寒さを活かして身体を整える 貝類で腎・肝・脾を調和する

一年で最も寒さが厳しい「小寒」の時期は、自然のエネルギーが静かに閉じ込められ、春に備えて蓄えられる季節です。このリズムは私たちの体にも影響を与え、特に「」は体のエネルギーを貯め込む重要な役割を担います。そのため、この時期は腎を労わり、エネルギーをしっかり蓄えることが健康のポイントとなります。

一方で、「」は上に向かってエネルギーを伸ばす性質を持っていますが、寒さが強まるとその動きが妨げられることがあります。これにより、気分が沈んだり、欲が落ちたり、消化が悪くなったりといった不調につながることも。このような時こそ、腎・肝・脾のバランスを整えることが大切です。

腎がエネルギーを蓄えると、肝がスムーズに気や血を巡らせ、脾胃(消化器官)の機能も整います。その反対に、脾胃が強化されることで肝の動きも正常化します。このように、三つの臓器は互いに補い合う関係にあります。だからこそ、腎を養いながら肝や脾の働きを助ける食材を選ぶことが、健康を維持する賢い方法なのです。

この時期に特に注目したいのが「貝類」です。貝類はその硬い殻でエネルギーをしっかり閉じ込めており、腎を養い、体のエネルギーを蓄えるのに役立ちます。また、貝類は水中で育つため利尿作用が期待でき、むくみを和らげる働きもあります。さらに、砂や泥を吸い込み、消化する力を持つ貝類は、私たちの消化器官(脾胃)をサポートしてくれます。これは自然界で培われた貝類ならではの特性といえるでしょう。

貝類の5つの健康パワー

  1. 貝殻の性質で腎をサポート、エネルギーをキープ
    貝類の特徴は、硬くしっかり閉じた貝殻です。この殻は、内部の柔らかい組織を外部から守るバリアのような役割を果たします。この「守る力」は、中医学で「腎がエネルギーを蓄える」とされる働きに似ています。腎は体のエネルギー源であり、しっかり蓄えるのが役目なのです。

例えば、牡蠣には亜鉛がたっぷり含まれていて、特に男性の腎機能をサポートし、体力を保つのに効果的です。一方、アサリにはたんぱく質やミネラルが豊富で、体内のエネルギーが減りすぎるのを防ぎます。貝類は腎を養う力に優れ、小寒のように寒さが厳しい時期に特にぴったりの食材です。

  1. むくみを解消する「利水効果」
    貝類は水中で育つ特性から、体内の余分な水分を調整する働きがあります。例えばアサリは、体にたまった余計な水分を排出し、むくみを解消する効果が期待できます。また、ホタテにはミネラルやアミノ酸が多く含まれ、体液の流れを良くして、寒い時期にありがちな水分の滞りを改善します。

特に湿気が多くむくみやすい人や、尿量が減少している人におすすめです。

  1. 消化を助け、糖尿病の改善にも役立つ
    貝類は砂や微生物を吸収して栄養を得る特性を持っています。この特性は中医学で「脾胃(消化器)の働きを助ける」とされ、食べ物の消化や栄養の吸収を助けます。

例えば、アサリや牡蠣には消化酵素やアミノ酸が多く含まれ、胃腸の働きを活性化します。また、ホタテにはキチンや食物繊維が含まれており、腸内の老廃物を排出しやすくします。消化不良や胃腸が弱い人には特におすすめで、負担が少なく糖尿病の食事療法にも適しています。

  1. 体を潤して、血を養うサポート
    貝類の柔らかくジューシーな肉は、体の潤いを保つ「陰液」に対応しており、乾燥や血の不足を補うのに効果的です。寒さと乾燥が厳しい小寒の時期に、体を潤し、血液の巡りを良くするのに役立ちます。

牡蠣にはコラーゲンやミネラルが豊富で、肝臓や腎臓をサポートし、免疫力を高める効果があります。また、ホタテに含まれるビタミンB12や鉄分は血液の生成を助け、冷えや貧血の改善に役立ちます。寒い季節に血流が悪くなりがちな人におすすめです。

  1. 赤い貝類が心臓の健康をサポート
    赤貝やムール貝などの赤い貝類は、特に心臓の働きを助ける効果が期待できます。寒い冬は心臓の機能が弱まりやすいですが、赤い貝類は血液循環を良くして、心臓の負担を減らします。

例えば、赤貝には高品質なたんぱく質や鉄分、オメガ3脂肪酸が含まれており、心臓の健康維持や血圧の安定に役立ちます。手足の冷え、血行不良、心臓の不調が気になる人には、ぜひ取り入れてほしい食材です。

 

以下は、体質に合わせて楽しめる貝類の簡単な健康レシピです。どなたでも作りやすい内容なので、ぜひお試しください。

体質に合わせた貝類レシピ

1.ホタテのお粥

ホタテのお粥は、体を温めてリラックスしたいときにおすすめ(Shutterstock)

材料(2~3人分)

  • ホタテガイ(貝柱)6個
  • 米 1/2カップ(約90グラム)
  • 生姜 2枚(千切り)
  • 長ネギ 1本(適当な長さに切る)
  • 大根 50グラム(千切り)
  • にんじん 30グラム(千切り)
  • 昆布だし 4カップ(または水でも可)
  • 塩 小さじ1/2(お好みで調整)
  • 白こしょう 少々(お好みで調整)

作り方

  1. ホタテの下ごしらえ
    ホタテをきれいに洗い、貝柱を取り出して薄切りにする。
  2. お粥のベースを作る
    米と昆布だしを鍋に入れ、強火で沸騰させる。その後、弱火にして30~40分煮込み、米が柔らかくなるまで煮る。少量の塩で味を調える。
  3. 野菜を加える
    米が煮えたら、生姜、にんじん、大根、長ネギを加え、さらに5~10分煮込む。
  4. ホタテを加える
    薄切りにしたホタテを加え、さらに5分ほど煮て火を通す。
  5. 味を調える
    白こしょうと塩で味を調え、最後に刻んだネギを散らして完成。

効果

  • 腎を補いエネルギーを保つ:腎が弱っている人や腰や膝がだるい人におすすめです。
  • 血を養い、心を落ち着ける:貧血や不眠、動悸が気になる人に効果的です。
  • 熱を冷まし痰を取り除く:痰が多く、熱がこもった咳を和らげます。
  • 肝を養い目を守る:目のかすみや乾燥感を改善します。
  • むくみを取り消化を助ける:胃腸が弱く、食欲がない人やむくみやすい人にもぴったりです。

注意点

ホタテは性質が穏やかで、多くの人に適していますが、胃腸が冷えやすく下痢をしやすい人は控えめに食べるか、生姜やこしょうなど温性の食材と組み合わせて食べると良いでしょう。

 

2.ホタテと大根のスープ

ホタテのスープは、ほっと温まりたいときにぴったりの一品。生姜の風味でさらにおいしく(Shutterstock)

材料(2~3人分)

  • ホタテ(貝柱)150グラム
  • 大根 200グラム
  • 生姜 3枚

作り方

  1. 下ごしらえ
    ホタテの貝柱をきれいに洗い、大根は皮をむいて一口大に切る。
  2. 大根を煮る
    鍋に適量の水を入れて火にかけ、大根を加え沸騰させたら、弱火にして10分ほど煮る。
  3. ホタテと生姜を加える
    大根が柔らかくなったら、ホタテの貝柱と生姜を加え、さらに5分煮込む。ホタテに火が通ったら完成。
  4. 味を調える
    塩で味を調え、熱いうちに召し上がれ。

効果

  • ホタテの効果
    ホタテは体を潤し乾燥を防ぐと同時に、腎や胃腸をサポートします。消化が弱い人や、体にこもった熱が気になる人にぴったりです。
  • 大根の効果
    大根には体を冷やし、余分な熱や痰を取り除く作用があります。また、むくみを解消する利尿作用も期待できます。

おすすめの体質

  • 湿気や熱が体にたまりやすい人
  • 体が乾燥しやすく、火照りを感じる人

注意点

ホタテと大根は体を冷やす性質があるため、胃腸が冷えやすい人や寒さに弱い人は控え目にしましょう。

 

3.アサリと冬瓜のスープ

アサリはむくみを解消し、血糖値の調整に役立つ(Shutterstock)

(消化を助け、むくみや血糖値を整える一品)

材料(2~3人分)

  • アサリ 200グラム
  • 冬瓜 300グラム
  • 生姜 3枚

作り方

  1. アサリの砂抜き
    アサリを塩水に1時間ほど浸けて砂を吐かせた後、しっかり洗う。
  2. 冬瓜の下ごしらえ
    冬瓜の皮をむき、一口大に切る。
  3. 冬瓜を煮る
    鍋に水を適量入れ、冬瓜を加えて10分ほど煮る。
  4. アサリと生姜を加える
    冬瓜が柔らかくなったら、アサリと生姜を加え、さらに5分煮る。アサリの殻が開いたら完成。
  5. 味を調える
    塩で味を調整し、温かいうちにいただく。

効果

  • アサリの効果
    アサリは体の余分な熱や湿気を取り除き、肝臓や腎臓をサポートします。また、むくみを解消し、血糖値の調整にも役立ちます。
  • 冬瓜の効果
    冬瓜は体を冷やしながら余分な水分を排出する働きがあります。暑さを和らげたり、血糖値を整える効果も期待できます。
  • 生姜の効果
    生姜は体を温め、アサリや冬瓜の冷える性質を調和させます。

おすすめの体質

  • 血糖値を気にする人に適したスープです。
  • むくみや湿気が体にたまりやすい人:体の水分バランスを整えたい方におすすめです。
  • 脾胃(消化器)が弱く、体内に熱がこもりがちな人:消化を助け、体の熱を和らげます。

注意点

アサリや冬瓜は体を冷やす性質があるため、冷え性の方は生姜を少し多めに入れるか、控えめに食べると良いでしょう。

 

4.にんじんと牡蠣の煮込みスープ

牡蠣のスープは疲労や不安感の緩和に役立ち、体の内側から健康を保つ(Shutterstock)

材料(2~3人分)

  • 牡蠣(殻なし、生牡蠣)100グラム
  • にんじん 100グラム
  • 豚もも肉(赤身)150グラム
  • 生姜 3枚

作り方

  1. 牡蠣の下ごしらえ
    牡蠣をきれいに洗い、塩水に10分ほど浸けて汚れを落とし、水気を切る。
  2. にんじんと豚肉の準備
    にんじんの皮をむいて一口大に切る。豚肉も一口大に切り、熱湯でさっとゆでて血抜きする。
  3. 煮込む
    にんじん、豚肉、生姜を鍋または蒸し器の耐熱容器に入れ、水を加える。蒸し器で1時間半ほどじっくり蒸し煮にする。
  4. 牡蠣を加える
    豚肉が柔らかくなったら、牡蠣を加え、さらに10分煮込む。
  5. 味を調える
    塩で味を整え、熱いうちに召し上がれ。

効果

  • 牡蠣の効果
    牡蠣は腎を養い、体を落ち着かせる作用があり、疲労や不安感の緩和に役立ちます。また、肝をサポートし、体の内側から健康を保ちます。
  • にんじんの効果
    にんじんは脾胃(消化器)を整え、消化を助けるとともに、目の健康をサポートします。
  • 豚肉の効果
    赤身の豚肉は体を潤し、腎や消化器をサポートしながら、エネルギーを補います。
  • 生姜の効果
    生姜は冷えを防ぎ、他の食材の冷える性質を調和します。

おすすめの体質

  • 腎が弱く、エネルギー不足を感じる人:腰や膝のだるさ、疲れやすいと感じる人に。
  • 消化が弱く、食欲がない人:胃腸を整え、食欲を助けます。
  • 血行が悪く、目の疲れや視力低下が気になる人:気血を養い、目の健康をサポートします。

注意点

牡蠣やにんじんは穏やかな性質ですが、胃腸が冷えやすい方は生姜を少し多めに加えると、体を温める効果が期待できます。

(翻訳編集 華山律)

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。