アメリカ心臓協会(AHA)が発表した最新の科学声明によると、心血管疾患が認知機能の低下や認知症リスクの増加に大きく関わっていることが明らかになりました。心不全患者の約半数が認知機能低下を経験し、冠状動脈疾患を持つ人は認知症リスクが27%高いとされています。
心血管疾患と認知機能低下の関連
この声明は、2024年10月にAHAの医学誌『Stroke』で発表されたもので、心不全、心房細動、冠状動脈疾患などが認知機能低下や認知症の発症リスクを高めることを指摘しています。心血管疾患による脳卒中や認知機能低下は、個人や社会に深刻な影響を及ぼす慢性疾患として位置付けられています。
声明の執筆グループの代表である神経科医、フェルナンド・D・テスタイ医師は次のように述べています。
「脳卒中や認知機能低下は、どちらも個人の生活の質に大きな影響を与える障害であり、早期予防と管理が重要です」
テスタイ医師は、若い頃からの心血管健康の維持が脳の健康を守る上で重要であると強調しています。心疾患や心臓発作の予防は、高齢期の認知機能低下を防ぐ効果が期待されるとしています。
また、認知症は治療が困難な病気とされる一方で、健康的な生活習慣や血管リスク因子への早期対応によって脳機能を維持できる可能性があると指摘されています。
心疾患患者における高い認知機能低下の発生率
アメリカ心臓協会が発表した声明では、心疾患を持つ患者が認知機能低下を経験するリスクが高いことが過去の研究から明らかになっています。以下は、主なデータです。
心不全患者
約50%の患者が、記憶や言語などの基本的な認知機能に問題を抱えています。
心房細動(AFib)患者
メタ分析の結果、心房細動があると認知機能障害のリスクが39%高まることが示されています。
冠状動脈疾患患者
冠状動脈疾患を持つ成人は、認知症を発症するリスクが27%高いとされています。
米国では現在、300万~600万人が心房細動を患っており、この数は2050年までに約1600万人に達すると予測されています。心房細動は脳卒中と密接な関連があるだけでなく、高血圧や糖尿病などの心不全と共通するリスク因子を通じて、認知機能低下のリスクをも高めることが分かっています。
心臓発作を経験した患者の最大50%が、脳機能の一部を喪失する可能性があるとされています。この原因には、高血圧や血流の減少が含まれ、これらが認知機能障害の発生に寄与していると考えられています。
「関連性は非常に強い」と専門家が指摘
心臓の健康と脳の健康の関係について、ストーニーブルック心臓研究所の心臓病学部長であるハル・スコピッキ医師は、次のように語っています。「高血圧が脳卒中を引き起こすリスクを高めることから話を始めましょう」。同医師は『エポックタイムズ』の取材で、脳卒中が発生しなくても、高血圧によって脳の小さな血管が破裂し、血液が流出するケースがあると指摘しました。その結果、脳細胞が死滅し、認知機能が低下する可能性があるとしています。
「こうした高血圧に関連する認知機能の低下が、一生涯でどれほど蓄積されるのかを考えると、その影響の大きさがわかるでしょう」と語り、心血管疾患と認知機能低下の関係が非常に強いことを強調しました。
スコピッキ医師は、心臓と脳の健康の関連性について「共通するリスク因子がその理由の一つ」と説明しています。具体的には、以下のような要因が挙げられます。
高血圧
糖尿病
運動不足
質の悪い睡眠
これらの要因が心血管疾患だけでなく、認知機能低下にも影響を及ぼすとしています。
スコピッキ医師は、認知機能の低下が加齢による避けられない結果だとする考えを否定しました。「多くの人が認知症や心臓発作は予防できないと思っていますが、それは自分の体や臓器に何もコントロールできないと信じているのと同じです」と述べています。
スコピッキ医師は、アメリカ心臓協会が発表した声明を高く評価し、「医療従事者の活動をより効果的にし、公衆に正しい情報を伝える助けとなる」と述べました。また、「何か問題が起きる前に介入できることは非常に重要だ」と強調しました。
(翻訳編集 華山律)
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