閉経後の健康維持! フィットネスの秘訣

ジェン・リードさんの閉経期は、想像以上に過酷なものでした。子育てが一段落し、パーソナルトレーナーとして健康的な生活を送っていた彼女ですが、突然、無気力感や憂鬱、孤独感に悩まされるように。気づけば体重は約11キログラムも増加していました。

専門医を訪れた結果、長年服用していた避妊薬がホルモンの生成を抑えていたことが判明し、それが閉経期の症状を悪化させていたのです。閉経期には、ホットフラッシュや寝汗、気分の浮き沈みといった症状のほか、骨密度の低下や心臓病リスクの増加といった「静かな健康リスク」が潜んでいます。

 

中年期は新たなスタート

そんな中、リードさんはSNSを通じて自身の体験を発信し、同じ悩みを抱える多くの人々とつながることができました。「このままではいけない」と決意した彼女は、運動を習慣化することで状況を変える努力を始めます。

「気分が乗らない日もありましたが、それでも運動を続けました」と彼女は語ります。「中年期は人生の終わりではない。健康を取り戻し、自分らしい生活を送るのだと信じていました」

閉経期に運動を取り入れることは、健康改善に非常に効果的です。特に筋力トレーニングは、睡眠の質を高め、ストレスへの耐性を上げるなど、体にも心にも多くのメリットをもたらします。

筋力トレーニングは、閉経期に失われやすい筋肉量を維持するのに役立ちます。エストロゲンの低下で筋力が落ちやすくなる中、運動不足の女性ほど不調が増える傾向にあります。ただし、運動は無理のない範囲で行うことが大切です。高強度の運動はストレスホルモン「コルチゾール」の分泌を増加させ、かえって体調を悪化させる場合があるからです。

リードさんは、有酸素運動中心のトレーニングから筋力トレーニングをメインに切り替えた結果、睡眠の質が向上し、腸内環境も改善したといいます。閉経期を迎えた女性にとって、筋力トレーニングは新しい健康生活の第一歩と言えるでしょう。

 

引き締まった健康的な体 vs 痩せて弱々しい体

ライバルフィットで更年期向けのフィットネスコーチを務めるワンダ・マイユーさんは、50歳を迎え、更年期後の体にクロスフィット競技のような激しいトレーニングが合わなくなったことを実感しました。

「そのトレーニングは、体にストレスを与えるホルモンであるコルチゾールやアドレナリンを増加させる一方で、エンドルフィンの分泌が追いつかず、逆に体調を悪化させていました」と彼女は言います。「まるで眠っているクマを無理に起こすようなものだったのです」

さらに彼女は、持久系のトレーニングを続けていた頃の体についてこう語ります。「体重は減っても、引き締まった健康的な体ではなく、痩せて弱々しい体になっていました。疲れ果てて、健康とは言えない状態でした」この経験は、トレーニングの見直しを考える大きなきっかけとなったそうです。

更年期になると、コルチゾールが自然と増加し、エストロゲンなど他のホルモンとの複雑な相互作用を引き起こします。この変化が、ホットフラッシュ、気分の浮き沈み、記憶力の低下、さらには骨密度の減少といった症状を引き起こす可能性があります。

特に骨の健康は重要です。加齢とともに骨粗しょう症のリスクが高まり、股関節の骨折などは深刻な問題です。骨折を経験した高齢者の約4人に1人は翌年に命を落とし、さらに同数が介護施設での生活を余儀なくされるというデータもあります。

骨を強くするためには、負荷をかける運動が効果的です。骨に適度な刺激を与えることで、骨の再生が促されるからです。

現在、マイユーさんは「機能性」に重きを置いたトレーニングを実践しています。「転倒を防ぎ、バランスよく歩けること」を目標に、日常生活で役立つ動きを意識して運動を続けています。

「今はジムでウェイトトレーニングを行っていますが、以前ほど多くのトレーニング量は必要ありません。それよりも、自分の体の声に耳を傾けることを大切にしています」と彼女は語ります。

 

健康を見つめ直すチャンス

ワンダ・マイユーさんは、運動に対する考え方を変えました。勢いだけで動作を終わらせるのではなく、筋肉を意識してしっかり使いながら、一つひとつの動きを丁寧に楽しむことを心がけるようになったのです。また、これまで以上に自分の体を大切にし、「閉経は人生の終わり」というような悲観的な見方を見直すようになりました。

2023年に発表された「BMC Women’s Health」の研究によれば、閉経を前向きに捉えることには大きなメリットがあります。研究では、閉経を否定的に考える人ほど、症状が重くなりやすいことが明らかになりました。

「閉経を病気ではなく、自然な老化の一部と捉える国では、閉経に伴う症状の発生率が低いことがわかっています」とこの記事は述べています。また、各国や文化ごとに閉経に対する態度が異なるため、それが女性の体験にも影響を与えているとしています。

 

閉経後の運動の必要性

多くの女性は、閉経期に入ると運動を減らし、食事量を増やしてしまう傾向があります。『Journal of Mid-Life Health』のレビュー記事では、このライフスタイルが更年期の不快な症状を悪化させる悪循環を生むと指摘されています。

特に運動不足は、代謝の低下や筋肉量の減少を加速させます。筋肉量は1年に約0.2キログラムずつ減少するとされており、筋力トレーニングでその減少を抑えることが可能です。筋肉は脂肪よりも多くのカロリーを消費するため、運動は代謝の維持において重要な役割を果たします。

運動の具体的なメリット

閉経後の女性が運動を行うことで得られる利点には以下が挙げられます。

心肺機能の向上により、心血管疾患や糖尿病の予防・改善に寄与。

高血圧や心臓発作、脳卒中のリスクを軽減。

カロリー消費を促進し、中年期の体重増加を抑制。

腰痛の軽減。

気分の改善とストレスの軽減。

ホットフラッシュの軽減の可能性。

『Journal of Clinical Medicine』の2023年のレビューでは、筋力トレーニングを行った女性が運動をしていない女性と比べて、ホルモンや代謝の調整に大きな改善が見られ、骨密度の向上も確認されています。

筋力トレーニングの重要性

筋力トレーニングを行うことで以下の効果が得られます。

筋肉量の増加。

大腿骨の骨密度向上。

背中の丸み(猫背)の軽減。

転倒リスクの低下。

運動能力や筋肉の協調性の向上。

特に、自宅で監督なしに行う運動ではこれらの効果が得られにくいため、適切な指導のもとで行うことが推奨されています。また、薬物療法やホルモン補充療法を望まない女性にとって、運動は有効な代替手段となります。

 

詳細な研究の必要性

2023年に発表された『BMC Women’s Health』の研究では、筋力トレーニングが閉経による多くの負の影響を軽減するのに特に効果的であるとされています。ただし、その効果は閉経前の数年間から筋力トレーニングを始めた場合に最も顕著であることが示唆されています。

筋力トレーニングには、身体的な効果だけでなく、メンタル面での効果もあります。自信や幸福感を高め、安全で効果的な方法として評価されています。閉経後の女性が十分な筋肉量の変化を得るには、週2回以上のトレーニングや、各筋肉群に対して6〜8セット以上の運動が必要となる場合があることがわかっています。

一方で、フリーウェイト(ダンベルなど)を用いた中高年女性のトレーニング効果に関する研究はまだ不足しており、具体的な利点については不明な部分が残されています。

「閉経前・閉経中・閉経後の女性を含む中高年女性が筋肉量や筋力を最適に増加させるための具体的なガイドラインを作るには、現時点では十分な証拠が揃っていません」と研究は結論づけています。

 

適切な指導が重要

ワンダ・リードさんは、女性向けフィットネスに関する誤解が、運動を始める妨げになっていると指摘します。

「私たちの世代の女性は、有酸素運動が中心という考え方の中で育ったため、ジムに行っても戸惑い、何をすればいいのか分からない人が多いのです」と彼女は言います。「ジムのウェイトエリアは男性ばかり、有酸素エリアは女性ばかりという光景が一般的でした。さらに『筋力トレーニングをすると筋肉がつきすぎて男性っぽくなる』といった誤ったイメージを信じてしまっていました」

筋力トレーニングに対する代表的な誤解について、リードさんとマイユーさんが説明しています。

誤解1 毎日ウェイトを持ち上げなければならない

「『量が多ければ良い』という古い考え方に基づいています」とマイユーさんは説明します。「重要なのは質です。効率的で賢いトレーニングが効果をもたらします」

誤解2 筋肉をつけるには重いウェイトが必要

筋肉を鍛える方法はウェイトの重さだけではありません。テンポの調整やセット数の工夫、自宅での軽い運動でも筋肉を効果的に鍛えることが可能です。

誤解3 ジムは怖い場所で周りの目が気になる

ジムに慣れていない女性にとって、この誤解は大きな障害です。しかし「ほとんどの人は自分のトレーニングに集中しているため、周りを気にする必要はありません」とマイユーさんは言います。昼間は比較的ジムが空いている時間帯でもあり、初心者におすすめです。

誤解4 好きな時間に運動しても良い

閉経前は当てはまるかもしれませんが、閉経後はホルモンの変化により、運動のタイミングが影響を与えることがあります。特に夕方遅くの運動はリラックスを妨げ、睡眠に悪影響を与える可能性があるため、コルチゾールが自然に高まる朝の運動がおすすめです。

誤解5 食事はそれほど重要ではない

「フィットネスについて話す際に栄養を無視するのは、全体の50%を見逃すようなものです」とマイユーさん。糖分やアルコールの摂取を減らすことで、筋肉量の増加やホットフラッシュの軽減、インスリン抵抗性の改善が期待できます。

 

十分なタンパク質がカギ

筋力トレーニングをする女性には、十分な量のタンパク質摂取が欠かせません。従来の推奨量(体重1kgあたり0.8グラム)は不十分とされ、運動をする人や減量を目指す人では、この2倍の摂取が必要との研究もあります。

例えば、体重68キログラムの女性の場合、必要なタンパク質量は約110グラムとなります。卵1個には約6グラム、鶏胸肉1枚には約40グラムのタンパク質が含まれているため、これらを組み合わせて日々の摂取量を満たす工夫が必要です。

2022年の『Sports Medicine–Open』によるメタ分析では、十分なタンパク質摂取が筋力トレーニングによる筋肉量の維持・増加に効果的であることが示されています。

(翻訳編集 華山律)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。