甘いだけじゃない! ココアに秘められた驚異の健康効果

寒い日にホットココアを飲んだり、ダークチョコレートを楽しんだりする時間が、さらに健康的な意味を持つかもしれません。実は、ココアの魅力はその美味しさだけではありません。科学の進歩により、健康へのさまざまなメリットが明らかになっています。

心臓の健康とココアの力

最近の研究で、ココアが脂っこい食事をとった後でも血管をストレスから守る力を持つことが分かっています。特に、ココアに含まれる「フラバノール」という成分が鍵を握っています。フラバノールには、血圧を下げたり、血流を改善したり、血管の働きを助けたりする効果があり、心臓病のリスクを軽減する可能性が示されています。

イギリスのバーミンガム大学が発表した研究では、フラバノールが豊富なココアを摂取することで、ストレス下で脂肪分の多い食事が引き起こす血管へのダメージを軽減できることが分かりました。この研究によると、フラバノールを多く含むココアは、摂取後約90分間、血管機能の低下を抑え、血流をコントロールする働きをサポートします。

さらに、過去の研究とも一致しており、脂っこい食事がストレス時に血管の健康に悪影響を与えるのに対し、低脂肪の食事ではその影響が少ないことも明らかになりました。

研究チームによると、フラバノールの効果は摂取後1〜2時間でピークに達します。そのため、ストレスが予想される1時間以上前に、フラバノールが豊富なココアや食品を摂取するのが理想的です。また、3〜4時間ごとにフラバノールを含む食品を取り入れることで、ストレスが突然訪れた場合でも体を守ることが期待できます。

 

内側から健康をサポートするココアの力

ココアには、健康維持に役立つ成分として知られるポリフェノールが豊富に含まれています。ポリフェノールは、植物が自分を守るために持つ成分で、私たちが食事から摂取することで、同様の健康効果を得ることが期待できます。

ポリフェノールは果物や野菜に含まれる天然の色素で、特に色が濃い食品に多く含まれる傾向があります。このため、「色鮮やかな食品を積極的に食べましょう」とよく言われるのです。

ポリフェノールには抗酸化作用があり、体内で発生する酸化ストレスを軽減する働きがあります。酸化ストレスは細胞にダメージを与え、心臓病やがんなどの慢性疾患の原因になることが知られています。また、ポリフェノールは炎症を抑える作用も持っています。

ポリフェノールを多く含む食品としては、野菜、果物、ナッツ、種子、全粒穀物、ベリー類、紅茶や緑茶、そしてココアが挙げられます。

栄養士のコートニー・ペリテラ氏によると、ココアに含まれるフラボノイドと呼ばれるポリフェノールには、次のような効果が期待できます。

  • 血流の改善
  • 血圧を調整する働きのサポート
  • 心血管疾患のリスク軽減
  • インスリン感受性の向上(特に糖尿病の人に有効)

さらに、ココアにはマグネシウムやカリウム、銅、カルシウムといったミネラルも含まれており、これらは健康な血流を保つために必要な栄養素です。

ただし、すべてのココア製品が同じ効果を持つわけではありません。ココアは加工の過程でポリフェノールの量が減少することがあります。そのため、できるだけ加工の少ない製品や、原料に近い状態のココアを選ぶことをおすすめします。

「ココア」と「カカオ」という言葉は混同されがちですが、意味が異なります。「カカオ」はテオブロマ・カカオの木から採れる未加工の原料を指し、「ココア」はそれを加工して作られるパウダーやチョコレート製品を指します。

 

ココアがに与える効果について

ココアに含まれる「フラバノール」という成分は、脳に多くの良い影響を与えることが知られています。研究によると、このフラバノールは、情報処理のスピードや集中力、記憶力、問題解決能力など、脳のさまざまな機能をサポートする働きがあります。

さらに、ココアは脳への血流を良くすることで、記憶力を高めたり、脳の神経細胞を守る「脳由来神経栄養因子(BDNF)」を増やす効果もあるとされています。これにより、アルツハイマー病などの神経変性疾患を予防する可能性も指摘されています。

2020年のレビュー研究では、25歳以下の若者366人を対象とした11の研究データを分析しました。その結果、ココアには短期的にも長期的にも脳の機能を高める効果があることが明らかになりました。具体的には以下の点が確認されています:

短期的な効果
ココアを摂取することで、脳への血流と酸素供給が向上する。

長期的な効果
フラバノールを継続的に摂取することで、認知機能が改善され、新しい神経回路が形成される能力を支える「ニューロトロフィン」のレベルが増加する。

ココアのフラバノール、記憶力や集中力をサポート。脳の健康にも効果的!(Shutterstock)

 

気分の改善

ダークチョコレートとして摂取するココアには、気分が落ち込んだときの改善効果があることが知られています。

2022年に発表されたランダム化比較試験では、健康な成人を対象に、ダークチョコレートの摂取が気分にどのような影響を与えるのか、またその効果が腸と脳のつながり(腸-脳軸)に関連しているのかが調査されました。参加者は次の3つのグループに分けられました:

(1)カカオ70%のダークチョコレートグループ

(2)カカオ85%のダークチョコレートグループ

(3)コントロールグループ(チョコレートを摂取しない)

チョコレートを摂取するグループでは、毎日30グラムのダークチョコレートを食べてもらいました。

その結果、カカオ85%のダークチョコレートを食べたグループは、チョコレートを食べなかったコントロールグループに比べて、ネガティブな感情が大きく減少したことが確認されました。一方、カカオ70%のチョコレートを摂取したグループでは同様の効果が見られず、カカオの含有量が高いほど気分の改善に効果がある可能性が示されました。

さらに、腸内細菌の分析では、カカオ85%のダークチョコレートを食べたグループで腸内細菌の多様性が増加していたことが分かりました。特に Blautia obeum という腸内細菌が増加し、この細菌が生成する酪酸が腸内環境を整えるだけでなく、「リーキーガット(腸管漏出症候群)とは、腸の粘膜が傷ついて穴が開き、腸管内の物質が体内に漏れ出す状態」を防ぎ、ラット実験で抗うつ作用や抑うつ行動の改善が確認されています。

まとめると、カカオ85%のダークチョコレートを食べることで、腸内の有益な細菌が増え、それが気分を向上させる可能性があると考えられます。

 

インスリン感受性

ココアには、インスリン感受性を改善し、血糖値の管理を助ける可能性があります。

2021年の研究では、健康な成人を対象に、カカオポリフェノールを豊富に含むチョコレートを摂取した際の効果を調べました。その結果、糖負荷試験の前にこのチョコレートを摂取することで、血糖値の上昇を抑え、GLP-1(インスリンの分泌を促進し、インスリン感受性を高めるホルモン)の分泌が増加することが確認されました。また、ポリフェノールを豊富に含むチョコレートは、食後の血糖値を低下させる効果も示しました。

これらの結果から、カカオポリフェノールを豊富に含むチョコレートは、糖尿病患者において食後の血糖値を安定させる可能性があると考えられています。この効果は、インスリンとGLP-1の分泌が増えることに起因するとされています。

ココアのポリフェノール、血糖値管理とインスリン感受性改善に期待!(Shutterstock)

 

注意すべき点

ココアを食事に取り入れる際には、いくつか考慮すべき点があります。

1. 加工が栄養価に与える影響

ココアの加工によって、栄養価が大きく変化することがあります。ペリテラ氏によれば、「チョコレートバーのように加工されたココア製品では、ポリフェノールの含有量が最大90%減少する場合があります」とのことです。この影響は製品の品質やカカオ含有量、製造過程によって異なります。

カカオ含有量が高いダークチョコレートは、抗酸化物質やポリフェノールを豊富に含む一方で、ミルクチョコレートよりも苦味が強い傾向があります。栄養を効果的に摂取する方法として、ペリテラ氏はココアをサプリメントのように活用することを提案しています。ヨーグルト、オートミール、スムージー、焼き菓子などにココアパウダーを加えることで、不要な添加物を避けながら健康効果を得られるとされています。

2. 潜在的なデメリット

ココアには多くの健康効果が期待できますが、摂取量を増やす際には注意が必要です。

砂糖と添加物の多い製品への注意
スーパーで販売されている多くのチョコレートバーは、カカオ含有量が十分でないうえ、砂糖や脂肪、不要な添加物が多く含まれています。ペリテラ氏は、「成人の1日の砂糖摂取量は50グラム(大さじ4杯程度)までに抑えることが推奨されます」と述べています。過剰な砂糖摂取は健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、カカオ含有量70%以上のダークチョコレートを選ぶことが推奨されます。

刺激物の影響
ココアにはカフェインやテオブロミンといった刺激物が含まれています。これらの量は紅茶やコーヒーより少ないものの、カフェインに敏感な人は、特に夜間の摂取を控えることが望ましいです。

シュウ酸塩と腎結石
ココアにはシュウ酸塩が含まれており、腎結石になりやすい体質の人には注意が必要です。このような場合は、医師に相談して摂取量を調整することを検討してください。

重金属の懸念
ココア製品には鉛やカドミウムなどの重金属が含まれる場合があります。最近の研究では、多くのチョコレート製品に重金属が含まれていることが判明しており、有機と表示された製品でも高いレベルで検出されるケースがあります。これはカカオの木が土壌から重金属を吸収する性質があるためです。このため、重金属を定期的に検査しているブランドを選び、複数の種類のココア製品をバランスよく取り入れることが推奨されます。

ココアを取り入れる際には、これらのポイントを考慮して、安全かつ効果的に楽しむことが重要です。

 

まとめ

ココアは、私たちの多くの人がすでに楽しんでいる食品であり、特にチョコレートの主要成分として広く愛されています。しかし、健康効果を最大限に活かし、リスクを抑えるためには、適量を守ることが重要です。

ココアの適切な摂取量についてはまだ確定的な研究結果は出ていませんが、ペリテラ氏によると、ココアパウダーやダークチョコレートを1日40~50グラム程度摂取することが良い目安になるとのことです。

また、ココアは汎用性の高い食品でもあります。例えば、コーヒーに少量加える、またはデザートに取り入れるなど、さまざまな方法で日常的に楽しむことができます。歴史的な背景や科学的な研究からも、ココアは健康を支える役割を果たすだけでなく、日常をより美味しくする食品であることがわかっています。

(翻訳編集 華山律)

AP
D.Ac
鍼灸医師であり、過去10年にわたって複数の出版物で健康について幅広く執筆。現在は大紀元の記者として、東洋医学、栄養学、外傷、生活習慣医学を担当。