甲状腺の不調 自然療法と治療の選択肢

甲状腺は喉ぼとけのすぐ下にあり、体の代謝をコントロールする大切な役割を担っています。髪の毛が抜ける、不眠が続く、体がむくむ、記憶力が落ちるといった症状は、甲状腺の不調が原因となっている場合があります。伝統的な中国医学(TCM)は、甲状腺の不調をケアするために、指圧や食事の調整といった効果的な方法を提案しており、これらは症状を和らげたり、甲状腺の健康を支えたりする助けになります。

甲状腺の病気 その症状とは

甲状腺ホルモンが必要以上に作られると甲状腺機能亢進症になり、体重が減ったり、食欲が増えたり、眠れなくなったりします。また、髪が細く切れやすくなる、手が震える、心拍数が速くなる、あるいは不規則になるといった症状が現れることもあります。中には、目が少し飛び出して見えるようになったり、体が著しく痩せる場合もあります。

一方で、甲状腺ホルモンが不足すると甲状腺機能低下症になり、髪が薄くなる、体重が増える、記憶力が低下する、気分が落ち込む、心拍数が遅くなるといった症状が出ることがあります。

また、どちらの場合でも、甲状腺が腫れたり、結節(しこり)ができたり、甲状腺腫になる可能性があります。これが進むと、咳が出たり、飲み込みにくくなったり、呼吸が苦しくなります。見た目への影響が心理的なストレスにつながることも少なくありません。

では、こうした甲状腺の問題にはどう向き合えば良いのでしょうか? それぞれの治療法にはどんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

 

放射性ヨウ素治療と白血病のリスク

甲状腺は体の中で唯一、ヨウ素を吸収し利用できる臓器で、ヨウ素は甲状腺ホルモンを作るために欠かせない成分です。
放射性ヨウ素は放射線を放出するヨウ素の一種で、甲状腺に吸収されると過剰に働く甲状腺細胞を選択的に破壊します。これにより、余分な甲状腺ホルモンの生成が抑えられ、甲状腺機能亢進症の管理に役立ちます。

しかしながら、放射性ヨウ素治療は患者の白血球数を増加させる可能性があり、これが白血病を発症するリスクを高めると指摘されています。

 

甲状腺摘出手術による合併症

甲状腺や副甲状腺をすべて摘出する手術(甲状腺全摘術)は、体のさまざまな機能に影響を与え、不整脈、骨粗しょう症、骨の発育異常といった問題が起こることがあります。
副甲状腺はカルシウムの調整に欠かせない副甲状腺ホルモンを作る役割を持っています。このホルモンが作られなくなると、血液中のカルシウム濃度が乱れ、それによってさらに健康上の問題を引き起こします。

そのため、甲状腺摘出手術を受けた場合は、生涯にわたって甲状腺ホルモンを補う治療が必要になります。また、カルシウムやビタミンDのサプリメントを併用することで、代謝を正常に保ち、健康を維持することが重要です。

 

ヨウ素の摂り方について

昔の中国医学の記録では、昆布や海藻、藻類といったヨウ素を多く含む食品が甲状腺の腫れに効果的です。ただし、現代ではヨウ素が添加された塩(ヨウ素塩)が広く使われているため、昆布などからヨウ素を摂りすぎると、かえって甲状腺の腫れが悪化することがあります。そのため、ヨウ素を添加していない天然の海塩を使い、ヨウ素を多く含む食品の摂りすぎに注意しましょう。

 

指圧で甲状腺の機能を整える方法

伝統中国医学(TCM)では、体の中を流れるエネルギーの通り道を「経絡」と呼び、その上に「ツボ(経穴)」という特定のポイントがあると考えられています。このツボを鍼やマッサージで刺激することで、特定の臓器に関連する病気を改善できます。

2018年の研究によると、鍼治療は単独でも、他の治療法と併用しても、甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症をはじめとする甲状腺の病気の症状を和らげ、体内の健康状態を示す指標(バイオマーカー)を改善する効果が分かっています。

甲状腺のツボ(大紀元製図)

特に効果的とされるツボは「甲状腺のツボ」と呼ばれ、耳たぶのすぐ上にある小さな突起部分に位置しています。このツボを押すことで、甲状腺機能亢進症や低下症のどちらにも役立ちます。甲状腺の問題を抱えている人がこの部分を押すと、鋭い引っ張られるような痛みを感じることがあり、それが正しい場所を見つけた合図です。

甲状腺のツボを押すと、主に次の2つの効果が期待できます。1つ目は、呼吸が楽になり、歩いたり階段を上ったりするときの負担が軽くなること。2つ目は、喉の違和感を和らげたり、痰を減らしたりして、甲状腺の働きを正常に保つことです。

 

甲状腺の健康に役立つ3つの重要なツボ

甲状腺の不調を和らげたり、予防したりするには、足にある3つのツボを刺激するのがおすすめです。「豊隆(ほうりゅう)」「三陰交(さんいんこう)」「足三里(あしさんり)」のツボをそれぞれ5分程度押すことで、甲状腺の症状を軽減する効果が期待できます。

豊隆(ほうりゅう)のツボ

豊隆のツボ(大紀元製図)

豊隆は、すねの外側、外くるぶしの先端から指10本分(約8インチ)上がった位置にあります。この場所は、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)の外側の縁に位置しています。

このツボを押すことで、痰を取り除き、しこりを散らす効果が期待でき、喉の不快感を和らげます。

 

三陰交(さんいんこう)のツボ

三陰交のツボ(大紀元製図)

三陰交は、すねの内側、内くるぶしの先端から指4本分上がった位置にあります。この場所は、脛骨(すねの骨)の後ろのくぼみにあります。

三陰交を押すことで、肝臓、脾臓、腎臓の働きをサポートし、内分泌系の調整、血液循環の促進、うっ血の解消、しこりを散らす、さらに痛みを和らげる効果があります。

 

足三里(あしさんり)のツボ

足三里のツボ(大紀元製図)

足三里は、膝の外側の下、膝の下から指4本分下がった位置にあります。
このツボを押すことで、脾臓や胃の機能をサポートし、免疫力を高め、体を強くするのに役立ちます。また、甲状腺の問題を予防し、管理する効果も期待できます。

注意
治療法は個人によって異なります。最適な治療計画については、医療専門家に相談することをおすすめします。

 

この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。

(翻訳編集 華山律)

胡乃文
台湾台北市にある上海同徳堂の伝統中国医学医師。カリフォルニア州サニーベールのNine Star University of Health sciencesの教授であり、また、スタンフォード研究所で生命科学の研究員としての経験を持つ。20年以上の臨床経験を通じて、14万人以上の患者を治療。中医学を用いて世界で5人目の悪性黒色腫患者を治癒させたことで名を馳せる。現在、登録者数70万人を超えるYouTubeの健康番組を主宰。また、オーストラリアや北米などで開催されている健康とウェルネスに関する人気のロードショーでも知られている。