医学の世界では、新しい研究結果がこれまでの知見と矛盾することはよくあります。
1.健康な腸内環境を保つためには、週に30種類の植物性食品を摂ることが推奨されている。
2.多くのアメリカ人は炭水化物の摂取を減らすべきだという証拠も示されている。
植物性食品には炭水化物が含まれています。炭水化物は脂質やたんぱく質と並ぶ三大栄養素の1つです。しかし、多くの人は炭水化物の代謝や吸収がうまくいきません。そのため、炭水化物を大幅に減らしたり、完全に排除する食事法が広まっています。
腸内細菌は炭水化物の消化を助ける役割を果たしていますが、精製された炭水化物や糖分の多い食事は腸内細菌のバランスを崩し、腸のトラブルや慢性疾患の原因になります。
消化が難しい炭水化物は必要です。それを消化するために必要な腸内細菌を育てることが重要ですが、しかし、時にはこれがジレンマとなり、悩ましい状況に陥ることがあります。植物性食品を多く摂ることで腸の不調が悪化する場合もあるのです。
しかし、ハーブや香辛料は消化を助け、腸の調子を整える効果があるとされています。風味が強く少量で済むため、食事に取り入れることで多様性を持たせながら、有益な腸内細菌の増加を促します。
多くのハーブや香辛料は症状の緩和に役立つとされており、これらを上手に取り入れることで、腸内細菌の多様性が増し、代謝の改善が期待できると、栄養士でOswald Digestive Clinicの創設者であるアシュリー・オズワルド氏は語っています。
腸が敏感な人は、食物繊維や野菜の摂取が難しい場合、まず栄養専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
「しかし、野菜をうまく摂取できている人にとって、ハーブは素晴らしい追加食品になります。食事の多様性が増すほど、腸内細菌もより多様で健全になります。それこそが私たちの目指すところです」と、オズワルド氏はエポックタイムズのインタビューで述べています。
炭水化物への過度な依存
2019年に発表された「Metabolic Syndrome and Related Disorders」誌の研究によると、アメリカ人の約88%が代謝健康に問題を抱えており、これが慢性疾患や死亡リスクの増加につながっていると報告しています。
その一因として、エネルギー源として炭水化物に過度に依存することを指摘しています。オハイオ州立大学の報告では、特定の炭水化物を多く摂取する食生活が、膵臓に過剰なインスリン分泌を引き起こし、それがインスリン抵抗性の原因となる可能性を指摘しています。余分な炭水化物は肝臓に脂肪として蓄積されます。
これにより、体重減少が困難になるだけでなく、膨満感、けいれん、胸やけ、ガス、さらには全身の疲労感などの症状を引き起こします。肥満や代謝症候群、2型糖尿病は、欧米諸国で増加している非アルコール性脂肪肝疾患のリスク要因としても認識されています。
肥満率の上昇は、代謝健康の悪化を示しますが、肥満でなくても代謝健康が悪いことがあります。
2019年の研究では、健康的な体重を保っていても、必ずしも代謝健康であるとは限らないとしています。代謝健康とは、血圧、コレステロール、血糖、トリグリセリドが正常であることを指し、代謝健康が悪化すると、糖尿病や心疾患のリスクが高まります。
炭水化物を抜くダイエットの流行
消化機能の改善を目指し、低FODMAPダイエットなど炭水化物を制限する食事法が広まっています。FODMAPとは、発酵性オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオールなどの略で、消化が難しい短鎖炭水化物を指します。これらを食事から除去することで、消化器官を休め、腸の粘膜を修復する効果が期待されています。
登録栄養士のタムジン・マーフィー氏は、エポックタイムズの取材に対し、ジャンクフード中心の不健康な食生活が、炭水化物の消化不良の一因になっていると述べています。彼女によれば、精製された炭水化物や砂糖、高度に精製された種子油を食事から取り除くことで、代謝に関する問題が改善されるといいます。
「これらの二つを食事から排除すれば、現在のような慢性疾患が本当に存在するのか疑問です」とマーフィー氏は語ります。「炭水化物を多く摂取することで、一部の人々に悪影響が出ています。残念ながら、多くの人が代謝の問題を抱えている現状では、基本的には全食品を中心にした比較的低炭水化物の食事が理想です」
低FODMAPダイエットの目的は、除去した食品を少しずつ再導入し、体がそれに順応することで腸内環境が改善されることを目指すものです。その過程において、薬効のあるハーブが腸の癒しをサポートする役割を果たすことがあります。
ハーブや香辛料を使った代謝促進
ハーブや香辛料は、私たちの胃腸の健康を多様な方法でサポートし、代謝機能の向上にも貢献します。栄養士のマーシー・ヴァスケ氏がエポックタイムズのインタビューでその効果について次のように語っています。
ヴァスケ氏が推奨する、代謝向上に役立つ主なハーブは以下の通りです。
ジンジャー プロトンポンプ阻害剤と比べて穏やかに胃酸を刺激し、消化を助けるとともに、栄養の吸収を高めます。
ローズマリー 腸内フローラを増やし、胆汁の流れや胆のう機能を改善し、消化と栄養の吸収を促進します。
オレガノ 強力な天然の抗菌作用があります。
ベルベリン(オウレンの主成分) インスリンの急激な上昇を防ぎ、糖の渇望を引き起こす腸内の有害菌に対する抗菌作用があります。
「研究によれば、ベルベリンは血糖値の調整において、メトホルミンよりも効果的です。血糖値が安定すると、体重管理がしやすくなり、食欲が抑えられ、腸の健康も改善されます。このハーブは特にこの点が気に入っています」とヴァスケ氏は述べています。「ただし、ベルベリンは食事からではなく、主にサプリメントとして摂取されます」
シナモン 技術的には樹皮から作られるスパイスですが、血糖値を安定させる効果があります。ヴァスケ氏によると、オーガニックシナモンを1日小さじ1杯摂るだけで十分です。ヨーグルト、スムージー、カッテージチーズ、アップルソース、フルーツに加えたり、料理にも利用できます。
カイエンペッパー(赤唐辛子を乾燥させた香辛料) 消化を助ける腸内神経を活性化し、潰瘍を軽減し、糖の渇望を引き起こすカンジダの過剰増殖を防ぎ、体重減少を促進します。
ハーブや香辛料を使った健康サポート
ヴァスケ氏によれば、ハーブや香辛料は症状を和らげるための優れた選択肢で、さまざまな種類があります。
例えば、アロエは便秘に効果的であり、ペパーミントはガスや膨満感の緩和に役立ちますが、上部消化管に問題がある人にはお勧めでません。
フェンネルは消化全般に有効で、甘草やスリッペリーエルム(アカニレ)には炎症を抑える鎮静作用があります。ハーブはサプリメントとしても広く市販されていますが、ヴァスケ氏は特にハーブのブレンドティーが腸の症状を和らげるための良い手段だと述べています。
「複数のハーブが含まれているお茶は、相乗効果によって全体的なサポートを得られる点が気に入っています」と彼女は言います。
最も大切なのは、信頼できる有機栽培の農場から調達された高品質なハーブやお茶、サプリメントを選ぶことです。ヴァスケ氏は、多くの製品が低品質であるために効果が感じられず、ハーブの使用を諦めてしまうケースがあると指摘しています。
また、医師が腸の健康にハーブや香辛料を推奨しなかったり、興味を持つ患者に十分なアドバイスを提供しないことも、ハーブ類の活用をためらわせる要因の1つです。これは主に、医師がハーブの使用法に関する研修を十分に受けていないためだと言われています。
ハーブの入手しやすさも重要な要素です。腸の健康に役立つハーブは数多く存在しますが、地元では入手が難しい場合もあります。
そのため、リリー・チョイ氏は、腸の健康全般に効果があるとして、クコの実を推奨しています。彼女は人気のInstagramアカウントで、クコの実の使い方に関するヒントを発信しています。
クコの実は甘酸っぱく、伝統的な中国医学では肝臓と腎臓に良いとしています。栄養素や植物化学物質が豊富で、多糖類、アミノ酸、ビタミン、ミネラルを含み、がん予防や抗酸化作用、糖尿病予防の効果があるほか、免疫力やエネルギーの向上にも寄与します。
「クコの実は手軽に入手でき、乾燥やその他の形で使えます」とチョイ氏は言います。「毎日取り入れて効果を実感できるような、簡単に始められるものから取り組むことが大切です。しかも、とても美味しいですよ」
(翻訳編集 華山律)
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