更年期やPMSを和らげる!プロゲステロンの驚くべき効果

女性ホルモンには、卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の2つがあります。

プロゲステロンは、エストロゲンの働きをバランスよく調整するため、更年期障害や月経前症候群(PMS)などの一般的な健康問題の症状を和らげる可能性があります。これまで女性の健康においてエストロゲンが注目されてきましたが、最近ではプロゲステロンにももっと注目すべきだという研究が増えてきています。

 

エストロゲンとプロゲステロンの関係

プロゲステロンという名前は、妊娠中に多く分泌されることからつけられました。このホルモンは、受精卵が子宮に着床しやすくしたり、子宮内膜を整えたり、骨盤の筋肉を強化したりする役割があります。しかし、これだけがプロゲステロンの役割ではありません。プロゲステロンのもう一つの重要な役割は、エストロゲンの働きを調整することです。

エストロゲンは、細胞の成長や分裂を促進する働きがあり、思春期の女性の体の発達、例えば骨盤が広がったり、胸が発達したり、月経が始まったりするのに関与しています。しかし、エストロゲンが多すぎると、ホルモンバランスが崩れ、乳がん脱毛ニキビなど、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があります。

一部の専門家は、エストロゲンを車のアクセル、プロゲステロンをブレーキに例えています。エストロゲンがライオンなら、プロゲステロンはそのライオンを調教する人のような役割を果たします。プロゲステロンがエストロゲンの働きをしっかりと調整しないと、エストロゲンが暴走して健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです、とホリスティック健康専門家であり、バイオアイデンティカルホルモン置換療法(HRT)を提供するOna’s Natural社のCEOであるキティ・マートン氏は『エポック・タイムズ』に語っています。

エストロゲン過剰の症状には、脚のけいれん、子宮や乳房にできるしこり、腰や太もも、腕の裏側に脂肪がたまること、そして不正出血などがあります。プロゲステロンは、エストロゲンが過剰に働いて、必要以上に体の組織を成長させないように調整する役割を果たしています。

エストロゲン過剰の症状には、脚のけいれんがある(Shutterstock)

 

「プロゲステロンとエストロゲンは、互いにバランスを取り合うパートナーのようなものです」とマートン氏は言います。「エストロゲンがどんな働きをしていても、それをサポートし、適切に調整するためにプロゲステロンが必要です」

「エストロゲンが過剰な場合、それは単にエストロゲンの量が多いというだけでなく、プロゲステロンによって調整されていないエストロゲンの状態を指します。女性がどれだけエストロゲンを作り出していても、プロゲステロンがエストロゲンの働きをコントロールしないと、ホルモンのバランスが崩れる可能性があります」

また、体重が増えすぎていること、ホルモン避妊薬の使用、ストレスや睡眠不足などもエストロゲンの量を増やし、プロゲステロンとのバランスが崩れやすくなります。さらに、エストロゲンに似た働きをする化学物質(農薬や日用品に含まれる成分など)も、エストロゲンの量を増やす要因となります。

2020年の研究では、女性の健康においてエストロゲンにだけ注目するのではなく、プロゲステロンを含めたより広い視点でのアプローチが必要であると提案されています。研究者たちは、女性のライフステージ全体にわたって、エストロゲンとプロゲステロンのバランスがどのように健康に影響を与えるかを解明するための研究を進める必要性を強調しています。

 

プロゲステロンとプロゲスチンの違い

一部の医師は、過剰なプロゲステロンが血栓や静脈血栓症と関連するという研究があるため、プロゲステロンの処方に慎重な姿勢をとっています。登録薬剤師であり、認定栄養士でもあるキャロル・ピーターセン氏は、『エポック・タイムズ』に対して、バイオアイデンティカル(自然に存在するホルモンと同じ構造を持つ)プロゲステロンと、その合成版であるプロゲスチンの違いを強調しています。プロゲスチンは、通常エストロゲンと一緒にホルモン補充療法(HRT)で処方されます。

プロゲスチンは、実験室で作られたもので、自然に存在するプロゲステロンの効果を模倣しますが、副作用や安全性の面で異なることがあります。ピルや子宮内避妊器具(IUD)などの避妊製品に使用される合成プロゲスチンは、高血圧、脱毛、不安やうつ病、そして乳がんリスクの増加などの副作用が報告されています。

ピル(Shutterstock)

 

しかし、ある研究では、HRTでエストロゲンと一緒に使用される自然のプロゲステロンは、プロゲスチンとは異なり、健康リスクを増加させないことが示されています。

さらに別の研究では、自然のプロゲステロンとその一部の派生物は、アンドロゲン(男性ホルモン)様の影響を及ぼさず、そのため心血管の健康に影響を与える脂質に悪影響を与えないことが示されています。

心血管疾患は高齢女性にとって最も重大な健康リスクの一つであり、2000年代初頭に行われた女性の健康に関する大規模な研究(Women’s Health Initiative)の契機となりました。この研究は、エストロゲンとプロゲスチンを組み合わせて服用していた女性が乳がん、心臓発作、脳卒中、血栓のリスクが高まることが判明し、突然中止されました。

ピーターセン氏は、多くの女性がプロゲステロン不足の状態で生活していると語っています。また、医師や患者の間には「プロゲステロン不足がどのようなものかに関する認識不足が非常に多い」と指摘しています。

例えば、女性はしばしばホットフラッシュ(更年期に起こる急なほてり)の治療にはエストロゲンが効果的だと伝えられます。ハーバード健康出版のウェブサイトに掲載された記事でも、「ホットフラッシュや夜間の発汗に対する最も効果的な治療法はエストロゲンである」と記載されています。

ホットフラッシュ(更年期に起こる急なほてり)の治療にはエストロゲンが効果的(Shutterstock)

 

しかし、ピーターセン氏はこの一般的な意見に異を唱えています。彼女は、ブリティッシュ・コロンビア大学の内分泌学および代謝学の教授であるジェリリン・プライアー氏の研究を引用しています。

プライアー氏は、月経周期に伴うエストロゲンとプロゲステロンの変動が女性の健康に与える影響を長年にわたり研究してきました。プライアー氏の研究によれば、プロゲステロンはホットフラッシュや夜間の発汗といった血管運動症状を効果的に治療し、睡眠を改善し、「閉経期に入った症状のある女性に必要な唯一の治療法である可能性がある」とされています。

プライアー氏の研究は、女性ホルモンであるエストラジオールとともに、プロゲステロンが骨形成を促進するために重要であることも示しています。女性は閉経期に骨密度の低下を経験することが多く、これにより骨折のリスクが高まる可能性があります。

それでもなお、マートン氏は、プロゲステロンがプロゲスチンと混同されることにより、医学界で依然として偏見があると述べています。そして、この二つの違いは小さいが重要であると強調しています。プロゲスチンは、分子レベルでわずかに異なり、それが乳がんのリスクに関わる可能性があるからです。

「これは非常に重要な問題です」と彼女は述べています。

 

プロゲステロンはどれくらいあれば十分ですか?

キャロル・ピーターセン氏によれば、プロゲステロン受容体は体全体に存在し、このホルモンは多くの異なる機能を果たすため、体内での需要が非常に高いそうです。

そのため、少量から始めて徐々に増やすという一般的な方法には注意が必要だと彼女は言います。彼女はしばしば患者に対して「最初から多めに摂取し、症状が改善されるまで増やす」ことを推奨しています。プロゲステロンの量が不足すると、症状が悪化する可能性があると指摘しています。

ピーターセン氏は、エストロゲンとは異なり、プロゲステロンは大量に摂取しても深刻な副作用がほとんどないと述べています。女性は、経口摂取、経皮吸収、または座薬など、さまざまな方法を試しながら、自分に合った投与量と方法を見つける必要があることが多いです。

自分に合った投与量と方法を見つける必要がある(Shutterstock)

 

「時には、症状が落ち着くまでに数百ミリグラムのプロゲステロンが必要な場合もあります」と彼女は言います。

しかし、ピーターセン氏はプロゲステロンの高用量には一つの注意点があると指摘しています。それは、カンジダと呼ばれる真菌感染症で、主に妊娠中や月経周期の黄体期に女性の膣内で発生します。プロゲステロン補充を開始する前に、カンジダの症状を完全に解消することを勧めています。

プロゲステロンはカンジダの状態を悪化させる可能性があるからです。カンジダの症状を軽減するには、食事や生活習慣の改善が効果的な場合もあれば、市販薬やホウ酸膣坐剤、あるいは薬の処方が必要な場合もあります。重症の場合には、感染症や症状を治療するための処方薬が必要になることがあります。

 

プロゲステロンの生成を促進する方法

プロゲステロンは、ワイルドヤムや大豆から得られるジオスゲニンという化学物質から合成されます。しかし、人間の体はジオスゲニンから直接プロゲステロンを作り出すことはできないため、ワイルドヤムや大豆を食べてもプロゲステロンのレベルは上がりません。亜鉛を豊富に含む食品、例えばカキ、牛肉、卵黄、肝臓、ナッツ、種子などは、プロゲステロンの生成を助けることができます。

亜鉛を豊富に含む食品は、プロゲステロンの生成を助けることができる(Shutterstock)

 

また、健康的な食事、運動習慣、適切な睡眠、そしてストレス管理もホルモンバランスを保つのに役立ちます。マートン氏は、特にマグネシウムの補給を勧めることが多いです。マグネシウムが不足すると、ホルモンバランスが崩れ、プロゲステロンの生成が減少する可能性があるからです。

ただし、ほとんどの女性はプロゲステロンのレベルを上げるために補充が必要であり、ピーターセン氏もマートン氏も、合成プロゲステロンよりもバイオアイデンティカルプロゲステロン(自然と同じ構造を持つプロゲステロン)を推奨しています。

多くのマートン氏やピーターセン氏の患者は、彼女たちが提案する方法で改善を感じています。両氏は、正確な検査方法を使用し、ホルモンの変動の複雑さを理解し、バイオアイデンティカルな補充療法を処方できる、機能医学の医師や専門家に相談することを勧めています。

ピーターセン氏は、プロゲステロンが、原因不明の体調不良に悩んでいた女性が再び自分の生活を取り戻す手助けになると述べています。

「彼女は知識を持ち、その知識とツールを使って心の落ち着きを取り戻し、本来の自分を取り戻すことができます」と彼女は言います。

これは、ホルモンの変動に悩む女性たちにとって、希望をもたらすメッセージです。

(翻訳編集 華山律)