天文学者、謎の天体を次々と発見―「暗黒彗星」

「暗黒彗星(Dark Comet)」とは、小惑星のような見た目をしているものの、彗星のように宇宙空間を移動する謎の多い天体です。2021年に初めてその存在が確認されて以来、次々と発見されており、この奇妙な天体の正体を解明する手掛かりとなるかもしれません。

アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、暗黒彗星は小惑星のような外観を持ちながらも、彗星のような動きを示す特殊な天体です。2023年までに計7つが発見されていましたが、研究者が発表した最新の研究レポートによれば、新たに7つの暗黒彗星が発見され、既知の暗黒彗星の数が倍増したと報告されています。

研究者たちは、暗黒彗星を2つの異なる集団に分類できるとしています。直径が大きい暗黒彗星は外太陽系に、小さい暗黒彗星は内太陽系に存在することが分かりました。

天文学者は2016年の研究で、小惑星「2003 RM」の軌道が予測されていたものからわずかにずれていることを確認しました。このずれは小惑星に見られる通常の加速では説明がつかず、暗黒彗星の存在を初めて示唆する結果となりました。

共同研究者の一人であるNASAジェット推進研究所のダビデ・ファルノッキア氏は次のように述べています。

「天体に摂動が見られる場合、それはその天体が彗星であることを意味しており、表面から揮発性物質が噴出することでわずかな推進力が生じるのです」

しかし、最大限の努力を尽くしても「2003 RM」に彗星特有の「尾」を確認することはできませんでした。その見た目は他の小惑星と何も変わらず、この奇妙な天体の正体を解明するには至りませんでした。

翌2017年、天文学者たちはNASAの望遠鏡を用いて、太陽系外から飛来したとされる天体「オウムアムア」(Oumuamua、または1I/2017 U1)を恒星間天体として史上初めて確認しました。この天体は一見小惑星のように見えますが、軌道が予想外の変化を示し、彗星のように表面から揮発性物質を放出している可能性を示唆しました。

「オウムアムアの発見は非常に興味深いものでした。恒星間では2003 RMに似た天体として初めて確認されたため、2003 RMの存在意義をさらに高めることになりました」と、ファルノッキア氏は当時を振り返ります。

天文学者は2023年までに、太陽系内で小惑星のようで彗星のような天体を7つ発見し、これらの天体に「暗黒彗星」という新たなカテゴリーを設けました。その後、新たに同様の天体を7つ発見し、この分野の研究が本格的に始まりました。

ミシガン州立大学物理学部の博士研究員であるダリル・セリグマン氏は、光の反射率や軌道の分析に基づき、暗黒彗星を2つのグループに分類しました。それは「外太陽系暗黒彗星」と「内太陽系暗黒彗星」です。

「外太陽系暗黒彗星」は木星の周期彗星に似た特徴を持ち、楕円形の軌道を描きます。大きさは数百メートル以上で、外太陽系に位置しています。

「内太陽系暗黒彗星」は、水星、金星、地球、火星などが位置する内太陽系に存在し、軌道はほぼ円形です。その大きさは数十メートル以下と小型です。

セリグマン氏は次のように述べています。

「暗黒彗星は、地球上の生命が発展するために必要な物質を供給した可能性のある新たな候補として注目されています。暗黒彗星について知れば知るほど、地球の起源や生命の発展における役割をさらに深く理解できるでしょう」

この研究成果は2023年12月9日付けで《米国科学アカデミー紀要》(Proceedings of the National Academy of Sciences)に発表されました。
                    

(翻訳編集 正道 勇)

陳俊村