亜鉛は、健康を維持するために欠かせない微量元素です。体内の亜鉛が不足すると、成長の遅れ、免疫力の低下、疲労感の増加、脱毛、肌の質の悪化、睡眠の質の低下など、さまざまな症状が現れます。

メリーランド大学で統合医療と臨床栄養を専門とする医師、オウ・ハンウェン氏は、NTDTVの「Health 1+1」プログラムで、健康維持における亜鉛の役割や、亜鉛不足の症状、そしてどのように食事から十分な亜鉛を摂取できるかについて語りました。

オウ氏によれば、亜鉛は人体の数百もの酵素が機能を維持するために不可欠であり、妊娠期から乳幼児期、子供時代、思春期に至るまで、健康と成長を支える重要な役割を果たしています。

亜鉛の主な機能

亜鉛は多くの生理的機能をサポートし、体のすべての組織に存在しています。

免疫システムのサポート
ほぼすべての免疫細胞が正常に機能するために亜鉛を必要としています。亜鉛の不足も過剰も、免疫システムに悪影響を与える可能性があります。

タンパク質とDNA合成
亜鉛はDNAの合成、細胞の分裂と成長、タンパク質の合成、栄養素の代謝に必要です。また、体のほとんどのシステムの発育と機能にも重要です。

傷の治癒と組織修復
亜鉛は、膜の修復や凝固、炎症、免疫防御、新生血管形成、瘢痕形成など、傷の治癒過程のさまざまな段階を調整する役割を担っています。

味覚の向上
食べ物を食べたり匂いを感じたりすると、体の器官は化学信号を脳に送ります。亜鉛は、味覚を感じる際の味蕾や神経、脳の信号伝達に関与しています。

生殖システムの維持
亜鉛は、精子形成から出産まで、人間の生殖過程のすべての段階に関与しています。特に妊娠期、出産時、および周産期や新生児期に重要な役割を果たします。
複数の研究で、母体の亜鉛状態と胎児の成長や出生結果、母体や周産期の健康に密接な関連があることが確認されています。

がん予防
2023年の研究では、亜鉛のホメオスタシス（恒常性）が乱れると、がんの発症につながる可能性があります。さまざまな研究結果から、細胞内での亜鉛の不調整といくつかのがんとの関連性が示されています。

亜鉛不足の症状

亜鉛は体内で多くの重要な機能を果たしているため、亜鉛が不足すると複数の体のシステム、臓器、組織に影響を与えます。通常健康な人でも、食事からの亜鉛摂取が十分でない場合、次のような一般的な症状が見られます。

脱毛

下痢

目や皮膚の問題

味覚や嗅覚の低下

子供では成長が遅れることがあり、思春期の子供では性的発達の遅れが見られることがあります。

睡眠障害　

亜鉛不足は、睡眠障害のリスク増加とも関連しています。2023年に発表された3660人の成人を対象とした国民健康栄養調査（NHANES）の横断的分析によれば、血清中の亜鉛レベルや亜鉛と銅、セレンとの比率が自己申告による睡眠障害のリスクと逆相関していることが明らかになりました。

亜鉛を多く含む食品

人間の体は亜鉛を貯蔵できないため、食事を通じて継続的に摂取する必要があります。オウ・ハンウェン氏によると、亜鉛が豊富に含まれている食品には次のものがあります。

生牡蠣（亜鉛含有量が最も高く、100グラムあたり39.3ミリグラム）成人男性や妊婦の1日の最大摂取量は11ミリグラムです。

牛肉、羊肉、鶏肉、豚肉

魚、エビ

牛乳や乳製品

穀物やナッツ類

オウ氏は、「通常の食事をしていれば、多くの人は亜鉛不足に悩むことはありません」と説明しています。しかし、特定の人々は亜鉛の吸収が十分でないことがあり、その場合は亜鉛不足につながる可能性があります。

亜鉛不足のリスクが高いグループ

亜鉛は体にとって重要なミネラルですが、特定の健康状態や食事の影響で、亜鉛の必要量を満たすのが難しい人々がいます。以下は、亜鉛摂取や吸収に苦労することが多いグループです。

消化器疾患や減量手術を受けた患者　関連する疾患や炎症により、亜鉛の摂取が不十分になったり、吸収が悪くなったり、尿中に排泄される量が増えることがあります。

セリアック病患者　亜鉛の吸収障害や腸の炎症が原因となります。

ベジタリアン　ベジタリアンの食事は亜鉛の含有量が少なくなる傾向があります。

妊娠中または授乳中の女性　妊娠や授乳に伴い、亜鉛の必要量が増加します。妊娠中の女性は毎日3ミリグラム、授乳中の女性は4ミリグラムの追加摂取が必要です。

完全母乳で育てられている生後6か月以上の乳児　母乳中の亜鉛濃度は出生後1か月でピークに達し、その後徐々に減少します。生後6か月を過ぎても完全母乳で育てられている乳児は、必要な亜鉛の摂取量が不足する可能性があります。

鎌状赤血球症の子供　錯体療法（金属を含む化合物である錯体を用いた治療法）の治療が亜鉛の吸収に影響を与えることがあります。

アルコール依存症の人　アルコールの摂取により亜鉛の吸収が減少し、尿中への亜鉛の排泄が増加します。

亜鉛サプリメントの注意点

亜鉛サプリメントは健康に役立つことがありますが、オウ・ハンウェン氏は、過剰摂取による副作用に注意を呼びかけています。過剰な亜鉛摂取は、消化不良、吐き気、嘔吐、頭痛、疲労感、免疫機能の抑制などの中毒症状を引き起こす可能性があります。アメリカでは19歳以上の成人における亜鉛の1日の最大摂取量は40ミリグラムとされています。

そのため、亜鉛サプリメントを使用する際は、医師や栄養士の指導に従い、推奨される摂取量を超えないように注意しましょう。また、長期間にわたる高用量の亜鉛サプリメントの使用は避け、毒性のリスクを防ぐことが重要です。

最も望ましいのは、サプリメントに頼りすぎず、食事を通じてバランスよく亜鉛を摂取することです。

（翻訳編集　華山律）