが、誤った食べ方が時には命取りとなることもあります。
私の見解では、冷えた寒気は皮膚から排出すればよいと思います。熱が出るときと同じように、生姜のお粥を飲んだり、足湯に浸かったりして発汗させれば、発疹やぶつぶつは消えるでしょう。
もう一人の患者さんの夫の話をご紹介します。引き金はグレープフルーツです。
「夫はお客様からいただいた」と言って、グレープフルーツを一箱持って帰ってきました。私は「食べないほうがいい」と警告しましたが、日に日にその数が少なくなっていきました。夫に問い詰めると、「一日1個ぐらいなら大丈夫だ」と言いました。
しかし、その夜、夫は手首に違和感を訴え、半年以上前に落ち着いていた痛風が再発しました。生姜で患部を30分こすって処置してみましたが、腫れは収まりませんでした。
その後の一週間、夫は微熱、咳、口内炎、湿疹が再発しました。手の痛みに耐えきれず、抗炎症注射を打ちましたが、それがかえって寒気の排出を阻んで治療が長引いてしまいました。しかし嬉しいことに、熱が出ました。生姜のお粥を食べさせ、ゆっくり休んでもらいました。
比較的乾燥している地域では、湿度が低く、体が強い人やよく運動する人、肉体労働者などは、常温や温めた果物を適量に食べても問題ありません。しかし、日本のように湿度が高い地域では、控えたほうが良いのです。どうしても食べたい場合や、食べないと気が済まない場合は、ストレスにならないように少量を食べても構いませんが、後で悪影響が出る可能性があるため、適切な対策をしっかりとりましょう。
食べる時は、昼間の晴れた日に食べることをお薦めします。また、「適量」を意識して食べることが重要です。果物と共に取り込んだ寒気を排出するのに時間がかかることはありますが、それ自体に問題はありません。ただし、体が耐えられる範囲を超えないようにすることが大事です。
現代社会の環境では、自由に果物を食べられる人は限られています。多くの人は運動不足で、体内の気の流れが滞りやすく、湿気が溜まりやすいのです。
さらに、果物をたくさん食べると冷えの原因になります。たとえ毎日運動して果物による寒気を排出できたとしても、長年にわたり体内に蓄積された寒気を排出する余裕はありません。高ストレスで忙しい現代社会では、冷たいものを過剰に摂取すると、全身の気血、神経、筋肉や脈が緊張し、冷えに苦しむことになります。
ただし、個人の努力も重要です。例えば、夜更かししてのぼせが生じた場合や、クッキーや餅、揚げまんじゅうなど体を乾燥させるものを食べた場合には、ハチミツ水を飲むと良いです。発熱後には、温かいサトウキビ水を飲むなどして調整することが大切です。
冷えやすい体質は、多くの場合、長期間にわたる悪習慣から生じます。生まれつきの原因もありますが、冷たい飲食物や果物の過剰摂取、菓子類の依存、運動不足、長時間起きていることなどが原因です。
このような生活習慣を改善しない限り、神様でも救えません。寒気を排出するには年単位の時間が必要なので、徐々に改善していくことが大切です。身体が感覚や敏感さを取り戻したときには、もう元には戻れないことがわかるでしょう。
(翻訳編集 正道勇)
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