2024年の米国小児科学会(AAP)全国会議で、ビタミンDが子供の骨折回復に重要な役割を果たしていることが発表され、低ビタミンDレベルが骨の治癒を大幅に遅らせる可能性が示されました。
予防から治癒への役割
フロリダ大学の医学部生マイケル・ガイオット氏が行った研究では、2015年から2022年に治療された186件の小児の四肢骨折を分析し、ビタミンDレベルの低下が治癒期間の延長に関連することが確認されました。
非手術の脚部骨折の場合、ビタミンDレベルが低いと治癒に通常より20日余分にかかり、放射線画像で治癒が確認されるまでさらに約2か月遅れることが分かりました。
手術が必要な骨折に関しては、臨床的な治癒に1か月追加で時間がかかり、放射線画像で治癒が確認されるまでにはさらに4か月ほど遅れが生じました。
この結果は、ビタミンDが骨折予防だけでなく、回復プロセスにも不可欠な役割を持つことを示しています。従来はビタミンDが骨を強化し骨折リスクを減らすと考えられてきましたが、新たな研究は回復中にビタミンDが不足することで合併症が起こる可能性があることを示唆しています。
医療現場と生活習慣への影響
シニア著者のジェシカ・マククエリー博士は、子供にビタミンDを豊富に含むバランスの取れた食事の重要性を強調し、通常の治癒期間内に骨折が治らない場合、ビタミンDレベルの評価が必要であると述べています。マククエリー博士は、日光浴や屋外活動を通じてビタミンDを摂取することも推奨しています。
「外で遊び、新鮮な空気を楽しむことは、健康促進とビタミンDの吸収向上に役立ちます。自然の中で過ごす絶好の機会です!」と博士はコメントしています。
骨の健康とビタミンDの役割
ビタミンDは、カルシウムやリンの吸収を助け、骨の発育に不可欠なミネラルのバランスを整える役割を持ちます。ニューヨークのコーエン小児医療センターの小児整形外科医、ヴィシャル・サルワヒ博士は、「ビタミンDは強い骨を作り、骨折を防ぐ上で非常に重要です」と述べ、保護者が食事や日光浴を通じて子供のビタミンDを確保することが大切だと指摘しています。
研究によると、ビタミンDが十分であれば、骨が柔らかくなる「くる病」など骨に関する健康問題が防ぎやすくなります。サルワヒ博士は、成長期の子供に十分なビタミンDを摂取させることで、全体的な骨格の健康を促進し、くる病などの疾患を予防できると述べています。
くる病とは
サルワヒ博士によれば、ビタミンD不足がくる病を引き起こし、以下のリスクを高めることがわかっています。
骨の変形や脚の湾曲
低身長
骨折のリスクの増加
「湾曲した脚や骨の変形は体重のかかり方に影響し、後に関節炎や歩行困難、骨折リスクの増加につながる可能性があります」とサルワヒ博士は説明しています。くる病は特に3~18か月の乳幼児や12~15歳の思春期の子供に見られやすい疾患です。
ビタミンD不足は大人にも影響し、骨が柔らかくなる「骨軟化症」を引き起こしやすくなります。これにより骨の痛み、変形、骨折リスクの増加が生じることがあるとサルワヒ博士は説明しています。
ビタミンD不足によるその他の疾患リスク
ビタミンDが十分に摂取されていることは、以下の疾患のリスク低減に役立つとされています。
心血管疾患
ビタミンD不足は、小児期の高血圧や起立性不耐症、川崎病など、心血管系の健康に影響を与えることがあるとされています。
感染症
ビタミンDが不足している子供は、呼吸器感染症にかかりやすく、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)といった呼吸器系の疾患リスクも増加します。
痛みと筋力低下
低ビタミンDレベルは、骨や筋肉の痛み、筋力の低下を引き起こす可能性があり、子供から大人まで幅広い年齢層に影響します。
いら立ち、うつ、不安
ビタミンD不足は、学齢期の子供に攻撃的な行動やうつ、不安感を引き起こす可能性があるとされ、心理的健康にも影響を与えることが分かっています。
多発性硬化症
小児期にビタミンDが不足すると、将来多発性硬化症のリスクが高まる可能性があるともいわれています。
ビタミンDの1日推奨摂取量
米国小児科学会(AAP)は、1〜18歳の子供に1日600国際単位(IU)のビタミンD摂取を推奨しています。この量は、通常、食事、サプリメント、日光浴の組み合わせで達成できますが、特に日照が少ない地域や冬季にはビタミンDレベルの管理が重要です。保護者が子供のビタミンD状態に不安を感じる場合は、医療機関での相談が勧められています。
サルワヒ博士は、日光浴がビタミンD生成に役立つとし、子供たちが外で遊ぶことを推奨しています。「日光が皮膚に当たることで、皮膚の細胞がビタミンDを生成します。しかし、日光浴だけで十分な量のビタミンDを摂取するのは難しいため、骨に負荷がかかる運動も組み合わせることが理想的です」と説明しています。
さらに、サルワヒ博士は、5歳以降の子供が1,000 IUのビタミンDを毎日摂取することが良好な骨の健康維持に役立つとしていますが、食事だけで十分なビタミンDを確保するのは難しいとも述べています。例えば、牛乳1杯に含まれるビタミンDは約100 IUであるため、不足しがちです。「そのため、AAPはすべての子供にビタミンDサプリメントの摂取を推奨しています」と彼は述べています。
ビタミンDが豊富な5つの食品
子供がビタミンDの1日推奨摂取量を満たすための食品には、次のものがあります:
脂肪の多い魚
サーモンやサバなどの脂肪の多い魚は、ビタミンDが豊富で、1回の摂取でかなりの量が得られます。
強化食品
牛乳やオレンジジュース、一部のシリアルにはビタミンDが強化されているものがあり、ラベルを確認することで適した製品を選べます。ただし、シリアルなどの加工食品よりも、できるだけ自然な食材を優先するとよいでしょう。
乳製品
牛乳、チーズ、ヨーグルトなどはカルシウムが豊富で、ビタミンDも強化されていることが多く、骨の健康に役立ちます。
卵
卵黄には少量のビタミンDが含まれており、子供にとっておいしく手軽なビタミンDの供給源です。
キノコ類
特に紫外線を浴びたキノコ(例:マッシュルーム)は植物由来のビタミンD源となり、ビタミンD摂取に役立ちます。
(翻訳編集 華山律)
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