むずむず脚症候群 (RLS) の症状から治療まで 自然療法も解説

むずむず脚症候群(Restless Legs Syndrome, RLS)は、成人の最大10%、子供の最大4%に影響を与える一般的な睡眠障害であり、不眠症の主な原因の一つです。RLSは、夜間や休息中にを動かしたいという強い欲求と不快な感覚が現れるため、睡眠を妨げ、生活の質を著しく低下させます。

命名者から取った名前を使用している病気でもあるRLSは、1672年にトマス・ウィリス(Sir Thomas Willis)によって初めて同定され、1944年にカール・アクセル・エクボム(Karl-Axel Ekbom)によってさらに詳しく説明され、命名されました。RLSが発見されたのはそれほど昔のことであり、非常に特異な症状であるにもかかわらず、診断されないことがよくあります。RLSの治療もまた困難であり、この睡眠障害に対する認識と理解を深める必要性が浮き彫りになっています。

 

むずむず脚症候群の主な症状と初期徴候

RLSは以下のような特徴的な症状で現れ、その強さや現れ方には個人差があります。

  • 足を動かしたいという強い欲求 RLSの最も特徴的な症状であり、主に夜間や休息中に現れます。脚を動かすことで症状が一時的に和らぐことが多くあります。
  • 足の不快な感覚 脚にむずむず、焼けるような感覚、または虫が這うような感覚があり、動かすことで症状が改善することがよくあります。
  • 周期性四肢運動障害(PLMS) RLS患者の約80~90%がPLMSを伴い、睡眠中に脚が不随意に動くことで睡眠を妨げます。
  • 睡眠障害と不眠 RLSにより、入眠や睡眠の持続が難しくなるため、慢性的な不眠症を引き起こすことが一般的です。
     

むずむず脚症候群の原因とタイプ

RLSには二つの主要なタイプがあり、それぞれ異なる原因があります。

  1. 一次性(特発性)むずむず脚症候群
    一次性RLSは、家族歴がある場合が多く、遺伝的な要因が関与している可能性があります。このタイプは年齢に関係なく発症し、特に夜間に症状が悪化する傾向があります。
  2. 二次性むずむず脚症候群
    二次性RLSは、他の健康問題や特定の誘因によって引き起こされます。主な原因には、欠乏症、妊娠、腎不全、糖尿病、神経障害、パーキンソン病、末梢神経障害などが含まれます。また、特定の薬物(抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬など)も二次性RLSのリスクを増加させる可能性があります。
特定の薬物の服用も二次性RLSのリスクを増加させる可能性がある(Shutterstock)

 

リスク要因と診断方法

RLSのリスクを高める要因には、加齢、性別(女性に多い)、家族歴、鉄欠乏、慢性疾患(腎不全、糖尿病)、妊娠(特に妊娠後期)などがあります。

RLSの診断は、主に患者の症状と病歴に基づいて行われます。特定の診断検査はありませんが、以下の基準が一般的に使用されます。

  • 足を動かしたいという欲求が強くあり、休息時に悪化し、動かすことで改善します。
  • 症状が夕方や夜間に悪化します。
  • 他の症状によるものではないと考えられます。
     

むずむず脚症候群 (RLS) の治療法
具体的なアプローチ

むずむず脚症候群(RLS)は、その症状の軽減と生活の質の向上を目指したさまざまな治療法が存在します。症状の重さや患者の個別の状況に応じて、以下のような治療法が選択されます。

1. ドーパミン作動薬

RLSの治療において、ドーパミン作動薬は一般的に第一選択薬として使用されます。プラミペキソールやロピニロールといった薬剤は、脳内のドーパミン受容体に作用し、脚のむずむず感を軽減します。これらの薬は、特に夜間に強く現れるRLSの症状を抑えるのに効果的です。

しかし、長期間にわたる使用には注意が必要です。これらの薬剤は、長期的な服用により薬の効果が薄れる「耐性」が生じたり、薬を服用している時間帯に症状がかえって悪化する「症状の増悪(オーグメンテーション)」と呼ばれる現象が発生することがあります。そのため、患者の状態を慎重にモニタリングし、必要に応じて薬の調整が求められます。

2. 抗けいれん薬

ガバペンチンやプレガバリンは、RLSの症状緩和において有効な抗けいれん薬です。特に、痛みを伴うRLSや、ドーパミン作動薬が十分に効果を発揮しない場合に使用されます。ガバペンチンは神経系の異常な活動を抑制し、プレガバリンも同様に神経の過敏性を軽減することで症状を和らげます。

これらの薬は、夜間の不快な症状を抑え、患者が安眠できるように支援します。ただし、これらの薬剤も副作用があり、めまいや眠気などが見られることがありますので、医師の指導のもと慎重に使用することが必要です。

3. ベンゾジアゼピン

RLSによる不眠症に対処するために、ベンゾジアゼピン系薬物が用いられることがあります。クロナゼパムなどの薬剤は、筋肉の緊張を和らげ、睡眠を促進する効果があります。これにより、RLSの患者は夜間に質の高い睡眠をとれるようになります。

ただし、ベンゾジアゼピン系薬物は依存性のリスクがあるため、長期使用には注意が必要です。また、日中の眠気や反応速度の低下といった副作用も懸念されるため、使用時には慎重なモニタリングが求められます。

4. 鉄分補給

鉄欠乏症がRLSの発症に寄与する場合、鉄分の補給が症状改善に効果的です。特に、血中のフェリチン値(鉄の貯蔵状態)が低い場合は、鉄分サプリメントの摂取が推奨されます。鉄分補給は、神経伝達物質であるドーパミンの生成をサポートし、RLSの症状を軽減します。

鉄分の補給が症状改善に効果的(Shutterstock)

 

5. ビタミンD療法

近年の研究では、ビタミンDの欠乏がRLSのリスクを高める可能性が示唆されています。ビタミンDは骨の健康に重要であるだけでなく、神経機能にも影響を与えるため、適切なビタミンDの補給がRLSの症状緩和に寄与することがあります。

6. ライフスタイルの改善と自然療法

薬物療法に加えて、生活習慣の改善や自然療法もRLSの管理に有効です。以下の方法が症状の軽減に役立ちます。

  • 定期的な運動 適度な運動が症状を緩和する一方で、過度の運動は症状を悪化させる可能性があります。
  • ストレッチとマッサージ 足や脚のストレッチやマッサージは、血流を促進し、不快な感覚を軽減します。
足や脚のストレッチやマッサージは、血流を促進する(Shutterstock)

 

  • 温冷療法 足を温めたり冷やしたりすることは、一時的に症状を緩和する効果があります。
  • 睡眠環境の改善 静かで快適な睡眠環境を整えること、規則正しい睡眠習慣を確立することが、症状の管理に重要です。

また、カフェインやアルコールの摂取を控え、禁煙することも、RLSの症状を抑えるために推奨されます。これらの生活習慣の改善と、薬物療法と組み合わせることで、むずむず脚症候群の症状をより効果的に管理できるでしょう。

 

(翻訳編集 呉安誠)