ベイプ(フレーバー付きの液体を蒸気化して吸いこむ電子タバコ)の使用は、目に対するある種の健康リスクに関連しています。特に目の快適さと視力に重要な役割を果たす目の最外層に関連しています。
ブリティッシュコロンビア大学の研究者が率いた最近のシステマティック・レビューによると、ベイプ使用の眼表面への影響は「無害ではない」といいます。
4月下旬にJournal of Clinical Medicine誌に掲載されたレビューの著者らは、「ベイプを使用することが眼表面に及ぼすリスクは大きい」「このアクティビティーの人気が高まっていることから、適切なリスクコミュニケーションツールの開発が必要です」と述べました。
この研究には参加していない、眼形成外科医であるタニヤ・カーン氏は、ベイプを使用する若い人々の間でドライアイや充血が報告されるようになってきていることにだんだんと気づくようになったとエポックタイムズに語りました。
「私たちはまだ短期的な影響しか見ていないと思います」とカーン氏は述べています。「ベイプが流行してから10年も経っていないです。今後何年かすれば、もっと長期的なデータを目にしはじめると思います」
著者らはレビューの中で、目の電子タバコへのばく露が意図的でない場合と意図的である場合の両方において、被害が及ぶ可能性があることを指摘しました。意図的でないばく露として、電子タバコの爆発や、ベイプリキッドやその他関連製品の破損が原因で、目の損傷が発生する可能性があることが挙げられています。
「これらの爆発は予測も回避も困難です」と著者らは書いており、このような爆発による眼表面ダメージにおいて最も一般的なのが角膜の外傷であると指摘しました。
論文によると、電子タバコの爆発はまた、結膜下出血や眼表面での黒い微粒子の蓄積などを引き起こす可能性があります。
ベイプ使用の涙液膜と角膜への影響
電子タバコから発生する煙は、電子タバコを吸っている間、眼表面、特に眼表面の第1層と第2層を形成する涙液膜と角膜に接触し、影響を及ぼす可能性があります。
急性ばく露について、著者らは64人の参加者に電子タバコ10回分を吸ってもらった研究を引用しています。電子タバコを吸った後、被験者の眼表面の安定性が影響を受けましたが、その調査結果は有意ではありませんでした。
ベイプによる慢性的なばく露は、眼表面の腫瘍、涙液の安定性と質の変化、涙の産生量、角膜の厚さ、マイボーム腺の平均的な減少、ドライアイの症状や眼球刺激など、さまざまな健康上のリスクに関連していると著者らは書いています。
ベイプリキッドに含まれる成分には発がん性があるものもあります。リキッドが正しく加熱されないと、発がん性物質であるホルムアルデヒドが放出される可能性があります。また、特定の香料にはジアセチルが含まれている場合があり、重症の肺疾患を引き起こす可能性があります。
視覚における涙液膜の重要性
ベイプへの慢性ばく露は、涙液層の不安定化と涙の分泌量の増加に関連しています。
涙液膜は眼表面をコーティングして目を保護・維持し、円滑にします。その滑らかな表面は、光の屈折と視力にとても重要です。
ユタ州立大学ジョンモラン・アイ・センターのマジッド・モシファル非常勤教授(眼科)は、2021年4月に発表された自身のレビューを今回のレビューで引用しています。モシファル氏は、眼底膜の健康状態が視力を維持するために非常に重要であると述べています。
「光が角膜の表面に当たると、まず涙液層に当たり、その後、角膜の残りの部分、そして光学系の残りの部分に貫通します」
「涙液膜は眼表面に直接影響します。ですから、涙液膜が良好でなかったり、涙液膜が安定していなかったりすると、乾燥するだけでなく、視力にも影響を及ぼします。そうすると、自分が望むほどよく見えていないように感じるかもしれません」
マイボーム腺は、まつ毛の生え際よりもやや内側に並んでいる油分を分泌する小さい器官です。
カーン医師とモシファル医師は、患者から報告される最も一般的な症状はドライアイであるとエポックタイムズに語りました。ドライアイは目の充血につながる可能性があります。
モシファル医師は、説明のつかないひどい目の乾燥を訴える若い患者を診るようになったことをきっかけに、ベイプの影響を調べるようになったと述べています。
また、すでに角膜が薄くなっている患者もいるといいます。角膜が光の屈折に重要な役割を果たしていることを考えると、視力に支障をきたす可能性があります。涙液膜が不安定になれば、角膜が露出し、時間の経過とともにさらに傷つく可能性があります。
ベイプ成分で涙液膜が酸化 血管が収縮
ベイプの液にはアルデヒド、グリセロール、その他の揮発性有機化合物が含まれており、脂質層、つまり涙液膜の最外層と相互作用する可能性があります。
モシファル医師は、自身のレビューの中で、香料が異なれば、その組成も異なり、涙液層に異なる影響を与える可能性があることを示唆しました。
「これらの揮発性有機化合物や二次エアロゾルの結果として生成される特定の微小物質は、酸化的傷害を引き起こすことによって涙液膜の完全性に影響を与え、涙液膜の完全性と構造を損傷する可能性があります。これらが眼表面の症状を引き起こすのです」
また、ベイプに含まれるニコチンは目の血管を収縮させ、目と周辺組織の修復と健康に影響を及ぼす可能性があるとカーン医師は述べました。
ニコチンの血管収縮作用は創傷治癒を妨げる可能性があるため、カーン医師は、特に手術を考えている患者には喫煙とベイプをやめるよう助言しているそうです。
モシファル医師は自身の論文で、ニコチンが目の網膜に悪影響を及ぼす可能性についても触れています。網膜は、視力、色の検出、眼球に入った光を脳内でまとまりのある知覚イメージとして脳内で処理することにおいて極めて重要です。
ニコチンは網膜の受容体と相互作用することが示されており、動物実験では網膜内の細胞でドーパミンとグルタミン酸の放出を増加させることが示されています。
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