体重が減らない原因は食べ過ぎや運動不足だけではない

食事制限をせずとも、知らぬ間に体重を減らせる方法とは?(下)

フロー状態

フロー状態とは、その名の通り、目的に向かって川のように自然と流れていく状態です。この状態にある人は、自己意識を最小限に抑えることができます。

この状態は幸福と大いに関係しているとして、広く研究されています。

ある研究では、参加者83人に毎日自分の考えを伝えてもらい、4日間にわたり追跡調査したところ、フローが仕事において有意にプラスに働くことが明らかになりました。仕事に没頭し、楽しんでいると感じた人たちは、その後、よりエネルギッシュになったと報告しています。

脳科学者の説明によると、注意、覚醒、意欲、認知機能に関与する青斑核(脳幹にある小さな神経核)は、フロー状態のときに活性化することがよくあります。同時にドーパミン系も活性化し、楽観的で希望と活力に満ちた気分をもたらします。

日中に数時間タスクに集中することで、体重や食事に関する心配がなくなり、その管理にまつわるストレスを忘れることがよくあり、以下のような恩恵をもたらします。

  • ストレスレベルの低下
  • 食物を探す時間と食べる時間の節約
  • 積極性の増加と睡眠の質の向上

妨害を排除して集中力を維持するために、以下の戦略を検討してみましょう。

  • 携帯電話をしまうか、機内モードにするか、サイレントモードにする、あるいはオフィスのドアを閉めるなどして、外部からの刺激を減らす
  • 友人や同僚に「今は集中したい」と伝えて、理解・応援してもらう

リラックスする時も同じ原則が当てはまります。家族や友人と過ごす時も、本を読む時も、自然をハイキングする時も、行為そのものに集中してみましょう。

マインドセットの重要性

肥満の人は、運動量を増やして体重を減らすよう勧められます。しかし、その効果が出る人と出ない人がいるのはなぜでしょうか?

Psychological Science誌に掲載されたハーバード大学の研究では、ホテルのサービス従業員のポジティブなマインドセットや運動の利点に対する信用が、体重減少にどのような影響を与えるかを調査しました。

従業員は2つのグループに振り分けられました。

  • 情報提供群:運動の効果に関する文書を受け取り、日々の業務がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)の推奨する活動的なライフスタイルを満たしていることを伝えられた。
  • 対照群:自分たちの業務が健康に良いことは知らされなかった。

同じ仕事量のこの2つのグループから、興味深い結果が得られました。

情報提供群は、対照群と比較して、体脂肪の減少、腹部肥満率、心臓血管の健康において著しい改善が見られました。情報提供群の従業員はたった4週間で体重が平均1kg落ち、収縮期血圧が10ポイント下がりました。

2つのグループで従業員の仕事量が同じだった場合、日々の業務に関する健康上の利点について知らされた群は、知らされなかった対照群と比較して、体重、体脂肪、腹部肥満率、血圧において有意な改善が報告された。 (The Epoch Times)

この研究が浮き彫りにしたのは、運動が身体にもたらす直接的な効果よりも、運動が健康に及ぼす効果に関するポジティブな考え方や信用が非常に重要であるということです。

治療法を信用することで、そのポジティブな思考がさらなる身体状態の改善につながることは、これまでの記事でも説明してきた通りです。

せっかく食事をするのですから、その体験を充実させるための実践的なヒントをもう少しご紹介しましょう。

食べる順番を科学する

野菜から食べ始め、次にタンパク質と脂肪をとり、最後に炭水化物をとることで、血糖値と体重をよりよくコントロールできることは、エビデンスによって示されています。

ある研究では、メトホルミン治療を受けている2型糖尿病患者の成人11人を対象に、食べる順番が血糖値とインスリン感受性に及ぼす影響を調査しました。参加者らが初診時に炭水化物、タンパク質、野菜の順番で食事をとり、1週間後に食べる順番を逆にしたところ、以下の通り有意な結果が得られました。

  • 血糖値: 野菜を最初に食べた場合、野菜を最後に食べた場合と比べて、食後30分、60分、120分の平均血糖値がそれぞれ28.6%、36.7%、16.8%減少した。野菜を最初に食べると、2時間以内の総血糖値が73.5%減少すると推定された。
2型糖尿病患者では、食事の最初に野菜を食べた場合、野菜を最後に食べた場合と比較して、食後30分、60分、120分の血糖値が平均でそれぞれ28.6%、36.7%、16.8%低下した。野菜を最初に食べると、2時間以内の総血糖値が73.5%低下すると推定された。(The Epoch Times)
  •  インスリン値:食後2時間以内の血中インスリン値は、野菜から食べる順番だと約48%低下し、インスリン感受性の改善が示唆された。
2型糖尿病患者が野菜から始めて最後に炭水化物を食べる場合、逆の順番で食べた時と比較して、食後120分以内の血中インスリン値は平均48%低下し、インスリン感受性を改善する可能性が示唆された。 (The Epoch Times)

インスリンは銀行預金のようなものです。食事をとる時のインスリン分泌は、預金の引き出しに似ています。引き出し過ぎるとすぐに供給が尽き、インスリンを注射しなければならなくなります。いわば借金です。

この研究では、野菜から食べたグループでは、同量の食物を消化するのに使われたインスリン量は半分でした。これは、インスリンを効果的に使い、将来のために節約し、より長期的な健康を促進する賢い方法です。

2023年、ある研究が過体重、肥満、または糖尿病予備軍の成人45人を無作為に振り分け、実験群には食品に関する標準的なカウンセリングに加えて、食べる順番に関するカウンセリングを行いました。実験群は対照群と比較して平均1.6kgの体重減少とHbA1c値の低下を経験しました。HbA1cは、過去2〜3ヶ月の平均血糖値を測定する血液検査です。

ですから、食事の際は最初に野菜を食べ、炭水化物は最後にすべきです。

健康的な選択肢がより見やすく、かつより利用しやすくなれば、私たちは食習慣を改善できます。野菜や果物をキッチンに並べておけば、進んで選ぶようになります。健康的な食品は冷蔵庫の手の届きやすい場所に保管し、健康的でない食品を手の届かない場所に置くのも有効でしょう。

人が集まる場所で健康的な選択を促すことで、より良い食習慣をサポートする環境を作ることができます。例えば、マサチューセッツ総合病院では、不健康な食品を赤色に、中程度の食品を黄色に、健康的な食品を緑色に色分けするシステムを導入したところ、不健康な食品の売上が減少し、健康的な食品の売上が増加しました。

食堂やスーパーマーケットが同様の方法を採用すれば、より大規模に健康的な食習慣を奨励することができ、社会に大きな恩恵をもたらすでしょう。

最後に

従来の減量戦略は、「どれだけ食べないか」「何を食べないか」といった制限を設けがちですが、考え方を変えれば自然と体重を減らすことができます。

中国には、「わざわざ植えた花なのに花が咲かず、何気なく挿した柳の枝が陰をなす(有意栽花花不開,無心插柳柳成陰)」ということわざがあります。意図せず取った行動から最高の結果が生まれるという意味です。

私がニューヨークに来たとき、友人たちは私を見て驚いた様子でした。「スリムになったね!どうやって痩せたの?」と聞かれましたが、「何もしていないよ」と答えました。

皿洗いに集中することで健康になることを経験した学生と同様、減量という骨の折れる作業も、精神が集中し穏やかであれば簡単なものになります。内面の平穏と喜びが心を豊かにするとき、私たちは心身ともに調子がいいことに気づくでしょう。

この記事で述べられている見解は筆者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの見解を反映するものではありません。

エポックタイムズのシニアメディカルコラムニスト。中国の北京大学で感染症を専攻し、医学博士と感染症学の博士号を取得。2010年から2017年まで、スイスの製薬大手ノバルティスファーマで上級医科学専門家および医薬品安全性監視のトップを務めた。その間4度の企業賞を受賞している。ウイルス学、免疫学、腫瘍学、神経学、眼科学での前臨床研究の経験を持ち、感染症や内科での臨床経験を持つ。