体の一部に似た食べ物は、その部分に効く?

昔から、人々は病気や体の不調を癒すために自然の中からヒントを探してきました。特に、植物の見たがその薬効を教えてくれると考えられていたのです。まるで自然が計画的に作られたかのように、体の特定の部分に似た形の植物が、その部位に効果をもたらすと信じられていました。

古代ローマの医師ディオスコリデスは、西暦65年頃に「スコルピウスという草はサソリの尾に似ていて、サソリに刺されたときの治療に使える」と述べたとされています。
中世になると、「見た目が似ているものが、それに関連する病気や体の部分に効く」という考え方が広く受け入れられるようになりました。この信念では、葉っぱや花、根にある特定の形状や特徴が、神が人間の病気を治すために刻んだ“印”だとされていたのです。

植物の見た目からその薬効を推測するという考え方は、世界中の古代文化で見られます。たとえば、ネイティブアメリカンのハーブ療法、インドのアーユルヴェーダ、伝統的な中国医学、ギリシャ医学、そしてアフリカのハーブ療法などです。

このような自然の仕組みを理解すると、「食べ物を薬として使う」という考え方が直感的に分かるようになります。また、私たちが選ぶ食べ物と健康との深い関係を改めて感じることができます。

ここでは、研究が進んでいる「体の一部に似ていて、その部位に効果があるとされる食べ物」の具体例をいくつか紹介します。

体の形に似た食べ物と、それがもたらす健康効果

体の部位に似た食材とその効果(大紀元製図)

くるみ:

くるみは見た目が脳に似ているだけでなく、実際に脳の健康に役立つことが研究で証明されています。

医学誌『The Lancet』に掲載された6か月間のランダム化比較試験では、1日30gのくるみを食べた10代のグループは、注意力や知能が向上したと報告されました。また、別の研究(Nutrients誌)では、くるみが記憶力や認知機能を保護し、酸化ストレスや炎症から脳を守るとされています。さらに、くるみに含まれる抗酸化物質が、認知機能の加齢による低下を防ぎ、アルツハイマー病のような神経変性疾患のリスクを下げる可能性があることも示されています。

サツマイモ:膵臓

サツマイモは人間の膵臓の形に似ており、膵臓の健康をサポートします。膵臓はインスリンや消化酵素を分泌して血糖値を安定させる重要な器官です。

動物実験では、サツマイモに含まれるカリウム、ベータカロテン、ビタミンB6といった低炭水化物の栄養素が血糖値を調整し、膵臓への負担を軽減する効果があることが示されています。

アボカド:子宮

アボカドは女性の子宮の形に似ており、実際に女性の生殖システムに良い影響を与えることが知られています。興味深いことに、アボカドの実が完全に成熟するまでに約9か月かかります。

アボカドは一価不飽和脂肪酸を豊富に含んでおり、ホルモンの生成を助けます。これらの健康的な脂肪は、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンといった性ホルモンを作るための重要な成分です。また、アボカドは自然な葉酸の供給源でもあり、妊娠中のDNA複製をサポートしたり、子宮頸がんのリスクを低下させたりする効果があります。

トマト:心臓

トマトを切ると、心臓の4つの部屋の形に似ていることに気づきます。トマトが心血管疾患を減らす効果を持つのは、多くの研究で確認されており、その主な理由はリコピンという抗酸化物質が豊富に含まれているからです。

2021年の研究では、トマトをオリーブオイルやアボカドのような健康的な脂肪と一緒に食べると、リコピンの吸収量が大幅に増加することが分かっています。リコピンは脂溶性の成分だからです。

ショウガ:胃

ショウガは形が異なる場合もありますが、全体的には人間の胃に似ています。そして、実際に消化器官、特に胃や腸に効果を発揮します。ショウガは何千年もの間、主に吐き気や嘔吐の緩和に使われてきました。

Nutrients誌に掲載された系統的レビューでは、ショウガの抗嘔吐作用が妊娠中のつわり、乗り物酔い、化学療法の副作用の軽減、さらには大腸がんリスクの低減にも役立つことが示されています。ショウガの主成分であるジンゲロール、ショガオール、ジンギベレン、ジンゲロンがこれらの効果に寄与していると考えられています。

キドニービーンズ(赤インゲン豆):腎臓

キドニービーンズは腎臓の形をしていることからその名前がつけられましたが、実際に腎臓の健康をサポートします。この豆は食物繊維が豊富で、コレステロール値を下げる効果があります。

『Lipids』誌に掲載された研究では、4週間にわたりキドニービーンズを与えられたラットは、コレステロールを低下させる酵素「コレステロール7-α-ヒドロキシラーゼ」のレベルが顕著に高かったことが報告されています。

また、2024年の研究では、キドニービーンズに含まれる強力な抗酸化物質(グルタチオン、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼなど)が肝臓や腎臓の機能を改善する効果があるとされています。

オリーブ:卵巣

オリーブは見た目が卵巣に似ており、実際に女性の生殖機能をサポートします。イタリアの古い研究では、オリーブオイルを多く摂取する女性は卵巣がんのリスクが32%低下することが分かっています。その理由は完全には解明されていませんが、オリーブオイルの健康的な脂肪ががんに関わる遺伝子を抑制する可能性があると考えられています。

さらに、Nutrients誌に掲載された大規模レビューでは、オリーブオイルが乳がん予防や閉経後の骨粗しょう症対策にも効果があるとされています。

ニンジン:目

輪切りにしたニンジンは、人間の虹彩や瞳孔の形に似ています。そして、まさにその目の健康をサポートします。

2021年の大規模な研究レビューによれば、ニンジンに含まれるカロテノイド(ルテインやゼアキサンチン)は、抗酸化作用と抗炎症作用を持ち、酸化ストレスによる視力低下を防ぐ効果があります。これらの抗酸化物質は、目のような小さな血管が集まる場所での炎症を軽減する働きがあります。また、ニンジンに含まれるベータカロテンは体内でビタミンAに変換され、視力維持に役立つほか、失明や加齢黄斑変性、夜盲症といった目の病気を予防します。

高麗人参:神経

高麗人参はその形が中枢神経系を思わせますが、実際に脳や神経系をサポートする効果があります。

2021年のレビューによれば、高麗人参に含まれるジンセノサイドなどの有効成分には神経保護作用があり、記憶力や認知機能を高める効果が確認されています。これにより、脳細胞の成長を促し、ニューロン(神経細胞)の生存率を向上させます。

セロリ:骨

セロリはその形が骨に似ており、骨の健康をサポートする野菜として知られています。

『Journal of Functional Foods』に掲載された複数の研究では、セロリに含まれるアピゲニンやルテオリンといったフラボノイドが、抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、骨細胞の分解を抑制して骨粗しょう症を予防することが確認されています。さらに、アピゲニンは骨再生を促進する効果があることも分かっています。

形や色、種類など食べ物の特徴に注目することで、体が必要とする栄養を効果的に取り入れるヒントが得られます。

 

この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。

(翻訳編集 華山律)

臨床栄養士および自然療法士として、2009年より消化不良、依存症、睡眠障害、気分障害に悩む方々を支援するコンサルティングを実施。大学で補完医療を学ぶ中で、行動神経科学や腸・脳の不均衡に強い関心を抱く。それ以来、栄養ゲノミクス、トラウマにおけるポリヴェーガル理論、および栄養療法アプローチに関する大学院レベルの認定資格を取得。