食物繊維は腸の健康を損ないますか?(上)

 

ジェニファー・スクリブナーさんは、16歳のときに「肉食が地球や人間の健康に悪影響を与える」という本を読んだのをきっかけに、ベジタリアン生活を始めました。

彼女は18年間、この食生活を続けましたが、その間に徐々に痛みを伴う炎症がひどくなり、健康状態も悪化してきました。そして最終的に、自分の体が実際に必要としていたもの――つまり「肉」――を摂ることが必要なことに気づきました。

スクリブナーさんは『エポック・タイムズ』のインタビューで、「ベジタリアンになることが『世界を救う使命』だと思っていました」と語っています。

「この食事法は私の体には合いませんでしたが、誰も体の声を聞くように教えてくれませんでした。専門家の意見ばかりを信じるように言われていたのです」と彼女は振り返ります。

スクリブナーさんが肉を多く摂取することで、食物繊維の量を減らしたとき、すぐにエネルギーの増加やニキビの改善に気づきました。久しぶりに、彼女は本当に体調が良くなったと感じました。現在、彼女は機能性栄養療法士として活躍しており、GAPS(と心理症候群)の専門家でもありますが、こうした経験が、自身のビジネス「ボディ・ウィズダム・ニュートリション(身体の叡智に基づく栄養学)」の基盤となりました。

肉を多く摂取することで、食物繊維の量を減らしたとき、すぐにエネルギーの増加の変化がみられた(Shutterstock)

 

一部の人にとって、健康のために食物繊維を大量に摂取することが、逆に体調不良の原因となり、さらには病気を引き起こす可能性があるようです。最近の研究では、特定の人々が食物繊維をうまく消化できず、それがさまざまな健康問題を引き起こすことが確認されています。栄養専門家によると、こうした人々には、消化管内の健康な微生物群を育てるための「食物繊維のリセット」が必要(微生物群、腸内フローラや腸内細菌を育て、バランスを整えるために、食物繊維の摂取を見直すことを指す)だとされています。

 

食物繊維に対する偏見

食物繊維は、豆類、穀物、エンドウ豆、レンズ豆、果物、野菜などの植物性食品に含まれています。高繊維食品を摂取することは、消化の改善、心臓病のリスク低減、便秘の軽減、そして全体的な健康の向上と関連しており、大多数の人々にとって有益なことです。

健康当局は、ほとんどのアメリカ人が食事にもっと食物繊維を取り入れる必要があるとしていますが、これは一部の人々にとって誤解を招く可能性があります。

アメリカ農務省の「マイプレート」食事指針では、食事の半分以上を果物や野菜、穀物などの高繊維食品から摂るべきだと提案しています。また、多くの専門家も腸内環境を良くするために、週に30種類以上の植物を食べることを勧めています。このように、「もっと繊維を摂取するべきだ」というメッセージは明確であり、多くの人にとって重要なアドバイスと言えるでしょう。

 

食物繊維の健康への貢献

食物繊維には、化学的構成によって可溶性と不溶性の2種類があります。

可溶性食物繊維は消化を遅らせ、有益な代謝産物である短鎖脂肪酸の生成に関連しています。これにより、心臓や腎臓の健康を保護し、炎症を抑え、免疫系を調整するなど、糖尿病やがん、肥満から体を守る健康効果が得られます。一方、不溶性食物繊維は、消化の際に、かさを増やし、腸の通過時間を調整します。

食物繊維には、化学的構成によって可溶性と不溶性の2種類がある(Shutterstock)

 

食物繊維は、種子やナッツをはじめとする多くの食品に自然に含まれていますが、加工食品にも添加されています。ハーバードメディカルスクールによれば、私たちは1日に25~35グラムの食物繊維を必要としますが、実際の摂取量は平均して15グラムにとどまっています。食物繊維は、血糖値の調整や食欲の抑制といった機能を担い、肥満対策に重要な役割を果たしています。

さらに、代謝機能の向上だけでなく、食物繊維は腸の動きを改善し、腸内細菌叢を豊かにする効果もあります。腸内細菌叢は、食物繊維の消化に欠かせない細菌を含んでおり、これらの細菌が、食物繊維が健康を支えるか、それとも害を及ぼすかを決定する可能性があるのです。

 

微生物が私たちの食物繊維への反応を予測する方法

腸内フローラは、食物繊維に関する議論の中心に位置しています。食物繊維を強く推奨している専門家たちでさえ、場合によっては食物繊維が一部の人々に合わないことがあると認めており、その理由は微生物にあります。

消化器専門医で『Fiber Fueled』の著者であるウィル・ブルシェビッツ博士は、ポッドキャストで「消化器系の問題を抱える人々は、しばしば食物繊維を消化するのが難しいと感じます。これは、ガスや膨満感、腹部の不快感を引き起こすことがあるためです」と説明しています。

「私が伝えたいメッセージは、あなたが食物繊維の消化に苦労しているのは、腸内フローラがダメージを受けているからだということです。これらの微生物は、あなたが求める役割を果たすのに苦労しているのです」とブルシェビッツ博士は言います。

問題は、多くの人々が、工業化された世界で生活する中で、化学物質やその他の影響を受けて腸内フローラにダメージを受けているということです。その原因には、抗生物質やその他の薬物、グリホサート、抗菌衛生製品、アルコール、喫煙、睡眠不足や運動不足、人工甘味料、さまざまな食品添加物や乳化剤、そして慢性的なストレスが含まれます。

アルコールや喫煙など、日頃の習慣が腸内フローラにダメージを与えている(Shutterstock)

 

「今日、多くの人々が腸内フローラの乱れ(ディスバイオシス)や非常に低い腸内細菌数を抱えているため、これらの食物繊維を消化する際に多くの問題を抱えがちです」とスクリブナーさんは述べています。

 

食物繊維の効果は予測が難しい

今年発表された研究では、食物繊維が各個人の腸内フローラによって体内で非常に個別的な役割を果たすことが証明されました。食物繊維は一般的にさまざまな病気の状態で有益とされていますが、個々の病気に対する効果は予測が難しいことがわかっています。

この研究は『Microbiome』誌に掲載され、健康な被験者の腸内フローラに対して2種類の食物繊維がどのような影響を与えるかを調べることを目的としました。研究者たちは、ドナーのサンプルを用いて個々の腸内フローラを再現し、実験を行いました。その結果、炎症は状況に依存しており、腸内フローラの構成が炎症性腸疾患(IBD)の主な要因であることが判明しました。

研究の著者たちは、食物繊維が「両刃の剣」であり、摂取する繊維の種類と個々の腸内フローラの構成によって、健康を促進するか悪化させるかが決まると指摘しています。

この研究結果は、個別化されたアプローチの重要性を示唆しています。「繊維に抵抗性のある腸内フローラを持つIBD患者は、さまざまな可溶性繊維を摂取することを控えるべきではありませんが、繊維に敏感な腸内フローラを持つ患者は、病気の管理において、繊維の摂取量とその種類を、慎重に検討する必要があります」

繊維に敏感な腸内フローラを持つ患者は、病気の管理において繊維の摂取量とその種類を慎重に検討する必要がある(Shutterstock)

 

また、この結果は、2012年に『World Journal of Gastroenterology』に発表された、特発性便秘症の症例を調査した古い研究の信頼性を裏付けるものでもあります。この研究では、63名の被験者に対し、二つのグループに分けて、まず一方には、2週間すべての食物繊維を食事から除去し、その後、受け入れ可能なレベルまで繊維摂取量を減らすよう指示しました。

もう一方のグループは、逆に高繊維食を続けさせました。

結果は、

「食物繊維の摂取を中止または減少させた患者は、症状に著しい改善が見られた一方で、高繊維食を続けた患者には変化が見られませんでした。食事の変更後1か月および6か月後に、直腸出血、膨満感、腹痛、排便困難といった症状が記録されました」と、研究の著者たちは記しています。

 

(つづく)

 

(翻訳編集 華山律)

 

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。