現代医学の目指すところはシンプル――「寿命を延ばすこと」です。しかし、最新の国際研究では、寿命が延びた分、障害や病気に苦しむ期間も増加しているという現実が明らかになりました。
180か国以上の健康データを分析した結果、平均的な人の寿命が延びた分の約9.6年――ほぼ10年間――を病気や障害を抱えながら過ごしていることが判明しました。
世界的な健康格差と性別による影響
医学誌『JAMA Network Open』で発表されたこの研究は、特に女性が健康格差の影響を強く受けていることを示しています。女性は男性より平均2.4年長く、健康状態が悪い期間を過ごす傾向があります。
研究の著者たちは次のように述べています。「健康寿命と平均寿命の差における性差は、女性の寿命が男性より長いこと、さらに生活習慣病など非感染性疾患の影響が女性に大きいことが要因と考えられます」
アメリカでは、この差が特に顕著で、平均12.4年もの期間を健康を損なった状態で、過ごしていることが分かりました。この大きな差の背景には、糖尿病や心臓病といった非感染性疾患の増加が、主な要因としてあります。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、成人の14.3%が糖尿病を患っており、その内訳は以下の通りです:
診断済みの糖尿病:10.1%
未診断の糖尿病:4.2%
さらに、糖尿病の発症率は加齢とともに増加します:
40歳未満: 3.6%
40~59歳: 12.1%
60歳以上: 20.5%
また、毎年数十万人が心臓病で亡くなっており、非感染性疾患がアメリカ人の健康に、深刻な影響を与えている現状が浮き彫りとなっています。
慢性疾患への対応が急務
この研究によれば、過去20年間で世界の平均寿命は6年以上延びましたが、健康寿命(生活の質を考慮した「健康な期間」)の延びは5.4年にとどまっています。このギャップは、慢性疾患への対応や健康管理の改善が急務であることを示しています。
健康格差は、経済にも大きな影響を及ぼします。慢性疾患が長引くことで医療費が増大し、労働力の減少や社会保障・医療保険制度への負担が増加する可能性があります。これにより、個人だけでなく社会全体の経済的な安定が脅かされることが懸念されています。
アメリカでは、メンタルヘルスの問題や筋骨格系疾患(関節炎や骨粗しょう症など)が、健康寿命と平均寿命の差を広げる大きな要因となっています。これらの疾患は、身体的な不調だけでなく、日常生活の質にも大きな影響を与えています。
研究者たちは、寿命を延ばすだけでなく、生活の質を向上させることの重要性を指摘しています。特に、高齢化が進む社会では、健康寿命と平均寿命の差を縮めるための政策や取り組みが不可欠です。
これには、健康的な生活習慣を促進する教育や、慢性疾患の予防と管理を支援する医療制度の整備が含まれます。
(翻訳編集 華山律)
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