早めに発見できれば、病気は治る。

サーモグラフィー vs マンモグラフィー 話題のスクリーニング方法とは?

私たちの体は、健康状態の変化を微かな信号として常に送っています。最近注目されている「サーモグラフィー」は、こうした体温の変化をカラフルな画像に変換することで病気の早期発見や予防に役立つ方法です。特に乳がん検診に使われることが増えており、従来のマンモグラフィーを補う形で期待されています。

サーモグラフィーとマンモグラフィーの比較(大紀元製図)

 

サーモグラフィーの仕組み

サーモグラフィー(デジタル赤外線熱画像とも呼ばれます)は、赤外線カメラを使って皮膚の表面温度を捉える非侵襲的なテストです。この温度の変化から、体内での炎症、ホルモンのバランス、リンパの流れの滞りなどを知ることができる可能性があります。

カリフォルニアでサーモグラフィークリニックを運営する自然健康の専門家、クリスティーン・ホーナー博士はこう語ります。「サーモグラフィーでは皮膚表面の温度を測定し、その結果をカラフルな温度マップとして画面に表示します。手順は簡単で、安全、痛みもなく、コストも比較的リーズナブルです」放射線や圧迫がないので、身体に負担が少ないのも大きな魅力です。

サーモグラフィーは体の機能的な変化を測定するのに対し、マンモグラフィーや超音波は体の構造的な変化を調べる検査です。この2つのタイプの検査を組み合わせることで、より包括的に体の状態を把握できる可能性があります。

母親の子宮内の赤ちゃんの超音波画像。(GagliardiPhotography/Shutterstock)
母親の子宮内の赤ちゃんの超音波画像(Shutterstock)

 

サーモグラフィーの基本

サーモグラフィーの効果は、交感神経系との関係にあります。交感神経系は、体がストレスを受けたときに反応する「闘争・逃走反応」をコントロールし、皮膚に信号を送ります。この仕組みを利用することで、体の不調を見つけることができるのです。

ホーナー博士はこう説明します。「体内で不調や機能不全、怪我、感染症などが発生すると、交感神経系がその部位の皮膚温度を変化させます」この温度変化を観察することで、体内の異常を早期に察知する手がかりになるのです。

(アニタ・ファン・デン・ブローク/シャッターストック)
サーモグラフィー(Shutterstock)

 

交感神経系は皮膚への血流を制御しており、通常は体の左右で血流パターンが均等に保たれています。しかしサーモグラフィーは、わずか0.1度Cの温度差も検出でき、その高い精度で体の異常な温度変化を見つけることができます。米国臨床サーモロジー学会も、この技術が神経の炎症などの異常を捉えるのに役立つことを認めています。

ショーン・ゾイファーラー氏(認定臨床サーモグラファー)は、乳房の温度パターンは個々に異なるものであり、時間とともに変化することがあると説明しています。まるで指紋のように、体の部位ごとに特有のパターンや色の変化があるため、異常の兆候を見つける手がかりとなります。

ゾイファーラー氏はさらにこう述べています。「サーモグラフィーは病気を特定するための手段ではありませんが、機能不全や血流の滞り、炎症、ホルモンのバランスの崩れなどを示すサインとして役立ちます」

健康な体は「左右で高い温度対称性」を保っています。この対称性が崩れたとき、サーモグラフィーを使えば異常を素早く特定することが可能です。ホーナー博士のウェブサイトによると、サーモグラフィーの最大の魅力は、個人の健康状態の「動的な変化」を追跡できる点にあります。このため、健康管理において、日々の変化を捉えて予防的に対策を取ることが期待されています。

 

サーモグラフィーで検出できるもの

ホーナー博士のウェブサイトによると、サーモグラフィーは体内のさまざまな機能不全を可視化するのに役立ちます。具体的には、以下のような問題が含まれます:

不明な痛みや炎症

消化器系の問題(肝臓、胃、膵臓、脾臓、腸)

リーキーガット(腸漏症)

甲状腺機能の問題

免疫の不均衡

歯や副鼻腔の問題

顎関節症(顎の関節に関する障害)

首や脊椎の問題

乳房の健康

乳房のリスク評価

リンパの滞り

ホルモンの不均衡

怪我の評価とモニタリング

筋骨格系の問題

 

これらの症状や健康状態に対して、サーモグラフィーは非侵襲的(体に接触しない、傷をつけない)な方法で体内の異常を検出し、早期発見に役立つことが期待されています。

 

ベースライン作成の重要性

サーモグラフィーの大きな利点の一つは、年に一度のスキャンで個々の「ベースライン」を作成できることです。各患者の赤外線画像は固有のパターンを持っており、そのパターンに変化があれば、体に何らかの問題が起きている可能性が示唆されます。

がんが見つかっていない場合でも、このベースラインは将来的なリスクを評価するのに役立ちます。ホーナー博士は、20代から定期的にサーモグラフィーを受けることを女性に推奨しています。また、ゾイファーラー氏もこう語っています。「過去のスキャンデータがあれば、今年と昨年を比較して顕著な変化があった場合に、早めに対策を取ることが可能になります」。

サーモグラフィーは男性にとっても有用です。ゾイファーラー氏は次のように述べています。

「サーモグラフィーは、炎症、神経障害、血管やリンパの異常など、多くの健康問題を見つけるのに役立ちます。ディスク疾患、神経損傷、未発見の糖尿病、関節炎、線維筋痛症、レイノー症候群、CRPS(複合性局所疼痛症候群)、捻挫、筋違い、血管疾患、歯の問題や顎関節症、脳卒中リスク、むち打ち症、炎症による痛み、アレルギーなど、多くの症状に対してスクリーニングが可能です」

 

問題が検出されたときの対応

サーモグラフィーで異常が発見された場合、診断を確定するためには他の検査が必要です。サーモグラフィー自体は診断ツールではないため、さらなる確認が必要です。

ゾイファーラー氏はこう説明します。「異常が見つかった場合には、再度サーモグラフィーを行ったり、超音波検査を実施したりします。それでも疑問が残る場合には、マンモグラフィーやMRIといったより詳細な検査を行うことが次のステップです」。また、最終的に確実な診断には生検が必要ですが、「すぐに生検を受けたいとは限らない人も多い」と彼女は付け加えました。

ホーナー博士も同様のアプローチを取っています。「重要な所見があった場合、まずは超音波検査を行うことを勧めています。問題がないと確認できれば、食事や生活習慣の改善、栄養補助食品の利用で症状を改善することが可能です。ただし、しっかりと確認してから進めることが大切です」と述べています。

 

サーモグラフィーに影響を与える要因

サーモグラフィーの検査結果には、以下のような要因が影響する可能性があります。

最近の運動

カフェイン、ニコチン、アルコールの摂取

一部の薬やサプリメント

最近の手術や歯科治療

タトゥーや傷跡

日焼け

室温

 

こうした要因があるため、検査前には患者の詳細な病歴の把握が重要ですと、ゾイファーラー氏は述べています。特に薬だけでなく、類似のものは類似のものを治すホメオパシーや特定のハーブ、栄養補助食品を治療目的で使用している場合も、検査結果に影響が出ることがあるため注意が必要です。

また、ホーナー博士によると、検査前には体温を上げる活動や飲食も控えることが推奨されます。「運動は血流が増加して全身の熱パターンが変わるため、避けるべきです。カフェイン製品(コーヒーなど)は少なくとも2時間前に控え、ニコチンを含む喫煙やアルコールも同様に避けるべきです」と彼女は説明しています。

ホーナー博士のウェブサイトによると、アルコールは検査の2日前から控えるのが望ましく、摂取量が多い場合、炎症に関連するパターンとして画像に現れる可能性があるとされています。

さらに、日焼けも影響するため、検査の1週間前から日焼けや日光浴は避けることが推奨されています。最良の結果を得るためには、検査時の室温をやや涼しい状態に保つことも重要です。

 

乳房サーモグラフィー 予防的なツール

サーモグラフィーは体のさまざまな部位に使用できますが、特に乳房のスキャンに利用され、時間経過とともに生じる変化を追跡します。乳房サーモグラフィーは、がんやその前段階である細胞成長の変化を検出するために用いられます。

ホーナー博士は次のように説明しています。

「乳がんそのものを見つけようとしているのではなく、がん発症の数年前から生じる可能性がある生理的変化を観察しています。こうした変化は早期に発見できることが多く、食事や生活習慣の改善によってバランスを整えることが可能です」

(写真提供:クリスティン・ホーナー博士)
乳房サーモグラフィー(クリスティン・ホーナー博士提供)

このように、サーモグラフィーは予防ツールとして役立つため、博士も強く推奨しています。

研究によると、乳房検診にサーモグラフィーを取り入れることで女性の生存率が61%向上するとされ、臨床検査やマンモグラフィーと併用することで、早期がんを95%の確率で検出できると国際臨床サーモロジー学会は発表しています。

サーモグラフィーの原理として、がん細胞が増殖する際には酸素豊富な血液が必要となり、腫瘍周辺の血流が増加することでその部位の温度も上昇します。がん細胞は一酸化窒素を血流に放出し、微小循環に影響を及ぼします。この一酸化窒素の放出により、その部位の血行と温度が上がるため、この温度差を評価することで悪性部位を特定することが可能です。この仕組みについては、2022年にCureus誌に掲載されたレビュー記事でも解説されています。

国際臨床サーモロジー学会によると、乳がん検出においてサーモグラフィーの有効性を示す研究が複数存在しています。異常な赤外線画像は乳がん発症の重要な予測因子であり、家族歴よりも8倍高い関連性があるとされています。また、異常なサーモグラムが続く場合、将来乳がんを発症するリスクが22倍高まることが示されています。

 

サーモグラフィー vs マンモグラフィー

乳がんは女性の死因として2番目に多い病であり、米国では8人に1人の割合で一生のうちに乳がんを診断される可能性があります。乳がんによる死亡の約60%は診断の遅れが原因とされ、早期発見の重要性が高まっています。主な早期発見の方法として、マンモグラフィーとサーモグラフィーの2つが使われています。

サーモグラフィーは1956年に発見されて以来、技術の進歩に伴い再び注目を集めるようになりました。研究では、サーモグラフィーが乳がんの有無の検出に非常に有効であることが示されており、人工知能と組み合わせることで90%以上の精度が期待できることもわかっています。

マンモグラフィー『ゴールドスタンダード』

マンモグラフィーは乳がん検出の「ゴールドスタンダード」とされており、低用量のX線で乳房組織内の異常を見つけます。しかし、以下のようなリスクや限界も指摘されています。

偽陰性の可能性
乳房の密な組織が腫瘍を隠し、マンモグラフィーでは5件に1件の乳がんが検出されない可能性があります。2022年のレビューでは、非がん性の異常が検出されることで、追加検査や生検といった不要なフォローアップが必要になる場合もあり、患者に負担やストレスがかかるとされています。

放射線被曝
マンモグラフィーには低用量とはいえ、繰り返し受けることで放射線被曝のリスクが伴います。

過剰診断のリスク
系統的レビューによると、マンモグラフィーによる乳がんの過剰診断率は52%に達し、発見される乳がんのうち3件に1件が過剰診断である可能性があります。

これらの理由から、マンモグラフィーは有効な検出手段であるものの、サーモグラフィーも補完的な選択肢としての有用性が再評価されています。

 

サーモグラフィー 有望な代替手段

サーモグラフィーは、赤外線画像で乳房組織の温度変化を捉える方法で、近年の技術進歩により実用性が増し注目を集めています。サーモグラフィーの主な利点には以下があります。

早期発見:マンモグラフィーよりも早い段階で前がん性の変化を検出できる可能性があります。

放射線なし:非侵襲的で放射線被曝がないため、安全に受けられます。

密な乳房にも適応:乳房が密な女性にも有効で、マンモグラフィーが効果を発揮しにくい場合にも活用可能です。

サーモグラフィーは、以下のような女性に代替手段として適していると考えられます。

妊娠中または授乳中の女性

乳房インプラントや乳房切除を受けた女性

密な乳房を持つ女性

若年層の女性

乳がんリスクが高く、頻繁なスクリーニングが必要な女性

放射線被曝や乳房の圧迫に不安がある女性

ただし、サーモグラフィーやマンモグラフィーだけでは確定診断ができないため、異常が見つかった場合には超音波検査、MRI、生検などの追加検査が推奨されます。
 

乳房密度について

サーモグラフィーの特に優れた点の一つは、密な乳房を持つ女性にも対応できる点です。密な乳房には、脂肪組織よりも繊維組織や腺組織が多く含まれています。

NPO法人Are You Dense?によると、乳房密度は脂肪組織が中心のものから高密度組織まで4段階に分類されます。米国では約40%の女性が密な乳房を持ち、このためマンモグラフィーによる乳がん検出が難しくなるとされています。

「29歳以下の多くの若い女性が密な乳房を持っており、この層におけるがん診断の増加は大きな懸念です」と、Are You Dense?の共同創設者ジョー・カペロ氏はThe Epoch Timesで語っています。

 

サーモグラフィーの限界

精度:サーモグラフィーは有望な方法ですが、その精度に関する研究はまだ進行中です。

解釈:正確な画像解釈には、訓練を受けたサーモロジストが必要です。

熱の原因:温度が高く表示されても必ずしもがんとは限らず、さらなる検査が必要です。

 

最後に

健康を守るためには、あらゆる選択肢を知り、十分な情報をもとに決断することが大切です。現代の医療システムでは、一般的な検査や治療が手に入りやすい一方で、同じくらい有効な代替手段が見過ごされがちです。

気になる検査や治療法があれば、医師に質問することをためらわないようにしましょう。もし質問が歓迎されない場合は、そうした話ができる医師を見つけることも大切です。ゾイファーラー氏も、特に健康に関わる問題には、支えとなる医療従事者のチームを作ることを勧めています。

「私は患者に、自分のケアチームを選ぶ立場だと伝えています。ですから、一緒に働きたい医師や働きたくない医師を選ぶことができます。『別の方法を選びます』と医師に伝えるのは患者にとって非常に勇気のいることですが、重要な権利です」と彼女は話しています。

専門家たちは、ひとつの検査に頼らず、複数の方法を組み合わせて健康を管理することが推奨されます。不安がある場合は、しっかり調べることも重要です。

「サーモグラフィーは健康診断や法廷証拠、研究、医療現場で活用されていますが、万能ではありません」とゾイファーラー氏は述べています。「サーモグラフィーは他の手段と併用し、診断や治療の経過を監視する補助的な役割を果たします。早期の指標として取り入れることで、患者が早めに対応し、より良い結果を得られる可能性が高まります」

最終的に、健康問題にどう向き合うかはあなた次第です。

(翻訳編集 華山律)

鍼灸医師であり、過去10年にわたって複数の出版物で健康について幅広く執筆。現在は大紀元の記者として、東洋医学、栄養学、外傷、生活習慣医学を担当。