糖尿病と朝食の関係 血糖値を左右するタイミングとは

オーストラリアの小規模な研究で、2型糖尿病の成人において、朝食を遅らせることが血糖値の管理に役立つ場合があることが示されました。この研究は、糖尿病管理において「何を食べるか」と同様に「いつ食べるか」が重要である可能性を示唆しています。

「2型糖尿病の患者が最も血糖値が上がりやすい時間帯に対応するため、朝食のタイミングを変えたり、朝食後の運動を取り入れたりする選択肢を理解することを目指しています」と、研究の共同著者であるエブリン・B・パー氏(運動代謝学博士)は述べています。

研究の概要

この研究は、学術誌『Diabetes & Metabolic Syndrome: Clinical Research & Reviews』に掲載され、異なる朝食の時間帯と食後のウォーキングが食後血糖値に与える影響を調査しました。研究対象は臨床的に診断された2型糖尿病のオーストラリア人成人14人で、6週間にわたるランダム化クロスオーバー型試験が行われました。そのうち11人が試験を完了しました。

朝食の時間と血糖値の変化:
朝食を午前9時30分または正午に食べた場合、午前7時に食べた場合よりも食後血糖値が低下。

朝食後のウォーキング効果:
朝食後20分間の早歩きは、午前7時または正午に朝食を取った場合にはわずかな血糖値改善効果が見られましたが、午前9時30分に朝食を取った場合には効果が見られませんでした。

研究者たちは、朝食のタイミングを調整することで、血糖値の管理が改善し、糖尿病による深刻な健康合併症(糖尿病性網膜症、神経障害、腎疾患、心疾患など)のリスク軽減につながる可能性があると述べています。

この結果は、インスリンまたはスルホニル尿素薬を使用していない2型糖尿病患者に限られます。

インスリンやスルホニル尿素薬を使用している場合、食事を遅らせることで低血糖のリスクが高まる可能性があります。そのため、こうした薬を使用している患者は、食事のタイミングを変更する前に医療提供者に相談することが推奨されます。

 

運動と食事のタイミングが糖尿病管理に与える影響

この研究は、世界的に糖尿病患者が増加している現状を背景に行われました。世界保健機関(WHO)によると、2024年11月時点で世界の糖尿病患者数は8億人を超え、成人の糖尿病罹患率は1990年の7%から2022年には14%へと倍増しています。

また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによれば、アメリカではすべての人種・民族グループで2型糖尿病の罹患率が大幅に上昇しています。

糖尿病管理の基本的な方法には、運動量を増やすことや健康的な食事を選ぶといったライフスタイルの改善が含まれます。最近の研究では、運動のタイミングや食事のタイミングといった具体的な介入が血糖コントロールをさらに改善する可能性があると示されています。

 

朝食を遅らせることの利点

研究に参加したエブリン・B・パー氏は、食事前の軽い身体活動を取り入れることが血糖値の管理に役立つ「実行可能な戦略」になる可能性があると指摘しています。

「朝食を早めに取る場合は、その後にウォーキングを行い、体が血糖を処理しやすくするのが効果的です」と彼女は述べています。また、「朝食を遅らせる(※朝食を抜くのではなく!)、その前に軽い身体活動を積み重ねることで、朝食後の血糖値の上昇を抑える効果が期待できるかもしれません」とアドバイスしています。

(翻訳編集 華山律)

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。