薬に頼る前に、高血圧の原因を見つけ、それに対応することが大切です。
多くの人が、高血圧は一生付き合う病気であり、薬を飲み続けるしかないと考えがちです。しかし、薬の副作用が体に与える影響を心配する人も少なくありません。一方で、指圧や食事の改善といった自然な方法でも、血圧を効果的に下げることができる場合があります。
伝統的な中国医学では、高血圧を単なる病気と捉えず、体からの警告サインと考えます。高血圧の原因としては、寒さ、肩や首のこり、大きな感情の変化、血液が粘り気を帯びている状態(いわゆる「ドロドロ血」)、心臓に関わる病気などが一般的に挙げられます。
寒い気候と肩や首のこりが血圧に与える影響
寒い季節になると、交感神経が活発になり、アドレナリンの分泌が増えます。その結果、末梢の血管が収縮し、心臓が血液を送り出す力が強まるため、血圧が上がることがあります。このような場合、薬を使わずとも、暖かい服を着たり、温かい飲み物を飲むことで体を温めると、自然に血圧を下げる効果が期待できます。
また、寒い環境では肩や首がこりやすくなることがありますが、これも血圧が上がる原因の一つです。さらに、パソコンやスマートフォンを長時間使用することで肩や首がこり、頭部への血流が滞ることがあります。この血流不足が原因で、めまいや頭痛、耳鳴りなどの症状が現れることもあります。こうした状態では、心臓が血液を全身に循環させるために余分な負担をかけるため、血圧が上昇してしまうことがあります。
血行を良くする「尺沢(しゃくたく)」のツボ押し
肩や首のこりをほぐし、血行を良くするためには、「尺沢(しゃくたく)」というツボを押すのが効果的です。
方法: 尺沢の位置を見つけ、軽く押しながら、少し痛みやしびれを感じる程度の圧を加えます。同時に、首を回したり肩をすくめたりして筋肉をほぐすと、さらに効果が高まります。これにより首周りの血流がスムーズになり、脳への酸素供給が改善されることで血圧の低下が期待できます。
鍼治療の効果
さらに、多くの研究で、鍼治療が高血圧を下げる効果があることが示されています。鍼を活用することで、血行を促進し、自律神経のバランスを整える働きが期待されます。
経絡とツボの役割(伝統的な中国医学の考え方)
伝統的な中国医学では、体には「経絡(けいらく)」と呼ばれるエネルギーの通り道があるとされます。この経絡は、「気」や「血」といった体を支えるエネルギーを全身に巡らせる役割を果たしています。体には12本の主要な経絡があり、それぞれが特定の臓器と関連しています。これらの経絡上に存在する「ツボ(経穴)」を刺激することで、関連する臓器の機能を整え、症状を改善することが可能とされています。
感情の大きな変動が血圧に与える影響
伝統的な中国医学では、人間の感情を「喜び」「怒り」「憂い」「思い」「悲しみ」「恐れ」「驚き」の七つに分類しています。これらの感情が大きく変動すると、血圧が上がる原因になることがあります。たとえば、怒りや動揺で顔が赤くなり、首や肩が緊張し、心拍数が増加して血圧が高くなることがあります。また、深い悲しみ――大切な人を失ったときのような感情――が血圧を急激に上昇させる場合もあります。
労宮(ろうきゅう)のツボで感情を落ち着かせる
感情が高ぶって血圧が上がりそうなときや、高血圧の薬が手元にない場合、労宮(ろうきゅう)のツボをマッサージすることで血圧を安定させる効果が期待できます。
方法: 一方の手の親指で、もう一方の手の労宮(PC8)のツボを押します。その後、親指で円を描くように約3分間マッサージを行います。この動作で手のひらがリラックスし、末梢血管が広がり、血流がスムーズになることで血圧を落ち着かせる効果が期待できます。
血液の粘度が高くなる(ドロドロ血)の原因と改善方法
甘いものや揚げ物、アルコールを多く摂り、水分補給が足りていないと、血液がドロドロになりやすくなります。高糖質、高脂肪、高塩分の食品を過剰に摂取すると、血液が粘り気を帯びて流れが遅くなり、心臓に負担がかかります。その結果、血圧が上昇します。この現象は体が血流を維持しようとする働きの一環ですが、健康維持のためには根本的な原因に目を向けて改善することが大切です。
高糖質、高脂肪、高塩分の食品、加工食品、アルコールの摂取を控える。
十分な水分を摂取して血液の流れをスムーズにし、血管が詰まるのを防ぐ。
2023年に発表されたJAMA誌の臨床試験では、塩分を控えた食事を1週間続けた場合、参加者の73.4%で平均動脈圧が低下したことが確認されました。特に収縮期血圧は平均8 mmHg低下し、高塩分食を摂取した場合と比べて大きな効果が見られました。
試験での塩分摂取量の基準:
高塩分食: 通常の1日分に加えて2200 ミリグラムのナトリウムを追加。
低塩分食: 1日あたり約500 ミリグラムのナトリウム。
アメリカ心臓協会、ヨーロッパ高血圧学会、国際高血圧学会のガイドラインでは、塩分を控え、野菜を中心とした食事が推奨されています。さらに、カルシウム、マグネシウム、カリウムを多く含む食品は血圧を下げる効果があるとされています。
セロリ: セロリにはアピゲニンという成分が含まれ、心臓を保護する効果があります。
ナッツ: 健康的な脂肪やマグネシウムが豊富で、血圧の安定に役立ちます。ただし、1日10粒以内にとどめ、カロリー過多にならないよう注意しましょう。
バナナ: カリウムを多く含み、心拍を安定させる効果が期待されます。1日2本を目安に摂取するのが一般的ですが、腎臓に疾患がある方はカリウム過剰摂取のリスクがあるため控えましょう。
心臓の問題が原因となる高血圧について
一部の心臓疾患が原因で血圧が高くなることがあります。このような場合には、適切な治療法を見つけるために医師に相談することが大切です。
必ずしも降圧薬が必要なわけではなく、原因を特定してそれに対処することで、血圧を正常な範囲に戻せることがあります。効果的な治療を行うためには、問題の根本原因を明らかにすることが重要です。
降圧薬の潜在的リスク
ケーススタディ
ある患者の血圧は長年200 mmHg前後という高い状態が続いていましたが、降圧薬を使用せず約10年間特に健康上の問題はありませんでした。しかし、降圧薬を約半年間服用した後、軽い脳卒中(ミニストローク)を発症しました。
この患者の場合、生まれつき高血圧に適応した体質であった可能性があります。降圧薬によって血圧を急激に下げたことで血流が減少し、脳への血液供給が不足して脳卒中を引き起こしたと考えられます。
高血圧は脳出血の原因になり得ますが、一方で低血圧も脳血栓や脳虚血を引き起こし、脳卒中のリスクを高める可能性があります。どちらも適切な管理が重要です。
降圧薬の一般的な副作用
降圧薬には利尿薬や血管拡張薬などがよく使われますが、以下のような副作用が報告されています:
めまい
頭痛
吐き気
心拍数の低下
動悸
また、腎臓への負担がかかる可能性や、血圧を下げることで心臓に過度の負担がかかり、心筋が肥厚して恒常的な高血圧を招くリスクも指摘されています。
まとめ
高血圧の症状が現れた際には、まずその根本原因を特定することが重要です。降圧薬を使用する場合は、医師とよく相談し、慎重に状況を評価したうえで最適な治療法を選ぶことが求められます。
(翻訳編集 華山律)
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