子供のコロナ後遺症症状 初めて特定された

コロナ後遺症を診断するための決定的な検査は存在せず、医師は患者が報告した症状に基づいて他の疾患を除外しながら診断を進めていますが、研究者たちは進展を見せています。

新たな研究では、子供や青少年におけるコロナ後遺症の主要な症状を特定し、診断に役立つツールを開発するという重要な一歩が踏み出しました。

これまでのコロナ後遺症に関する研究は主に成人を対象としており、子供に関する理解にはギャップがありました。その結果、見落としや誤診が生じる可能性があると、ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医科大学院の小児科および人口健康学の助教授であり、本研究の責任著者であるレイチェル・グロス博士が大紀元に語りました。

同氏は「子供もコロナ後遺症を発症する可能性があり、その症状は成人とは異なる場合があります。また、子供の年齢層によっても症状が異なることがある」と指摘しています。

研究者が子供に見られる症状として特定したものには、背中や首の痛み、混雑した場所への恐怖感、歩行後の疲労感が含まれており、これに加えて一般的なコロナ後遺症の症状も見られました。

「この研究では、頭痛や腹痛といった、他の健康問題に関連する可能性がありますが一般的な小児科の症状も、コロナ後遺症の一部である可能性があることが示された」とグロス博士は述べています。

「コロナ後遺症は異質な疾患であり、そのため病状にはスペクトラムが存在することを認識しています。コロナ後遺症が十分に理解されておらず新しい疾患であるから、リハビリテーション医療や他の専門医に見てもらっていない子供たちがいるのではないかと思う。結果として、この状態が過小診断されたり、見過ごされたりする可能性がある」と、この研究には参加していないフィラデルフィア小児病院の臨床小児科の助教授であるアビゲイル・ケース博士が、大紀元のメールインタビューで述べました。

 

子供のコロナ後遺症を検出するツール

これまでに、コロナ後遺症の症状が200種類以上あり、複数の臓器系に影響を及ぼすことが確認されています。SARS-CoV-2感染の既往歴と関連する症状を特定するため、研究者らは、感染歴のある子供とない子供の両方を含む5367人の子供たちの保護者にアンケート調査を行いました。

調査の結果、コロナ既往歴を持つ学齢期の子供(6~11歳)と青年期の子供(12~17歳)に共通して見られる14の長期的な症状が特定されました。

これらのうちいくつかの症状は、コロナ後遺症との関係が統計的に有意でした。これに基づき、研究者らは子供のコロナ後遺症を特定するための指標を作成しました。

学齢期の子供を対象とする指標には、頭痛、記憶や集中力の低下、睡眠障害、胃痛などの症状が含まれていました。

青年期の子供に多く見られる一般的な症状としては、以下のものがあります。

・日中の疲労感やエネルギー不足

・体または筋肉、関節の痛み

・頭痛

・記憶力と集中力の低下

グロス氏はこの指標は研究目的のみに使用され、現在のところ臨床使用は推奨されていないと述べています。

「この指標にない症状も含め、1つでも症状があれば、その子供がコロナ後遺症を持っていることを示唆するのに十分だ」。

他の症状には、めまい、立ちくらみ、消化器症状、さらにはうつ病と不安感、人混みや閉所恐怖症といった精神的な症状が含まれます。

上記2つの年齢層の子供に共通する症状が多く見られましたが、年少の子供に胃痛、吐き気、嘔吐が多く報告されており、青年期の子供では嗅覚や味覚の変化または喪失、疲労感がより一般的でした。

グロス博士は、家族や臨床医が子供に見られる症状の原因としてコロナ後遺症を考慮すべきであると述べています。

コロナ後遺症は心理的な疾患とされることが多い。疲労感や認知機能の問題などの症状が無視されることが多い。

ニューヨーク大学の小児心理学者で神経心理学者であり、この研究の共著者でもあるリチャード・ギャラガー氏は大紀元とのインタビューで「この研究はウイルス後遺症の理解に非常に役立つ」と語りました。

また、「子供たちはこの病気による影響を受けており、その影響は中枢神経系を含む多くの臓器に及んでいる」と付け加えました。

この研究は、米国国立衛生研究所(NIH)が資金提供をした全国的な回復促進計画(RECOVER Initiative)の一環として行われ、JAMAオリジナル調査に発表されました。

 

コロナ後遺症、万人に当てはまるものではない

研究者らは、特定のコロナ後遺症症状が異なるパターンで発生することを発見し、学齢期の子供に4つ、青年期の子供に3つの症状群を特定しました。

学齢期の子供に典型的な症状群には、胃痛や嘔吐などの消化器症状や、睡眠障害などの神経認知症状が含まれます。青年期の子供は、成人に見られる症状と同様に、嗅覚や味覚の喪失や変化を伴う症状を発症する傾向があります。

両年齢層に共通する2つの重要な類似点があります。1つは複数の臓器系に影響を及ぼす多数の症状。もう1つの症状群は疲労と痛みが主でした。

グロス博士は、これらのパターンは子供たちが経験するコロナ後遺症がいくつかのタイプに分かれる可能性があることを示唆していると述べました。

「これは、一律の診断アプローチがコロナ後遺症を持つ子供の診断には効果的でない可能性が高いことを示している」と付け加えました。

研究者らは、保護者がコロナ後遺症と疑う場合は子供の症状について医師と話し合うことを提案しています。

「症状が数週間から数か月続き、他の病状では説明できない場合、コロナ後遺症である可能性がある」と、全米高齢者評議会の医学評論家であるラジ・ダスグプタ博士は述べています。

また、ケース博士は、「感染後数週間から数か月間にわたって新しい症状や悪化した症状に注意を払い、学校や課外活動での困難に気づいた場合はさらなる評価を検討すべきだ」と述べています。

グロス博士は、医師が長期的に症状の緩和ケアと家族へのサポートを提供し、将来的な治療法について情報を提供することができるとも述べています。

 

(翻訳編集 清川茜)

執筆活動を始める前、レイチェルは神経疾患を専門とする作業療法士として働いていた。また、大学で基礎科学と専門作業療法のコースを教えていた。2019 年に幼児発達教育の修士号を取得した。2020 年以降、さまざまな出版物やブランドで健康に関するトピックについて幅広く執筆している。