小寒 季節の変わり目に肝と腎を整えて健康を守ろう

2025年1月5日、暦の上で「小寒」に入りました。この時期は、中医学では自然界のエネルギー「五行」(木・火・土・金・水)の移り変わりの中で、水のエネルギーが主役を終える最後の節気とされています。そして次の「大寒」になると、水のエネルギーが退き、木のエネルギーが引き継ぎます。

人体でいえば、腎(水)のエネルギーが半月後には肝(木)のエネルギーにバトンタッチするタイミングです。だからこそ、この時期にしっかりと体調を整えることが大切です。

季節のエネルギー変化と体の関係

「季節ごとに体調管理をするなんて難しそう」と思うかもしれません。でも、中医学の考え方はシンプルです。昔の人々は、自然界と私たちの体は同じエネルギーでできていると考えていました。だから、自然の気候が変われば、体の調子もそれに影響されるのです。自然の変化に合わせて体の調整をすれば、病気を防ぎ、健康を保つことができます。

自然界のエネルギーは、木・火・土・金・水という5つの順番で循環しています。そして春の「木」のエネルギーは冬の「水」のエネルギーから生まれます。本当の意味で春が始まるのは「大寒」の時期で、この日から木のエネルギーが自然界や人体を支配し始めるとされています。立春よりも少し早いこの時期が、季節の移行の本当のスタートなのです。

小寒の時期は、1年の中で水(腎)のエネルギーが終わり、木(肝)のエネルギーに切り替わる準備期間。ここで体をしっかり整えておくと、次の季節を健康的に迎える土台ができます。

(sungoby / PIXTA)

 

小寒に意識したい体のケア

五行の考え方では、「水は木を生む」とされています。つまり、腎(水)は肝(木)の母親のような存在です。だから、小寒の時期には腎を大切にしながら、肝の準備も進めることが大事です。これがうまくいくと、以下のような不調を防ぐことができます。

  • イライラや落ち込みなどの精神的な不安定さ
  • 胃腸の不調
  • 頭痛やめまい
  • 目のトラブル
  • 春先の風邪や体調不良

食事では、腎を元気にする食材を中心に、肝のエネルギーを助けるものも取り入れるといいでしょう。

小寒は、1年のエネルギーが切り替わる重要な時期です。この時期に体をしっかり整えることで、次の季節を元気に迎える準備ができます。食事や生活習慣を見直し、体をいたわる時間を作ってみてください。

 

1. 寒がり体質の方向け:北海道風味噌汁(鮭の味噌汁)

寒い季節に腎を温め、免疫力を高めるケアに最適な一品(Shutterstock)

体質の特徴とよくある不調

特徴

  • 手足が冷たくなりやすい
  • 疲れやすい
  • 寒さが苦手

よくある不調

  • 腎のエネルギー(陽気)が不足し、冷えを感じやすい
  • 腰や膝にだるさや痛みを感じることがある

使用する食材とその効果

  1. 鮭(温性)
    • 肝・腎・脾(消化器官)の機能をサポートし、気血を補う。
    • 腎を温め、脾を元気にし、肝の血を調和させる。
    • 消化を助け、寒がり体質の改善に役立つ。
  2. 味噌(温性)
    • 胃を温め、脾を補強する。
    • 消化器官を整え、体を暖かく保つ効果がある。
  3. 大根(涼性)
    • 肝の気を調整し、消化を助ける。
    • 体内の余分な湿気を取り除く効果がある。
  4. 昆布
    • 血液循環を促進し、腎のエネルギーを守る。
    • 肝の気を通し、肝腎のバランスを整える。

作り方(2人分)

  1. 鮭を一口大に切り、大根は薄切りにする。昆布は水に浸けておく。
  2. 鍋に昆布水を入れて沸騰させ、大根と鮭を加えて5分煮る。
  3. 最後に適量の味噌を溶き入れ、さらに1分煮る。
  4. 完成後、お好みで刻んだネギを散らして仕上げる。

全体の効果

  • 腎を温めて寒さを追い払い、寒がり体質の改善に役立つ。
  • 気血を巡らせ、免疫力を高める効果が期待できる。
  • 特に寒さが厳しい時期に体をしっかりケアできる一品です。

 

2. 乾燥体質の方向け:名古屋風手羽先焼き

乾燥を和らげ血を補う、体に優しい滋養料理(Shutterstock)

体質の特徴とよくある不調

特徴

  • 肌が乾燥しやすい
  • 口の中や喉が渇きやすい
  • 疲れやすい

よくある不調

  • 肝の陰(肝に必要な血液や水分)が不足しがち
  • 体に乾燥と熱がこもりやすい

使用する食材とその効果

  1. 鶏手羽先(温性)
    • 体を潤し、血を養い、免疫力を高める。
    • 乾燥を和らげる効果がある。
  2. 味噌(温性)
    • 五臓のバランスを整え、消化を助ける。
    • 体を温める働きもある。
  3. 黒糖(温性)
    • 血を補い、血流を促進する。
    • 乾燥を和らげ、体を潤す効果が期待できる。
  4. 生姜(温性)
    • 肝の気を整え、血液循環を促進する。
    • 体を温め、冷えを追い払う。

作り方(2人分)

  1. 鶏手羽先を洗って水気を切り、以下の材料で漬け込む:味噌、黒糖、すりおろし生姜、醤油など。漬け込み時間は約30分。
  2. オーブンを180℃に予熱し、漬け込んだ鶏手羽先をオーブンに並べて焼く。焼き時間は25~30分、表面がこんがりと黄金色になるまで焼く。
  3. 仕上げに刻んだネギやごまを振りかけて完成。

全体の効果

  • 肌や体の乾燥を和らげ、血を補う効果がある。
  • 栄養補給と同時に、肝の気を整え、乾燥による不調を軽減する。
  • 乾燥しがちな体質の方にぴったりの滋養料理です。

 

3. 虚弱体質の方向け:九州風豚骨スープ

骨や体を強化し、免疫力アップに。寒い季節や虚弱体質の方に最適(Shutterstock)

体質の特徴とよくある不調

特徴

  • 顔色が青白い
  • 疲れやすい
  • 免疫力が低い

よくある不調

  • 気血が不足しているため、慢性的な疲労感や体のだるさを感じやすい

使用する食材とその効果

  1. 豚骨(平性)
    • 気血を補い、腎を養い、体を丈夫にする。
    • 骨を強化し、体力を向上させる。
  2. 大根(涼性)
    • 肝の気を整え、消化を助ける。
    • 胃腸を調整し、体内の調和を図る。
  3. ニンニク(温性)
    • 寒さを追い払い、免疫力を高める。
    • 解毒効果や乾燥を和らげる効果もある。
  4. ナツメ(温性)
    • 血を補い、気を強化する。
    • 脾と胃を温め、免疫力を高める。

作り方(2人分)

  1. 豚骨を洗い、冷水に30分ほど浸して血抜きをした後、水気を切る。鍋に入れ、水を加えて沸騰させる。
  2. 大根とナツメを加え、弱火で1時間煮込む。
  3. 豚骨を取り出し、ニンニクと適量の塩を加え、さらに30分煮込む。
  4. 最後にスープを濾して不純物を取り除き、完成。

全体の効果

  • 気血を補い、体を元気にする効果がある。
  • 骨や体を強化し、免疫力を高める。
  • 虚弱体質の方にぴったりの滋養スープで、寒い季節にもおすすめです。

 

4. 肝気が滞りやすい体質の方向け:山形風冷やし蕎麦

肝の気を整え、ストレスや不安を和らげる。プレッシャーが多い方におすすめ(Shutterstock)

体質の特徴とよくある不調

特徴

  • 感情の波が大きい
  • 怒りっぽい
  • 消化不良を起こしやすい

よくある不調

  • 肝の気が滞っているため、不安やストレスを感じやすい

使用する食材とその効果

  1. 蕎麦(涼性)
    • 肝を冷やして熱を取り、解毒する効果がある。
    • 気血の流れを良くする。
  2. きゅうり(涼性)
    • 体を冷やし、余分な熱を下げる。
    • 利尿作用があり、体内の水分バランスを整える。
  3. ごま(温性)
    • 血を補い、肝の気を改善する。
    • 気持ちを落ち着かせ、リラックス効果がある。
  4. 梅酢(酸性)
    • 肝の気を整え、気血の流れを調和させる。
    • 消化を助ける効果もある。

作り方(2人分)

  1. 蕎麦を茹でて冷水で冷やし、水気を切る。
  2. きゅうりを細切りにし、ごまは軽く炒って香りを出す。
  3. 蕎麦ときゅうりを器に盛り、梅酢と少量の塩または醤油を加えて混ぜる。お好みでごま油や刻んだネギを加えると風味が増す。
  4. 仕上げに炒ったごまをたっぷり振りかけて完成。

全体の効果

  • 体内の余分な熱を取り除き、解毒効果がある。
  • 肝の気を整えてストレスや不安を和らげる。
  • 特にプレッシャーが多い方や肝の気が滞りがちな方におすすめ。

 

総括

これらの料理は日本の伝統的な料理をベースに、小寒の節気に合わせた養生の知恵を取り入れたものです。腎を温める鮭の味噌汁、乾燥を和らげる手羽先焼き、気血を補う豚骨スープ、そして肝気を整える冷やし蕎麦は、それぞれの体質や体調に合わせて簡単に作れる料理です。寒さの厳しいこの季節、体をいたわり、次の季節を元気に迎えましょう。

(翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。