生活習慣の小さな変化が子宮内膜症からあなたを救う

子宮内膜症は、世界中の何百万もの女性に影響を与える慢性的で、時に深刻な病気です。これまで、医療的治療や手術が管理の中心とされてきましたが、最近の研究では、栄養や生活習慣の改善が症状の緩和や病気の進行を防ぐために重要な役割を果たす可能性があることが明らかになっています。

イギリスの健康コーチであるリヴィー・フランクスさんはこう語ります。「私の子供時代、10代、そして成人初期には、てんかんや摂食障害、うつ病、そして耐えがたい痛みなど、さまざまな健康問題に悩まされていました。2018年になってようやく子宮内膜症と診断され、長年の不確実さは終わりましたが、同時に慢性疾患との新たな戦いが始まりました」

フランクスさんは、栄養や生活習慣に少しずつ工夫を加えることで、子宮内膜症の症状を改善し、管理する方法を見つけたと話しています。

 

子宮内膜症とは?

通常の月経周期では、卵巣から分泌されるホルモンによって、子宮内膜と呼ばれる子宮内側の組織が厚くなり、受精卵の着床に備えます。受精が起こらない場合、この内膜は月経として体外に排出されます。

しかし、子宮内膜症の女性では、子宮内膜に似た組織が子宮の外側に増殖します。この組織も月経周期に伴って厚くなり、剥がれ落ちますが、体外に排出することができないため、体内に溜まります。これが炎症や痛み、瘢痕組織や癒着を引き起こし、臓器が互いに癒着することもあります。重症になると、卵管が閉塞し、不妊の原因となることもあります。

主な症状には、不妊症、重度の骨盤痛、腰痛、疲労、月経困難症、便秘、膨満感などが挙げられます。これらの症状が見られる場合は、婦人科専門医に相談することが重要です。

 

栄養がどのように役立つか

栄養士であり、米国栄養学会のスポークスパーソンでもあるスー・エレン・アンダーソン・ヘインズ氏は、子宮内膜症がエストロゲン優勢の疾患であるため、体内の過剰なエストロゲンを減少させるための食事や生活習慣が重要だと『エポックタイムズ』に語っています。ここでは、子宮内膜症の治療や痛みの予防に役立つとされる栄養介入法について紹介します。

 

食事における脂肪の重要性

子宮内膜症はエストロゲン依存性疾患のため、特定の種類の脂肪を摂取することで、体内のエストロゲンの循環レベルを低下させる可能性があります。2023年に『Frontiers in Nutrition』に掲載された研究でも、この関連性が指摘されています。

特に、トランス脂肪酸の摂取は、子宮内膜症のリスク増加と関連しています。『Human Reproduction』誌に掲載されたナースズ・ヘルス・スタディによるデータでは、トランス脂肪酸の摂取量が多い女性は、少ない女性に比べて子宮内膜症と診断されるリスクが48%高いことが明らかになりました。一方で、総脂肪摂取量自体は子宮内膜症のリスク増加とは関連がありませんでした。

一方、長鎖オメガ3脂肪酸(脂の多い魚、チアシード、クルミなどに含まれる脂肪酸)の摂取量が多い女性は、子宮内膜症と診断されるリスクが22%低いことがわかっています。このことから、有害な脂肪を減らすだけでなく、良質な脂肪を適切に摂取することも重要だということです。

研究者たちは、「平滑筋の収縮、エストロゲンのレベル、炎症、プロスタグランジン(アラキドン酸に由来する生理活性脂質)の代謝、月経周期といった要因が、子宮内膜症に影響を与える可能性があり、これらは食事の内容によっても影響を受ける」と述べています。たとえば、特定の脂肪酸は血液中の炎症マーカーを増加させ、それが子宮内膜症の悪化に寄与することを指摘しています。

 

植物性食品をもっと食べよう

子宮内膜症の症状には、炎症が大きく関わっています。そのため、抗炎症効果のある植物ベースの食事が症状の改善に役立つとされています。特に、食物繊維は体内のエストロゲン量を調整し、エストロゲン依存性疾患である子宮内膜症の改善に役立つ可能性があります。

さらに、植物性食品に含まれるポリフェノール(植物由来の強力な抗酸化物質)は、子宮内膜症に対して重要な効果を持つことがわかっています。ポリフェノールには抗炎症作用があり、エストロゲンの働きを調整する効果があるため、子宮内膜症の治療に有効な可能性があります。また、ポリフェノールは、妊娠や子供の発育、生殖器に悪影響を与えることがないため、長期的に安心して摂取できる栄養素です。

ポリフェノールを含む食品例(Shutterstock)

 

栄養士のスー・エレン・アンダーソン・ヘインズ氏は、「大豆、レンズ豆、亜麻仁(アマ二)など、植物性エストロゲンが豊富な食品を積極的に摂ることで、体に良い影響を与えることができます」と述べています。彼女はさらに、「これらの食品は、キセノエストロゲン(体内でエストロゲンのように働く人工的な化学物質)がエストロゲン受容体に結合するのを防ぐ効果があります」と説明しています。

 

ビタミンDの効果

ビタミンDも子宮内膜症による痛みや症状を軽減する効果があるとされています。2020年に行われたメタアナリシスでは、ビタミンD不足が子宮内膜症のリスクや症状の重症度を高めることが示されました。

あるランダム化比較試験の結果によると、子宮内膜症の女性が12週間にわたり、2週間ごとに5万国際単位のビタミンDを摂取したところ、自己申告による骨盤痛が大幅に軽減されました。また、ビタミンDの摂取は炎症マーカーの低下や抗酸化能力の向上とも関連しており、抗酸化作用や抗炎症効果が期待されています。

 

赤身肉の摂取とリスク

2018年に『American Journal of Obstetrics and Gynecology』で発表された研究では、8万人以上の参加者を対象に、赤身肉(加工済みおよび未加工)の摂取と子宮内膜症のリスクとの関連が示されました。この研究によると、1日に2回以上赤身肉を食べる女性は、週に1回未満しか食べない女性に比べて、子宮内膜症のリスクが56%高くなることがわかりました。

このリスクの増加は、赤身肉の摂取によって体内のエストラジオール(エストロゲンの一種)や炎症マーカーが上昇することと関連している可能性があります。これらは子宮内膜症の進行や発症に寄与するとしています。また、動物由来の食品には、ホルモンバランスを乱す内分泌かく乱物質が含まれている場合があり、これもホルモンの不均衡を引き起こす一因とされています。

 

腸に良い食品

栄養士のスー・エレン・アンダーソン・ヘインズ氏は、「腸、特に大腸はエストロゲンを分解する重要な役割を果たします。したがって、ホルモンバランスを整えるためには、消化器系の健康を維持することが非常に大切です」と述べています。

腸の健康をサポートするために、彼女は次の食品を勧めています。

プレバイオティクス食品 ニンニク、全粒穀物、バナナなど

発酵食品 ザワークラウト、ココナッツケフィア、テンペ、ヨーグルトなど

さらに、食物繊維の摂取を増やすことも効果的です。ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜は、体内の余分なエストロゲンを排出するのに役立ちます。

ヨーグルト(Shutterstock)

 

産婦人科医のドーン・エリクソン博士によると、ターメリックに含まれるクルクミンには、炎症を引き起こすプロスタグランジンの働きを抑制する効果があり、炎症を軽減することが期待できます。また、クルクミンはエストロゲンのレベルを下げる効果もあり、エストロゲンの産生を抑えることで、月経痛の軽減にも役立つ可能性があります。

 

避けるべき食品

産婦人科医のドーン・エリクソン博士は、子宮内膜症の症状を悪化させる可能性のある炎症を引き起こす食品として、砂糖、アルコール、小麦、植物油、牛乳由来の乳製品を避けることを勧めています。また、マグネシウムや亜鉛は、ストレス反応を調整する脳の海馬をサポートし、ストレスが子宮内膜症の症状を悪化させることを防ぐのに役立ちます。ストレスがかかると脳の視床下部が活性化され、コルチゾールの分泌が促進されるため、ストレス管理は重要です。

エリクソン博士は、「瞑想、マッサージ、十分な休息、そして適切なカロリー摂取は、血糖値を安定させ、炎症を抑える助けになります。特に朝食には、少量のタンパク質を毎回の食事に取り入れることを検討してください」とアドバイスしています。

 

ライフスタイルの改善

リヴィー・フランクスさんは、神経系を落ち着かせ、心を整えるために、瞑想や呼吸法を実践することを推奨しています。特に症状が悪化しているときには効果的です。
「私は『Insight Timer』などのアプリを使ったり、Spotifyで周波数音楽を聴いたりして、1日10分ほどリラックスしています。その後は、YouTubeで公開されているウィム・ホフ呼吸法を取り入れています」と彼女は語っています。

また、デトックスや適切な栄養にも焦点を当てることが大切だと言います。フランクスさんは、自分の体のニーズを理解し、食事や活動に対する反応を観察することが重要だと強調しています。「自分自身の体に耳を傾けることが大切です。最初は無理に自分の体を抑え込もうとして失敗しました。それよりも、体の本当のニーズを理解することが大切です」と彼女は述べています。

体を動かすことも非常に重要です。ダンス、ランニング、歌うことなど、どんな形でも構いません。体を動かすことで、緊張や感情を解放し、全体的な健康に良い影響を与えます。「私はストレスが症状を悪化させることに気付き、今ではキッチンで踊ったり、朝のランニングをして気分をリフレッシュしています」とフランクスさんは言います。

栄養士のアンダーソン・ヘインズ氏も、運動は体脂肪を管理し、エストロゲンレベルを下げるために重要だと述べています。研究によると、脂肪組織はエストロゲンを生成するため、体脂肪が多いとエストロゲンレベルが高くなる可能性があります。

さらに、彼女はガラス製の保存容器や水筒の使用を推奨しています。プラスチック容器に含まれるBPA(ビスフェノールA)は、ホルモンを模倣し、ホルモンバランスに悪影響を与える可能性があります。また、無添加のケア用品や家庭用品を選ぶことで、プラスチックや化学物質、農薬、浄水システムに含まれるキセノエストロゲン(体内でエストロゲンのように作用する物質)への暴露を最小限に抑えることができます。

 

期待できる効果

栄養士のスー・エレン・アンダーソン・ヘインズ氏によれば、食事や生活習慣を改善することで、次のような効果が期待できるとしています。

月経時の痛みの軽減

出血量の減少

膨満感、便秘、吐き気などの消化器系の問題の軽減

妊娠しやすくなる

通常、子宮内膜症の症状が改善されるまでには2〜3回の月経周期が必要だとされています。これは、卵胞のライフサイクルや成熟期間が約100日、つまり3回の月経周期に相当するためです、と産婦人科医のドーン・エリクソン博士は説明しています。

エリクソン博士は、「子宮内膜症の管理には、全体的なアプローチが必要です。魔法のようにすぐ効く食べ物や薬は存在しません。しかし、食事や生活習慣の改善は、子宮内膜症の予防・管理において非常に強力なツールとなります」と強調しています。

(翻訳編集 華山律)

ゼナ・ルー・ルーは、健康ジャーナリストで、健康調査ジャーナリズムの修士号を持ち、機能栄養に特化した認定健康およびウェルネスコーチです。スポーツ栄養学、マインドフルイーティング、内的家族システム、および応用ポリヴェーガル理論のトレーニングを受けています。彼女はプライベートプラクティスで働き、英国に拠点を置く健康学校の栄養教育者としても活動しています。