抜け毛と白髪を防ぐための7つの必須栄養素

中年になると、多くの人が脱毛や白の問題に直面します。これらは、遺伝、加齢、そしてライフスタイル要因が複合的に影響するためです。年齢に関連する髪の問題をより深く理解することが大切です。

年齢に伴う髪の問題には、いくつかの特徴があります。そのひとつは、徐々に進行する脱毛です。これは、突然起こる円形脱毛症や、比較的若い時期に発症する男性型脱毛症とは異なり、時間をかけて進行します。髪が薄くなり、ボリュームが減少し、成長速度が遅くなるのが特徴で、最終的には分け目が広がり、頭皮が目立つようになります。

もう一つの特徴は、髪の白髪化です。通常、白髪はこめかみや額の髪の生え際から最初に現れます。

 

髪の健康を支える必須栄養素

遺伝的な要因を変えることはできませんが、食生活を改善することで髪の健康を向上させることができます。次に挙げる7つの栄養素は、健康な髪を維持するために欠かせないもので、食事から摂取することが可能です。

タンパク質:髪は主にタンパク質で構成されており、十分なタンパク質がなければその構造が維持できず、髪の健康は低下します。良質なタンパク質源には、魚、鶏肉、豆類、ナッツ、種子、一部の乳製品が含まれます。また、牧草飼育の有機赤身肉は、タンパク質だけでなく鉄分も豊富に含まれています。

牧草飼育の有機赤身肉は、タンパク質だけでなく鉄分が豊富に含まれている(Shutterstock)

 

鉄分:鉄分不足は、髪がもろくなり、脱毛につながることがあります。ある研究では、特に女性型脱毛症を持つ閉経前の女性に顕著ですが、脱毛症を持つ男女ともに血清鉄レベルが低い傾向にあることが分かりました。良質な鉄分源には、赤身肉、鶏肉、魚、豆類、全粒穀物、ナッツ、葉物野菜が含まれます。

亜鉛:亜鉛は、髪の成長と修復に重要な役割を果たします。牛肉、カキ、カボチャの種、貝類に多く含まれています。

ビタミンA:ビタミンAは強力な抗酸化物質であり、フリーラジカル(体を酸化させる)を中和し、髪の毛根を保護します。今年発表されたScience誌の研究では、ビタミンAが毛包幹細胞の調節と分化に関与しており、不足すると髪の成長が妨げられることが示されています。ビタミンAが豊富な食品には、ニンジン、カンタロープ、ホウレンソウ、ピーマン、カボチャなどがあります。

ニンジンはビタミンAが豊富に含まている(Shutterstock)

 

ビタミンC:ビタミンCは強力な抗酸化物質であり、鉄分の吸収も助けます。ビタミンCが豊富な食品には、柑橘類、イチゴ、トマト、ホウレンソウ、ピーマンが含まれます。

ビタミンE:ビタミンEは強力な抗酸化物質であり、頭皮の血行を促進し、髪の問題に対処するために重要です。

オメガ-3脂肪酸:オメガ-3は、抗炎症作用と抗酸化作用を持つ必須脂肪酸であり、髪の弾力性と輝きを維持します。脂の乗った魚、亜麻仁、クルミに豊富に含まれており、魚油が髪の成長を促進することが研究で示されています。

オメガ-3脂肪酸は、抗炎症作用と抗酸化作用を持つ必須脂肪酸である(Shutterstock)

 

これらの栄養素を毎日の食事に取り入れることで、徐々に髪の健康を改善することができます。しかし、毎食でこれらの食品を継続して摂取するのは難しいこともあり、吸収の問題で十分な量を摂取できない場合もあります。そのような場合には、個々のニーズに応じてサプリメントを検討することも一つの方法です。臨床的には、ビタミンD、亜鉛、オメガ-3が不足していることが多いとされています。

 

ストレスと白髪

食事の改善に加えて、心理的ストレスの管理も重要です。問題に対する視点やアプローチをポジティブに変え、建設的な思考と感情を育むことが求められます。これには継続的な努力と自己成長が必要です。また、人間関係の改善も欠かせません。現代社会において、人間関係の問題は大きなストレス源となっています。定期的な運動、瞑想、健康的な生活習慣、そして規則正しい生活リズムを保つことも同様に重要です。

2023年に『Journal of Clinical Medicine』に掲載された研究では、マインドフルネスに基づくストレス軽減法、催眠療法、心理療法などの心理的介入が、脱毛症の患者の精神的健康と生活の質を改善する効果があると示されています。

マインドフルネスに基づくストレス軽減法、催眠療法、心理療法などの心理的介入が、脱毛症

これらの介入は、不安、うつ病、ストレスを軽減する効果があり、髪の再生に関する一部の証拠も示唆されています。これらの治療法が脱毛の根本原因に直接対応するわけではありませんが、ストレスを軽減し、全体的な健康の向上に寄与することが示されています。

中には、高いストレスを感じる時期に急激に白髪が増える人もいます。2020年に『Nature』に発表された研究では、マウスを用いた実験で、ストレスが交感神経系の過剰な活性化を引き起こし、メラノサイト幹細胞(色素細胞)の過剰生産を刺激することが明らかになりました。時間が経つと、この過剰生産によりメラノサイトが枯渇し、白髪が発生します。この研究結果が人間にも当てはまるかどうかは、さらなる研究が必要です。

 

髪の健康と全体的なウェルビーイング

伝統中医学では、髪の健康は、内臓や体のエネルギーシステムの状態を反映していると考えられています。中医学の考え方では、「髪は血の余り」と言われており、髪の栄養は血液によって供給されるとされています。血液循環が悪い場合や血液に必要な栄養素が不足している場合、体は内臓を優先的に保護し、その結果、髪の健康が犠牲になり、脱毛が起こることがあります。

ほとんどすべての臓器が血液の生成と循環に関与していますが、髪の成長に最も密接に関わるのは腎臓です。

中医学では、「腎は精を蔵し、精は血を生む」と考えられています。精には、親から受け継いだ先天の精と、食事や呼吸から得られる後天の精が含まれており、その多くは腎臓に蓄えられています。

「腎は精を蔵し、精は血を生む」(Shutterstock)

 

腎気(腎のエネルギー)と腎の精は、成長、繁殖、老化過程に基本的な影響を与えます。中医学の視点から見ると、アンチエイジングとは、腎気と精を維持することです。つまり、髪の状態はその人の腎気と精の状態を反映しています。

また、心、肺、肝、脾も、髪の健康に欠かせない臓器です。中医学では、「心は血脈を主る」とされ、血液循環と血管の健康は、心の機能に依存していると考えられています。

他の臓器に関しては、「肺は皮毛を主とする」とされ、血液中の精と気を利用して皮膚や髪を営育します。脾は消化を管理し、血液の生成にも関与しています。中医学では「肝は疏泄を主とする」とも言われ、肝は気と血の流れを調整し、エネルギーが全身、特に頭皮に行き渡るようにしています。

中医学が指す心、肝、脾、肺、腎は、物理的な臓器だけでなく、それを中心としたエネルギーシステム全体を指しています。そのため、髪の健康は体全体の健康の指標と見なされています。

これが、心理的ストレスや感情的な要因が、私たちの健康と髪に大きな影響を与える理由です。中医学では、感情が体のエネルギーシステムを乱すと考えられています。「怒りは肝を傷つけ、恐れは腎に影響し、心配は脾を弱め、過度の喜びは心を負担し、悲しみは肺を重くする」とされています。喜びはネガティブな感情ではないように見えますが、過度の興奮は有害とされています。

脱毛や白髪の予防は、全体的な健康改善の一環である(Shutterstock)

 

したがって、中医学の視点から見ると、脱毛や白髪の予防は、全体的な健康改善の一環であり、髪はその指標として機能します。

結論として、バランスの取れた食事とストレス管理を心がけることで、髪の健康だけでなく、全体的な健康にも良い影響が現れるでしょう。

 

この記事に記載されている内容は、著者の意見であり、『The Epoch Times』の見解を必ずしも反映するものではありません。

 

(翻訳編集 華山律)

慢性的な精神、行動、身体の病気を対象とした統合医療医。中国医学の医師。精神科認定医。統合医療の楊研究所とアメリカ臨床鍼灸研究所の創設者兼ニューヨーク北部医療センターのCEO。『Integrative Psychiatry(統合精神医学)』、『Medicine Matters(医学の重要性)』、『Integrative Therapies for Cancer(癌の統合療法)』に貢献。また、ハーパーコリンズの『Facing East: Ancient Secrets for Beauty+Health for Modern Age(現代の美と健康のための古代養生法)』とオックスフォード大学出版局の『Clinical Acupuncture and Ancient Chinese Medicine(臨床鍼灸と古代中国医学)』の共著者。