自分に合ったプロテインパウダーの選び方

プロテインパウダーを選ぶ際は、ライフスタイルや栄養のニーズ、さまざまな製品の種類と品質を考慮することが重要です。ヘンププロテインやピープロテイン、ホエイプロテインなど、プロテインパウダーは、タンパク質摂取量を増やし、健康を促進したい人々にとって欠かせない存在となっています。各種プロテインにはそれぞれのメリットやデメリットがあり、その中から適切なものを選ぶためには、各タイプの特徴を理解することが大切です。

 

プロテインパウダーの潜在的なメリット

プロテインパウダーは、動物や植物由来の濃縮された栄養補助食品です。タンパク質摂取量を手軽に増やすことができ、さまざまなフレーバーも揃っています。

1. 体重管理

タンパク質を豊富に含む食事は、満腹感を長時間持続させ、体重管理に役立つ可能性があります。2018年に『Nutrition Reviews』で発表された系統的レビューによると、食事と一緒にプロテインを摂取することで、筋肉量を減らすことなく脂肪量を減少させ、体重管理に効果があることが示されています。この効果は、間食としてではなく、食事中に摂取し、抵抗運動(筋トレ)と併用した場合に顕著です。

2. 筋肉の成長と修復

プロテインパウダーは、特に運動後の筋肉回復と成長をサポートします。2018年に『British Journal of Sports Medicine』で発表された49件の研究(約2千人を対象)をレビューした結果、健康な成人が長期間にわたって抵抗運動トレーニングを行う際、タンパク質サプリメントが筋力と筋肉量の「有意な向上」をもたらしたことが明らかになりました。

3. 栄養補給を手軽に

プロテインパウダーは、手軽にタンパク質を補給できるため、食事の準備に時間をかけられない人にとって便利です。特に、タンパク質の必要量が高い人や、ベジタリアンやヴィーガンのように食事制限がある人にとっては、大きなメリットとなります。

 

プロテインパウダーが必要かどうか

プロテインパウダーを日常に取り入れるかどうかは、個々のライフスタイルや栄養ニーズを考慮することが重要です。

「国際スポーツ栄養学会(ISSN)」は2017年に、タンパク質と運動に関するレビューを発表しました。

その立場では「身体活動が活発な人々は、全食品から1日のタンパク質必要量を満たすことが可能だが、サプリメントは、カロリー摂取を抑えつつ、必要なタンパク質の質と量を確保するための実用的な方法である」とされています。

特に、トレーニング量の多いアスリートにとっては有効です。

整形外科医でスポーツ医学のフェローシップを修了したロバート・マクラフリン博士は、「ほとんどの人にとって、プロテインパウダーは全食品を補完するために使用すべきであり、置き換えるものではありません」と『エポックタイムズ』に語っています。

また、マクラフリン博士は、「プロテインサプリメントは、運動習慣がない人や、腎臓病などの医療上の問題を抱える人にとっては不要であり、潜在的に有害である」とも指摘しています。逆に、アスリートや非常に活動的な人は、筋肉の成長や修復のために追加のタンパク質が有益です。

「理想的なプロテインパウダーの種類は、その人のニーズや食生活に応じて異なります。必要な量も、活動量、健康状態、目標によって変わってきます」とマクラフリン博士は述べています。

 

動物性プロテインと植物性プロテイン

植物性プロテインは、動物性プロテインに比べて必須アミノ酸が少なく、消化吸収率も低いとされています。そのため、一般的に動物性のプロテインの方が体に吸収されやすいと言われます。しかし、筋肉増加に関しては、両者の違いはほとんどないことが研究で示されています。

2022年に『Journal of Nutrition』に発表された研究では、動物性プロテインと植物性プロテインを比較した結果、30グラムの牛乳由来のプロテインと、同量の小麦、トウモロコシ、エンドウ豆をブレンドしてプロテインを摂取した場合の「食後の筋タンパク質合成(筋肉が食事後に作られるプロセス)」に違いがないことが明らかになりました。

また、2021年に『Nutrients』に発表された系統的レビューとメタアナリシスでも、タンパク質の摂取源が筋肉量や筋力に大きな影響を与えないという結論に達しています。ただし、動物性プロテインは除脂肪体重の割合をより大きく増加させる効果があり、特に50歳未満の人において顕著だとされています。

プロテインパウダー(Shutterstock)

 

動物性プロテインパウダーの種類

プロテインパウダーには、さまざまな動物由来のものがあり、それぞれに特有の特性とメリットがあります。自分に最適なプロテインパウダーを選ぶ際は、食事の好み、フィットネス目標、アレルギーや敏感な体質を考慮することが重要です。

1. ホエイプロテインパウダー

ホエイプロテインは、チーズや乳製品から抽出されたプロテインで、必須アミノ酸をすべて含んでいるため非常に人気があります。吸収が速く、ロイシンが豊富で、筋タンパク質合成を促進することが示されています。運動後の筋肉回復に特に効果的です。

2. カゼインプロテインパウダー

カゼインプロテインも牛乳由来ですが、ホエイとは異なり消化がゆっくりで、アミノ酸が血流に徐々に供給されます。このため、就寝前に摂取することで、睡眠中の筋肉成長をサポートするのに適していると言われています。

3. ボーンブロスプロテインパウダー

ボーンブロスプロテインパウダーは、鶏肉、牛肉、魚などから作られる骨のスープから抽出されます。骨や結合組織を煮込んで栄養を抽出し、そのスープを濃縮したパウダーです。コラーゲン、ゼラチン、カルシウム、さまざまなミネラルが豊富に含まれています。

4. コラーゲンプロテインパウダー

コラーゲンプロテインパウダーは、動物の結合組織に含まれるコラーゲンから作られています。コラーゲンは体内で最も豊富に存在するタンパク質であり、皮膚、骨、筋肉、腱、靭帯を構成します。高品質なタンパク源ですが、完全なタンパク質ではないため、すべての必須アミノ酸を含んでいるわけではありません。

2019年に『Nutrients』に掲載された研究では、コラーゲンが過体重女性の体組成に変化をもたらす効果はないことが示されています。しかし、コラーゲンパウダーには、の健康、皮膚や髪の健康、肝機能をサポートするなど、多くのメリットがあります。

 

植物性プロテインパウダーの種類

植物性プロテインパウダーは、動物由来のプロテインに代わる多様な選択肢を提供しており、さまざまな食事の好みや栄養ニーズに対応しています。以下は、主な植物性プロテインの種類とその特徴です。

1. ピープロテインパウダー

黄色いエンドウ豆から抽出されたピープロテインは、ビーガンやベジタリアンに人気です。2015年に『Journal of the International Society of Sports Nutrition』に発表された研究によると、ピープロテインは、抵抗運動(筋トレ)と組み合わせた場合、ホエイプロテインと同様に筋肉増加に効果的であることが示されています。

また、消化をゆっくりさせることで満腹感を高める効果もあるとされています。エンドウ豆は、食物繊維、カリウム、B群ビタミンが豊富です。

2. ソイプロテインパウダー

ソイプロテインパウダーは、脱脂大豆フレークから作られます。ソイプロテインアイソレートは、豆乳などの食品よりも高いタンパク質含有量を持つことが一般的です。食物繊維やカルシウム、鉄、マグネシウム、亜鉛などのビタミンやミネラルも豊富です。ソイプロテインは、アミノ酸のプロファイルが動物性プロテインに近く、栄養価が高いとされています。

2020年に『International Journal of Environmental Research and Public Health』に発表されたランダム化試験では、ソイプロテインとホエイプロテインが筋力トレーニング中に除脂肪体重や筋力に与える効果に差がないことが示されました。ただし、同じ効果を得るには、ソイプロテインを「若干多く」摂取する必要があるとされています。

3. ヘンププロテインパウダー

ヘンププロテインは、麻の種子を細かく粉砕し、オイルを除去して作られる植物性プロテインパウダーです。必須アミノ酸9種類すべてを含む完全タンパク質であり、オメガ3およびオメガ6脂肪酸を含んでいます。また、食物繊維も豊富です。

4. 玄米プロテインパウダー

玄米から抽出されたプロテインパウダーは、鉄、ビタミンC、カルシウム、食物繊維などのビタミンやミネラルが含まれています。研究によると、玄米プロテインは、運動パフォーマンスや体組成の改善においてホエイプロテインと同じ効果があることが示されています。

ブレンドプロテイン

植物性プロテインの持つさまざまなメリットを活かすために、複数の植物由来のプロテインをブレンドした製品もあり、より包括的な栄養プロファイルを提供します。

エンドウから抽出されたプロテイン(Shutterstock)

 

コンセントレート、アイソレート、
そして加水分解物の違いとは?

プロテインの「コンセントレート(圧縮する)」「アイソレート(分離する)」「加水分解物」は、タンパク質の含有量と製造方法に違いがあります。それぞれにメリットがあり、どれを選ぶかは個々の食事やフィットネス目標に応じて異なります。

マクラフリン氏によれば、「コンセントレートとアイソレートは純度に違いがあり、加水分解物は消化吸収が早いという特徴があります」とのことです。

コンセントレート

コンセントレートは、重量の最大80%がタンパク質で構成されています。残りの20%は脂肪、乳糖、ミネラル、そして水分が含まれています。このため、コンセントレートには乳糖が多く含まれており、糖分や炭水化物の含有量がやや高くなる傾向があります。

アイソレート

アイソレートは、タンパク質含有量が90%以上と、コンセントレートよりもさらに純度が高くなっています。追加の加工が行われ、乳糖や脂肪の含有量が低減されているため、乳糖に敏感な人や、低脂肪・低炭水化物の食事を好む人に適しています。

加水分解物

加水分解物はさらに加工が施され、消化や吸収が速くなるように作られています。一般的に、加水分解プロテインパウダーは他のタイプよりも高価です。

 

プロテインタイプの効果に関する研究結果

2019年に『Nutrients』誌で発表されたメタ分析では、コンセントレート、アイソレート、加水分解物のホエイプロテインがプラセボと比較されました。このレビューでは、プロテインのタイプやタンパク質濃度、身体活動レベルに関わらず、筋肉増加に対する明確な効果は見られませんでした。

しかし、ホエイプロテインコンセントレートを摂取した人々と定期的に運動を行っていた人々には、脂肪量の「統計的に有意な」減少が確認されました。また、他の研究では、特に高齢者において、ホエイプロテインが筋肉量を増加させる可能性があることが示されています。

2018年に『Journal of Strength and Conditioning Research』に発表された研究では、加水分解されたチキンプロテイン、ビーフプロテインアイソレート、ホエイプロテインコンセントレートが8週間のレジスタンストレーニングと組み合わせて比較されました。その結果、すべてのグループで筋力が向上しましたが、プロテインを摂取したグループでは筋肉量の増加と脂肪量の減少が顕著に見られました。

どれを選ぶべきか?

コンセントレート、アイソレート、加水分解物の効果に関するデータはまだ結論を出せるものではなく、さらなる研究が必要です。いずれも質の高いタンパク質源を提供しますが、選択は個々の好みによります。乳糖に敏感な人や、低炭水化物・低脂肪の食事をしている人にはアイソレートが良い選択肢かもしれません。消化に問題がある場合や、栄養の吸収速度を重視する場合は、加水分解物が適しているでしょう。食事制限がなく、コスト面を考慮してタンパク質を補給したい場合は、コンセントレートが手頃な選択肢となります。

 

プロテインパウダーの潜在的なデメリット

プロテインパウダーは便利で手軽にタンパク質を摂取できる方法ですが、取り入れる前に考慮すべきデメリットも存在します。

1. 過剰摂取のリスク

プロテインパウダーは過剰に摂取すると、腎臓に負担をかけ、脱水や消化不良を引き起こす可能性があります。2021年に『Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism』で発表された11件の論文の系統的レビューでは、長期間にわたりホエイプロテインを過剰に摂取することが、特に運動不足の生活をしている場合、腎臓や肝臓に悪影響を及ぼす可能性があることが示されています。さらに、過剰なタンパク質は体内でグルコースに変換され、減量を目的としている場合には逆効果となることがあります。

2. 品質に関する懸念

一部のプロテインパウダーには、砂糖や人工的なフレーバーなど、望ましくない添加物が含まれていることがあります。研究では、プロテインパウダーに重金属が含まれていることも明らかになりました。

2020年に『Toxicology Reports』で発表された米国の消費者レポートとクリーンラベルプロジェクトによる分析では、植物由来のプロテインパウダーが動物由来のプロテインパウダーよりも重金属の負担が高い傾向があることが示されました。しかし、通常の推奨量で使用する限り、重金属による健康への悪影響は見られないと結論づけられています。
 

高品質なプロテインパウダーを選ぶためのポイント
 

1.成分がシンプルで、人工的な添加物を含まないものを選ぶ。

2.有機認証を受けた製品を選び、潜在的な汚染物質を減らす。

3.NSF認証(National Sanitation Foundation)やInformed Choice認証をチェックする。

4.医療専門家や登録栄養士に相談し、個別の推奨を受ける。
 

3. 栄養の偏り

プロテインパウダーに依存しすぎると、全食品に含まれる必須栄養素を逃すリスクがあります。タンパク質を全食品から摂取することは、バランスの取れた栄養摂取に繋がるため、食事全体のバランスを意識することが重要です。

4. 消化の問題

ホエイプロテインなど、乳糖を含むプロテインパウダーは、乳糖不耐症の人にとって消化が難しい場合があります。ホエイプロテインアイソレートは乳糖の含有量が少ない一方、コンセントレートは乳糖を多く含む傾向があります。乳糖に敏感な場合は、「乳糖フリー」と明記されたプロテインパウダーを選ぶことが推奨されます。

プロテインパウダーのデメリットを考慮する(Shutterstock)

 

プロテインパウダーの効果的な活用法

筋肉を増強するためには、国際スポーツ栄養学会(ISSN)は運動後2時間以内にタンパク質を摂取することを推奨しています。また、減量を目指す場合、1日の中で少量ずつタンパク質を摂取することで、食欲を抑え、満腹感を高め効果があるとされています。

マクラフリン氏は、「私のアクティブな患者さんたちには、ホエイプロテインアイソレートが筋肉をつけ、運動からの回復をサポートする高品質な選択肢として適しています」と述べています。さらに、乳製品に敏感な人には、エンドウ豆プロテインのような植物性プロテインが完全なアミノ酸プロファイルを提供する優れた選択肢であると付け加えています。また、「どちらの場合も、砂糖の添加が少ないプロテインパウダーを選ぶことをお勧めします」と述べています。
 

プロテインパウダーの使い方

プロテインパウダーは、水やミルクに溶かして飲んだり、スムージーに加えたりするのが一般的です。しかし、それだけにとどまらず、さまざまなレシピに活用できます。

ホリスティック栄養コーチであるメリディス・マン氏は、「プロテインをレシピに取り入れる方法はたくさんあります。クッキーやマフィン、ブラウニー、焼きオートミール、またはグレインフリーのオートミール代替品などが私のお気に入りです」と語っています。植物性プロテインパウダー(主に米やエンドウ豆由来)は、動物性タンパク質を避けたい人にとっても良い選択肢ですが、マン氏は「植物性のものはチョーキーな食感になりがちなので、焼き菓子にはあまり適していないことが多い」と指摘しています。その代わり、無糖のヨーグルトやカッテージチーズに混ぜてスプーンで食べるか、フルーツディップとして使うことを提案しています。
 

質の高いプロテインパウダーを選ぶポイント

プロテインパウダーを選ぶ際には、品質が最も重要です。添加物が少なく、シンプルな成分リストを持つものを選ぶことが大切です。マン氏も、「一部のプロテインサプリには添加物や人工甘味料、砂糖が含まれていることがあり、それを避けたい人もいます」と述べています。

 

(翻訳編集 華山律)