関節リウマチは、関節の痛みや炎症を引き起こす自己免疫疾患で、世界中で数百万人がその症状に苦しんでいます。この疾患の正確な原因は未だ解明されていませんが、近年の研究により、腸内環境と関節リウマチの関連性に注目しています。
2020年のデータによれば、関節リウマチに悩む人は世界で約1800万人にのぼります。この自己免疫疾患は、関節の痛みや腫れを引き起こし、時に日常生活に支障をきたす可能性があります。
科学者たちはこの疾患の明確な原因をまだ特定できていませんが、最近の研究では、腸内細菌叢(腸内フローラ)の変化が関連していることが示唆されています。また、特定の食事療法が痛みのある症状を和らげる助けになるという証拠も見つかっています。
腸内細菌叢の影響
栄養学専門誌『Nutrients』に掲載された最近の研究レビューでは、食事や腸内環境が関節リウマチに重要な役割を果たしている可能性が示唆されています。
関節リウマチは、主に手や足の関節に痛みを伴う腫れを引き起こす自己免疫疾患で、運動が困難になり、生活の質を低下させます。さらに、関節痛だけでなく、皮膚のしこりや肺の問題など、他の健康問題を引き起こすこともあります。
腸内細菌叢と関節リウマチの関連
このレビューでは、腸内細菌(腸内フローラ)と関節リウマチの発症に関連があることが示唆されました。腸内細菌叢は免疫システムの調整に関与しており、腸内異常(ディスバイオシス)は慢性的な炎症を引き起こします。この炎症が関節リウマチの重要な特徴です。
関節リウマチ患者にみられる腸内細菌の変化
プレボテラ(Prevotella)
関節リウマチ患者では、新たな症例の発症と関連するこの細菌が増加していることが分かっています。
コリンセラ(Collinsella)
この細菌が増えると腸の保護バリアが損なわれ、有害物質が血流に侵入し、炎症を引き起こす可能性があります。
ファエカリバクテリウム・プラウスニッツィ(Faecalibacterium prausnitzii, F. prausnitzii)
この有益な細菌は、関節リウマチ患者で減少していることを確認しています。さらに、抗リウマチ薬(DMARDs)で治療を受けている患者にも少ない傾向が見られます。
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された研究によると、F. prausnitziiは他の炎症性疾患でも炎症を抑える効果があるとされています。このような有益な腸内細菌の役割を理解することは、関節リウマチの治療や予防の新たな手がかりとなる可能性があります。
自己免疫疾患を改善する食事療法
食物繊維を多く含む食事は、腸内細菌を健康に保ち、炎症を軽減する助けとなります。また、魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸は炎症を抑える効果があり、ビタミンEは腸の健康や免疫機能を改善する可能性があります。
一方、飽和脂肪や赤身肉を多く摂る食事は炎症を悪化させ、関節リウマチなどの自己免疫疾患の症状を増加させる可能性があります。果物や野菜、魚、オリーブオイルなどを中心にした地中海式食事法は、炎症を軽減し、これらの疾患の管理に有効であるとされています。
その他の食事療法と炎症への効果
ビーガン食や抗炎症食も、関節の炎症を軽減する可能性があるとされています。さらに注目されているのが、自己免疫プロトコル食(AIP)です。
自己免疫プロトコル食(AIP)の概要
AIPは、体内の炎症を大幅に減少させることを目的とした食事療法です。ニューヨークのノースウェル・ヘルス所属の管理栄養士、ステファニー・シフ氏によると、AIPは「炎症や腸への刺激を引き起こす可能性のある食品を一時的に排除し、後に再導入することで問題のある食品を特定する方法」だと説明されています。
排除される食品
AIPでは、以下の食品が排除されます。
穀物類 小麦、大麦、ライ麦、グルテンが含まれるオート麦
豆類 インゲン豆、エンドウ豆、レンズ豆
乳製品、卵
ナッツ・種子類
ナス科の野菜 ジャガイモ(サツマイモを除く)、トマト、ナス、ピーマン、唐辛子
アルコール、砂糖
シフ氏は「排除リストにない食品でも、一部の人には炎症を引き起こすものがあります」と指摘しています。また、ナス科の野菜や他の排除食品がすべての人に影響を与えるわけではないと強調しています。そのため、AIPのような除去食が重要なのは、個人にとっての炎症トリガーを特定する手段として役立つからだと述べています。
AIPと地中海式食事法の比較
シフ氏は、関節リウマチ、乾癬性関節炎、セリアック病、全身性エリテマトーデス(SLE)、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、多くの自己免疫疾患が人々の生活に大きな影響を及ぼしていると指摘しています。
「これらの慢性疾患の中には、特定の食品を摂取することで症状が悪化するものもあります」と彼女は述べています。その結果、免疫システムが自分の健康な組織を攻撃し、さらなる炎症を引き起こす場合があると説明しています。
地中海式食事法
抗炎症効果があり、広く一般的な人々に適した食事法とされています。
果物、野菜、魚、オリーブオイルなどを中心とした食事で、炎症の軽減に効果が期待されます。
自己免疫プロトコル食(AIP)
自己免疫疾患を持つ人や複数の疾患を抱えている人に特化しています。
特定の食品や食品群が症状を悪化させているかどうかを明らかにするのに役立ちます。
AIPのように食品のカテゴリー全体を食事から除外する場合、ビタミンやミネラルの不足につながるリスクがあります。そのため、シフ氏は、管理栄養士と相談することの重要性を強調しています。
栄養士は、除外した食品の代わりとなる適切な代替食品を提案するだけでなく、腸の健康を維持するために必要な食事の多様性を保つサポートをしてくれます。
(翻訳編集 華山律)
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