300年の歴史を誇る美しい図書館、古書を守るためにコウモリが活躍!

彼らは図書館コウモリです。保管庫にある貴重な本を食べてしまう虫を捕まえるために、暗くなるまで待っています。

300年の歴史を持つバロック様式の建物から人々が立ち去る頃になると、次はコウモリの出番です。実際、何世紀にもわたり、コウモリは図書館で重要な役割を担ってきました。それは、世界で最も美しい図書館の一つと称されるこの場所での害虫駆除です。

ただし、彼らの姿を目にすることはありません。

ポルトガルのコインブラ大学に到着した観光客は、ジョアニナ図書館の創設者であるポルトガル王ジョアン5世の像の前を通り、その名を冠した図書館に足を踏み入れます。

夜になると、コウモリの糞から守るために、エキゾチックな木製テーブルは大きな革のシートで覆われます。(agsaz/Shutterstock)
夜になると、コウモリのふんから守るために、エキゾチックな木製テーブルは大きな革のシートで覆われる(Shutterstock)
A colony of bats is said to live behind the bookcases in the Biblioteca Joanina. (Martin Lehmann/Shutterstock)
ジョアニナ図書館の本棚の後ろにはコウモリの群れが生息していると言われている(Shutterstock)
A common pipistrellus bat. (Corina Daniela Obertas/Shutterstock)
一般的なアブラコウモリ(Shutterstock)

 

そして、その時18世紀の華麗な装飾で彩られた内部に感動することでしょう。

1717年に建設が始まったとき、啓蒙時代の幕開けを迎えていました。建設は1728年にようやく完了しました。最初の書籍は1750 年に届き、現在この図書館には科学、民法、教会法、哲学、神学を専門とする約7万冊の書籍が収蔵されており、中には15世紀にまでさかのぼる書物もあります。これらの書籍の印刷技術は、ヨーロッパ大陸全体で最高のものと言われています。

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ポルトガル、コインブラ大学の宮殿広場からジョアニナ図書館への正面玄関(Shutterstock)
A view from the direction of the main entrance looking inside the B<span class=
正面玄関の方向からジョアニナ図書館の内部を眺めた景色(Shutterstock)

 

広場から入って図書館の3階、つまり、この階は「ノーブル フロア」と呼ばれ、室内は豪華に装飾されています。豪華に金箔張りで装飾された本棚は、エキゾチックな多色のオーク材を使用しており、ブラジル産の貴重な熱帯木材は、ポルトガル帝国の過去の栄光を物語っています。

チーク材の正面扉は、宝物を保管する金庫のように建物全体を閉めます。又、内部に保管されているアンティークの蔵書を保護するための、厚さ2メートルを超える石壁は温度と湿度を管理しています。

もちろん、下には2つのフロアがありますが、保護活動について言えば、毛むくじゃらの空飛ぶ哺乳類についても触れておく必要があります。

コウモリの姿は見られませんが、声は聞こえるかもしれません。夕暮れ時には、スミソニアン博物館によると、コウモリの「歌声」のようなさえずりや、発声が反響してキーキーという音が聞こえることもあります。夜に外に座っていると、コウモリが空を羽ばたいたり、避難場所を求めて家の中に急いで戻ったりする姿が見られると言われています。

ノーブルルーム内の華やかなバルコニーと家具。(agsaz/Shutterstock)
ノーブル フロア内の華やかなバルコニーと家具(Shutterstock)
The Noble Room features a central portrait of King John V of Portugal. (Sopotnicki/Shutterstock)
ノーブル フロアの中央にはポルトガル王ジョアン5世 の肖像画が飾られている(Shutterstock)

 

オーク材の香りは天然の虫よけ効果を発揮しますが、コウモリのほうがはるかに強力です。コウモリは本の紙や原稿を食べる虫を貪欲に食べます。しかし、おそらくコウモリが最も好む虫は蚊です。職員は、害虫を駆除するよりも、コウモリが害虫を狩る行為を頼もしく見ていますが、唯一の実際の心配事はコウモリのふんです。

昔ながらのやり方で、職員は汚れから守るために豪華なサイドボードを大きな革のシートで覆う方法をとっています。ヨーロッパの図書館や教会では、何世紀にもわたってこれが正しいやり方であることを証明してきました。朝になると、スタッフはシートを取り外し、少し力を入れて、ふんが落ちた大理石の床を磨き上げます。

貴重な書籍を保護するために支払う代償としては、これは小さなものです。

天井のフレスコ画には、知識を象徴する本を世界の四隅に渡す寓話が描かれている。(ベニー・マーティ/Shutterstock)
天井には、本を持つ女性の姿があり、それは知識が世界の四隅、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカに伝えられる象徴として描かれている(Shutterstock)

 

図書館のコウモリの群れは、ジョアン5世が最初に図書館を建てた頃から、ほぼ変わらず存在しています。おそらく、チーク材の正面玄関の向かいにかかっているジョン5世の肖像画はこの光景をずっと眺めていた事でしょう。コウモリがフレスコ画の下で羽ばたいていた様子も、まだ新しい技法で描かれる場面も眺めていたに違いありません。

天井には、本を持つ女性の姿があり、それは知識が世界の四隅、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカに伝えられる象徴として描かれています。

2階建ての金箔の棚と紋章をあしらった華麗なアーチに驚嘆し、浮き彫りが施された木製テーブル6台と豪華な彫刻と金で飾られたベランダを見学した後、大理石に似せて塗装された偽の木製アーチに隠された秘密の階段、訪問者立ち入り禁止のバルコニーに続くスタッフだけが知っている秘密の扉を見学した後、私たちは階段を下ります。

ビブリオテカ ジョアニナは、世界で最も美しい図書館の 1 つと考えられています。 (ベニー マーティ/Shutterstock)
ジョアニナ図書館は世界で最も美しい図書館の一つとされている(Shutterstock)
ジョアニナ図書館の外観。下層階が見える。(rui vale sousa/Shutterstock)
ジョアニナ図書館の外観(Shutterstock)

 

中層階はもっと質素で、素朴な石積みで造られています。奇妙に聞こえるかもしれませんが、昔はここに衛兵や警備員が配置されていました。1834年まで、大学は自治組織だったため、独自の王宮監獄を維持していました。数年前は立ち入りが困難でしたが、現在は原稿を展示するために公開されており、保存場所としても機能しています。

建物の一番基礎部分には中世の牢獄が置かれています。狭い独房と曲がりくねった階段が原始的な構造の牢獄を構成しており、ポルトガルで現存する最古の牢獄です。地上階は現在、蔵書を保管する倉庫として利用されており、メインフロアの棚に並べる前に、蔵書をカタログ化するために持ち込んでいました。

中層階には荒削りの石積みが特徴的。(trabantos/Shutterstock)
中層階は荒削りの石積みが特徴(Shutterstock)
ジョアニナ図書館の中層階には、図書館が大学の監獄として使われていたころ、警備員が配置されていたと言われている。(agsaz/Shutterstock)
ジョアニナ図書館の中層階には、図書館が大学の監獄として使われていたころ、警備員が配置されていたと言われている(Shutterstock)
ジョアニナ図書館。 (トラバントス/シャッターストック)
ジョアニナ図書館(Shutterstock)

 

毎年50万人がジョアニナ図書館を訪れます。この訪問客が持ち込む大量のほこりによって環境が変わってしまう事が、保存がこれほど徹底されている本当の理由です。保存を厳格に管理するため、現在は20分ごとに60人しか入館できません。まして、メインルームは 10分以上滞在できません。

一方、本棚の裏に住む小さな生き物たちは、害虫との戦いを続けています。コウモリのコロニーは長年にわたり重要な役割を果たしており、今もその任務を全うしています。

 

(翻訳編集 青谷荘子)

カナダのカルガリーに拠点を置くライター兼編集者。主に文化、人間の興味、トレンドのニュースについて執筆。