ハーバリストのロザリー・ド・ラ・フォレさんは、カモミールが過小評価されがちなハーブだと話します。それは彼女自身の経験に基づくものです。
あるとき、彼女は誤ってカモミールの花を長時間水に浸してしまいました。その結果、消化器系の問題に非常に効果的な濃厚な飲み物ができたのです。この体験を通じて、彼女はそれまで軽視していたカモミールの力を改めて見直しました。
「カモミールって、どのコーヒーショップにも売っているかわいらしい小さなハーブで、本格的な薬草とは違うと思っていました。でも、このとき本当に思い知らされました。濃いカモミールティーを作ったところ、その劇的な効果を実感して、消化器系にどれだけ良いかが分かったんです。それ以来、カモミールが大好きになり、もう手放せません」と彼女はエポックタイムズに語りました。
現在、彼女は多くの人にカモミールを勧めています。
カモミールは世界中の多くの地域で育ち、身近に見られる植物です。その消化器系への効果は長年にわたり評価され、さまざまな文化で薬用として使用されてきました。また、その香りの良さから化粧品や食品にも広く利用されています。
カモミールエキスは、消化器系(GI)の健康を支えるハーブとして知られています。その駆風効果(ガスの排出を助ける作用)は、疝痛(せんつう)、消化不良、膨満感、お腹の痛みに役立ちます。また、粘膜を保護し鎮静する作用を持つ「粘液質(ミューシレージ)」が含まれており、腸粘膜の炎症を和らげ、下痢や嘔吐の症状を改善するのに効果的です。
作用メカニズム
国際学術誌 International Journal of Food Properties のレビューによると、カモミールに含まれるさまざまな植物性生化学化合物が抗炎症作用をもたらすことが報告されています。これらの化合物の働きにより、カモミールは慢性的な炎症性疾患に対する代替療法や他の治療法の補助療法として期待されています。
カモミールにはビサボロールという成分が含まれており、このオイルには抗炎症、鎮痛、抗菌、抗がん、防腐作用があります。また、ビサボロールは消化酵素ペプシンを抑制する能力があり、これによって消化器系の問題を予防する効果が期待されています。このことから、カモミールは胃や小腸上部の症状に対する代替治療として活用される可能性があります。
さらに、カモミールには多くのテルペノイド(植物由来の化合物)が含まれています。これらは抗酸化物質として機能し、病気に関連する活性酸素種を減らす働きをします。レビューによると、テルペノイドは「抗がん、抗菌、抗炎症、抗酸化、抗アレルギー作用」を持つとされています。
また、カモミールはサイトカイン(免疫系の反応を調整するシグナル伝達タンパク質)を抑制することで、体内の炎症促進経路を抑える能力があるとも指摘されています。
これらの化合物の働きにより、カモミールはがん、微生物感染症、クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(IBD)に対して有効である理由が説明されます。IBDは、消化管全体に炎症性潰瘍を引き起こし、下痢、血便、食欲不振、体重減少、腹痛やけいれん、疲労などの症状を伴います。
カモミールと過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)に悩む人々にも、カモミールは効果的です。カモミール、甘草(リコリス)の根、ヤロウ(ノコギリソウ)を組み合わせたハーブブレンドを摂取した人々は、対照群と比較してIBS症状が統計的に有意に改善したことが、二重盲検臨床試験で示されました。
2023年に Chronic Disease Journal に掲載されたこの研究では、102人の参加者を対象に調査が行われました。この研究の結果、カモミール混合物を摂取したグループでは、2週間後に便秘、下痢、粘液の排出が改善され、4週間後には腹痛、膨満感、便秘、下痢が大幅に改善されたことが報告されました。
消化症状の改善に加え、カモミールは不安の軽減にも効果的です。不安はIBSを悪化させ、消化器症状を増悪させる可能性があります。カモミールはその鎮静効果で広く知られており、就寝前のハーブティーブレンドや軽い鎮静剤としてよく用いられています。
「ストレスや圧迫感で食べ物をうまく消化できない場合、カモミールは非常にリラックス効果のある神経強壮剤です」と、ハーバリストのロザリー・ド・ラ・フォレさんは説明します。この「神経強壮剤」という言葉は、神経系を落ち着かせる作用を持つハーブを指す専門用語です。
「神経系をリラックスさせることで、健康的な消化を促進すると同時に神経系の鎮静効果も得られます。それが結果的に消化の改善につながるのです」と彼女は語っています。
がん患者に役立つカモミール
カモミールが気分と消化器症状の両方を改善する能力は、がん患者にとって補助療法として有用である可能性があります。このテーマについては、2023年に Integrative Cancer Therapies に掲載されたレビューで詳しく検討されています。補助療法とは、がんの主要な治療に加えて使用される治療法を指します。
このレビューでは、カモミールの使用方法(うがい薬、外用、カプセル、チンキ剤)に関する15件のランダム化比較試験が分析されました。研究者たちは、カモミールが全体的な生活の質の向上に寄与し、抑うつ、嘔吐、口内炎の軽減を通じて腸と脳の健康をサポートする効果を示していると指摘しています。
これらの効果は、カモミールの抗がん作用、化学予防作用、抗酸化作用によるものであるとレビューでは述べられています。
「ハーブ薬としてのカモミールは、この10年間で医療提供者からますます注目を集めています」とレビューには記されています。「非薬理学的で安全な方法としてのカモミールの使用は、がん患者の合併症を軽減するのに役立つ可能性があります」
ゆっくり始めることの重要性
カモミールを試したいと考えている人は、低用量やマイルドな種類から始めるのが良いと、ロザリー・ド・ラ・フォレさんは提案しています。
Merck Manual(一般向け版)によると、カモミールは抗凝固薬の作用に影響を与える可能性があり、またアルコールや他の薬物の鎮静効果を強めたり、避妊薬やホルモン療法に含まれるホルモンの働きを妨げる可能性があります。これらの薬を使用している場合は、カモミールを試す前に医師に相談するべきです。
一般的に安全なハーブとされていますが、カモミールはアレルギー反応を引き起こすこともあります。特にブタクサやヒマワリにアレルギーがある人は注意が必要です。これら3つの花は同じキク科(Asteraceae)に属しているため、交差反応の可能性があります。
注目すべきアレルギー反応には、目のかゆみ、くしゃみ、鼻水、皮膚の刺激があります。アナフィラキシーのような重篤で生命を脅かす反応は稀ですが、注意が必要です。また、喉のかゆみもアレルギーの一つとして挙げられます。
ロザリー・ド・ラ・フォレさんによれば、アレルギー反応は一般的に軽度であるため、まずは少量から試してみて、徐々に用量を増やすことで自分の耐性を確認するのが良い方法です。
さらに、ゆっくり始めるべきもう一つの理由は、カモミールの強い用量の効果や味にあります。
「私はカモミールが大好きです。なぜなら、誰でも簡単に手に入れられるからです」とド・ラ・フォレさんは話します。「カモミールが過小評価されている存在から、驚くほど素晴らしいハーブとして認識されるようになるための秘訣は、用量や調製方法がその効果に大きな違いをもたらすという点にあります」
カモミールの摂取方法
カモミールの摂取方法には、さまざまな選択肢があります。最も一般的なのは、ティー、チンキ剤(ハーブや生薬をアルコール⦅ウォッカやホワイトリカーなど⦆に漬けて成分を抽出したもの)、サプリメントの形で利用することです。
ロザリー・ド・ラ・フォレさんによれば、カモミールは多くの商品や店舗で手軽に手に入れることができるハーブです。また、乾燥した花を使って、自分でティーやチンキ剤、さらには外用軟膏を作ることも可能です。
リラックスした気分で楽しむ軽い飲み物を求めている場合、彼女は夕食後に小さじ1杯から大さじ1杯のカモミールをカップ1杯の熱湯に浸し、お茶として飲むことを提案しています。
しかし、ド・ラ・フォレさんは特に慢性的な消化器系の問題に対して、3分間だけ浸したカモミールティーでは十分な効果が得られない場合があると指摘します。カモミールの真価は、長時間浸すことで引き出されることが多いのです。
より強力な効果を得たい場合は、乾燥したカモミールの花を半カップ、熱湯1パイント(約470ml)に10~15分間浸す方法を勧めています。さらに、浸す時間を徐々に増やしていくことで、香りの良い穏やかな味わいから、苦味のある強力なバリエーションへの変化に味覚を慣らしていくのも良い方法です。
「このように淹れたお茶は非常に濃く、苦味も強くなりますが、その効果は本当に驚くべきものです」とド・ラ・フォレさんは述べています。「この濃いお茶こそが、大きな違いを生み出します」
(翻訳編集 華山律)
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