新しい研究によると、「1946~64年に生まれたベビーブーマー世代」は、以前の世代と比べて寿命は延びているものの、晩年にはより多くの健康問題を抱えやすい傾向があることがわかりました。
この世代は、がん、肺疾患、心臓病、糖尿病、高コレステロールなどの健康リスクが高く、50代や60代になると複数の健康問題を抱える可能性が増加しています。
イギリス、アメリカ、ヨーロッパに住むベビーブーマー世代の健康リスクについて、ロンドン大学ロンドン校(UCL)ロングチュード研究センターとオックスフォード大学の研究者が調査した結果、「世代間で健康状態に差がある」ことが明らかになりました。つまり、若い世代は同年齢の前の世代よりも健康状態が悪い傾向があるということです。
研究の主任著者ローラ・ギメノ氏は、「寿命が延びている一方で、晩年は健康に過ごしているわけではないことが確認されました」と述べています。また、「医療の進歩や健康的な生活習慣に対する意識が高まっているにもかかわらず、1945年以降に生まれた人々は、前の世代よりも慢性疾患や障害のリスクが高まっている」とも説明しています。
ベビーブーマー世代の健康問題ー慢性疾患と障害が増加
『ジャーナル・オブ・ジェロントロジー』誌に掲載された研究によると、ベビーブーマー世代(戦後生まれの世代)では、慢性疾患や障害が増加している傾向が見られました。
この調査では、イギリスとヨーロッパ大陸で、がん、心疾患、高コレステロールの診断件数が大きく増えていることが確認されています。ベビーブーマー世代は、前の世代に比べてこれらの問題を抱えるリスクが1.5倍高くなっています。
また、ヨーロッパとアメリカでは、肺疾患や高血圧のリスクも増加しており、「ヨーロッパ大陸のベビーブーマー世代は、慢性気管支炎や肺気腫を患うリスクが前の世代に比べて約3倍高い」と報告されています。
さらに、肥満も深刻な問題となっており、イタリア、スペイン、ギリシャを除くほぼすべての地域で肥満が増加しています。特にスカンジナビア諸国では、デンマークとスウェーデンのベビーブーマー世代が前世代よりも1.5倍肥満になる可能性が高いことがわかっています。
この世代の多くは、日常の基本的なケア(入浴、食事、歩行、買い物など)にも困難を感じるようになっており、特にイギリスでは、ベビーブーマー世代が前の世代と比べて3つ以上の基本作業をこなすのが難しいと感じる確率が1.5倍に上昇しています。
研究者のローラ・ギメノ氏は、「戦前の世代では障害率が低下しているのに対し、ベビーブーマー世代では、「慢性疾患や肥満の増加」が重度の障害として現れている可能性がある」と述べています。
政策への影響
ギメノ氏は、ベビーブーマー世代に見られる健康問題が若い世代にも影響を及ぼし、障害や健康上の問題を抱えて過ごす年数が増える可能性があると警告しています。ただし、適切な対策が講じられれば、ベビーブーマー世代も生活の質を維持しながら過ごすことができるとも述べています。
また、こうした健康悪化の傾向が政策に与える影響も指摘されています。「高所得の西洋諸国では、人口の約5分の1が65歳以上となっており、医療・福祉サービスの需要が増加することで、政府の財政に大きな負担がかかるでしょう」とギメノ氏は述べています。
イギリスの予算責任局(OBR)のデータによれば、ベビーブーマー世代が退職年齢に達するにつれて、社会保障費用の増加が続いています。OBRの「財政リスクと持続可能性に関する報告書」によると、イギリスの高齢化が進むことで、今後50年間で国債が約3倍に膨らむ要因の一つになると予測されています。
OBRの長期予測では、1人当たりの年間医療費は45歳まで約2千ポンド以下で安定していますが、40代後半から増加し、85歳以上になると年間1万3千ポンドに達する見込みです。
ギメノ氏は、高齢化に対応するために、政府が年金受給年齢を引き上げ、シニア層の労働参加を奨励する政策を進めていると説明しています。現在、イギリスでは男性と女性の年金受給年齢が66歳ですが、2044年から2046年には68歳に引き上げられる予定です。
(翻訳編集 華山律)
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