私が子共の頃、ドイツで育った時の話です。病気になるたび、母は代々家族に伝わる家庭療法を使って私を看病してくれました。例えば、熱々のマッシュポテトを布巾で包み、それを頭に巻くという方法もありました。この療法は喉の痛みや気管支炎、耳の痛みを和らげるためのものでしたが、実際に効果があり、調子が良くなったのを覚えています。
今でもその療法はドイツでよく使われていますし、母の知恵には感謝しています。
風邪やインフルエンザが流行する季節には、多くの人が鼻詰まりや顔の圧迫感、頭痛、喉の痛みを和らげようとします。市販薬である「スーダフェッド」や「ミューシネックス」などが一般的な選択肢ですが、自然療法としてオイルマッサージ、塩水洗浄、ハーブスチームバスといった方法も効果的な代替手段となります。
1. 優しいカモミールスチームバス
世代を超えて受け継がれてきた家庭療法のひとつに、「熱いカモミールスチームバス」があります。
鍋でお湯を沸かし、乾燥したカモミールの花をひとつかみ加えます。その蒸気を吸い込むために頭にタオルをかぶり、サウナのような空間を作ります。この方法を試すと、鼻詰まりが楽になることが多かったです。
子共の頃は、この「拷問」のような療法に文句を言いながらも、10分後には顔が真っ赤になり、大量に汗をかき、鼻水が出て……目標は達成されていました。
現在、私はアメリカで子共を育てていますが、この伝統的な家庭療法を疑いの目で見ていたアメリカ人の夫を説得するのに何年もかかりました。そんな奇妙に見える方法が、夫にはなかなか受け入れられなかったのです。ところが、四半世紀後の今では、孫たちにも同じ療法を使っていますし、夫もすっかり慣れて受け入れるようになりました。
夫は今では、私の出身地であるヨーロッパの療法だけでなく、アーユルヴェーダ(インドの古代医学)や伝統的な中国医学など、他の歴史ある療法も取り入れるようになりました。
科学的に証明された効果
昔は母や祖母の知恵を信じるしかありませんでしたが、現在では科学的な裏付けを得ることができます。ただし、伝統医学の研究資金は限られているため、研究が進むのは遅いのが現状です。それでも、カモミールスチームバスに関しては科学的研究が追いついてきました。
例えば、2021年に『耳鼻咽喉科学年報(Annals of Otology, Rhinology, and Laryngology)』に掲載されたランダム化比較試験では、炎症を起こした鼻粘膜を持つ123人の患者を対象に4つの異なる鼻治療が検証されました。すべてのグループがステロイドスプレーを使用した上で、グループAには「アイソトニック海水スプレー+カモミール液体抽出物」が加えられました。一方、グループBとCにはアイソトニック海水のみが追加され(Bはスプレー、Cは鼻洗浄での使用)、グループDはステロイドスプレーのみの使用でした。
研究者たちは鼻腔の浄化速度を測定した結果、グループAの「鼻粘膜繊毛運動クリアランス時間」が有意に速く改善されたことを確認しました。つまり、カモミール抽出物の追加が呼吸の改善に効果的だったのです。この研究では、カモミールが「良い代替治療法」として評価されました。
また、2021年に『アメリカ耳鼻咽喉科学ジャーナル(American Journal of Otolaryngology)』に掲載された二重盲検試験でも、小さな白いカモミールの花の薬効が証明されました。この研究では、慢性副鼻腔炎の治療としてカモミールエキスの鼻用滴剤が使用され、74人の患者に対して試験が行われました。結果は、カモミールハーブの鼻用滴剤が副鼻腔炎の症状を大幅に改善し、患者の生活の質を向上させることを示しました。また、研究によるとカモミールには「抗不安、抗けいれん、鎮静、抗アレルギー、抗炎症、抗菌、抗真菌、抗ウイルス」の効果があるとされています。
カモミールスチームバスの作り方
・中くらいの鍋に半分ほど水を入れて沸騰させます。乾燥したカモミールの花をひとつかみ鍋に加えます。
・大きなバスタオルを使い、頭と鍋全体を覆うようにします。鼻から暖かい蒸気を吸い込み、口から吐き出します。この作業を10分ほど続け、必要であれば途中で短い休憩を挟みましょう。
・タオルの端を少し持ち上げて外気を入れることで、蒸気の温度を調整することができます。
2. アーユルヴェーダの鼻用オイル
私のもう一つのお気に入りの療法は「鼻用オイル」です。これは幼少期からの習慣ではありませんが、アーユルヴェーダの伝統に由来するもので、鼻腔や粘膜を潤すために使われる「ナスヤオイル」というオイルです。
粘膜は呼吸器だけでなく、気管支、胃、腸、さらにはさまざまな臓器にも存在します。その主な役割は潤滑と保護であり、この場合、鼻腔を湿らせて健康を保つのが目的です。
鼻腔の粘膜が乾燥すると、その免疫機能が損なわれます。乾燥は不快感や炎症を引き起こし、感染への感受性を高める原因になります。乾いてひび割れた粘膜層は、ウイルスや細菌、真菌(カビ)に対して無防備になり、体の防御機能を弱めてしまうのです。
そのため、鼻腔の潤いを保つことが非常に重要です。
アーユルヴェーダ療法を支持する研究
2023年に『アーユルヴェーダと統合医学ジャーナル(Journal of Ayurveda and Integrative Medicine)』に掲載された研究では、ごま油ベースのアーユルヴェーダ鼻用オイル「アヌ・テイル(Anu taila)」を、COVID-19のような呼吸器感染症を予防する「生物学的マスク」として活用する可能性が評価されました。
研究では、物理的なマスクの使用を否定するものではありませんでしたが、「アヌ・テイルのような薬用オイルや純粋なごま油を鼻腔に注入することで、追加的かつ効果的な鼻咽腔の保護が得られる」と述べられています。
また、2022年に『応用微生物学ジャーナル(Journal of Applied Microbiology)』で発表された研究では、アーユルヴェーダのハーブを用いた鼻用滴剤が、ムコール症(約40種類のカビによる感染症で、鼻詰まりや頭痛を引き起こすことで知られる)に対して有効であることが報告されました。この滴剤は予防的な使用でも治療的な使用でも効果を発揮しました。
私自身もアーユルヴェーダの鼻用オイルを空の旅で活用しています。飛行機の客室内の空調は鼻腔を乾燥させる傾向があるため、飛行機に乗った後すぐに、ナスヤオイルを片方の鼻に1〜2滴ずつ注入します。そのおかげか、長時間の海外便でも、機内で感染症にかかったことは一度もありません。
3. 塩水による鼻洗浄
塩水を使った鼻洗浄は、鼻詰まりを和らげるための穏やかな方法の一つです。この療法は、アーユルヴェーダ由来の方法の中でも、西洋人にとって最もなじみ深いものかもしれません。
科学者たちはこの療法を「鼻洗浄」と呼び、安全で効果的な方法として推奨しています。2023年に『アジア太平洋アレルギージャーナル(Asia Pacific Allergy)』に掲載された研究では、「低圧・高容量の洗浄装置」を使用し、生理食塩水または高張性食塩水(塩分濃度が高い塩水)を用いることが効果的だとされています。
鼻洗浄のやり方
・温かい滅菌水または蒸留水を約240ml)準備する。水はぬるま湯程度にし、塩が溶けやすい温度にします。
・ヨウ素やその他の添加物が入っていない塩を小さじ1杯使用します。水に塩を入れ、完全に溶けるまでかき混ぜます。
・「ネティポット」や専用の鼻洗浄器を使い、塩水を片方の鼻から注ぎ入れ、もう片方の鼻から排出させます。鼻詰まりがひどい時期には、1日3回まで繰り返して行うことができます。
4. ハーブの塗り薬
アロマ成分を含む胸用の塗り薬(例えばヴィックス ヴェポラッブ)は、鼻詰まりを和らげるためによく使われます。これをさらに自然な形にアレンジしたのが、ハーブのエッセンシャルオイルを使った自家製の塗り薬です。このハーブ塗り薬は、鼻の炎症、鼻詰まり、副鼻腔の圧迫感、胸の詰まりを和らげる効果があります。使用するハーブによっては、肺や呼吸器をリラックスさせ、呼吸を楽にする働きもあります。
基本的な塗り薬のレシピ
- 120グラム(アーモンドオイル、アボカドオイル、グレープシードオイル、またはオリーブオイル)
- 40グラム(ココアバター、シアバター、蜜蝋(ミツロウは、ミツバチが六角形の巣を作る材料として、働き蜂の腹部にある分泌腺から分泌するロウ)、ただし蜜蝋を使うと少し硬めの仕上がりになります。またはラノリン。
作り方
・ガラスまたは金属製の容器を使い、湯煎(ウォーターバス)でキャリアオイルとバターまたはワックスを溶かして混ぜます。通常、約49~60℃(120~140°F)で溶けて均一に混ざります。
・鼻詰まりを和らげるためには、ハーブ系のエッセンシャルオイルを数滴加えるのがおすすめです。特に効果的なオイルとしては、ユーカリ、松(パイン)、イタリアイトスギ(サイプレス)、バルサムファー(モミの一種)、ブラックスプルース(黒トウヒ)、ローズマリー、そしてペパーミントが挙げられます。これらのオイルは、それぞれが持つ爽やかな香りと鼻腔をスッキリさせる効果で、呼吸を楽にする手助けをしてくれます。さらに、必要に応じてオーガニックのメンソールクリスタルを少量追加すれば、より清涼感のある仕上がりになります。
・完成した混合液を小さなアンバーガラス(遮光性のある茶色の容器)に注ぎます。完全に冷えるまで蓋を開けた状態で一晩置き、完全に固まったら蓋を閉めます。
5. 将来を見据えて
特に寒い季節には、呼吸器感染症や鼻詰まりが頻繁に起こるため、その原因について考えてみることが重要です。
鼻詰まりの原因は何だろう?
症状が長引いたり、頻繁に再発したりする場合は、その原因を探る必要があります。鼻詰まりの原因としては、単なる風邪やウイルス・細菌による感染症である可能性があります。しかし、それだけではないかもしれません。
例えば、鼻中隔の湾曲や鼻ポリープなどの構造的な問題が原因の場合もあります。また、環境汚染物質やカビ、アレルギー、乾燥した空気、ホルモン変化などによって鼻腔が刺激を受けている可能性も考えられます。さらに、点鼻薬の過剰使用も、かえって鼻詰まりを引き起こすことがあるのです。
原因は乳製品への感受性かもしれない?
もう一つ注目すべきポイントは、乳製品への感受性が鼻詰まりに影響を与えている可能性です。乳製品の摂取と粘液の増加には関係がないという主張が一般的ですが、私自身の経験では、そうとは言い切れないように思います。
私はかつて、1年に3〜4回も重度の副鼻腔炎を患い、フロネーズやスーダフェッド、その他の点鼻薬を継続的に使用していましたが、根本的な解決には至りませんでした。一方で、息子も幼少期に繰り返し中耳炎にかかり、耳にドレナージチューブを入れたり、複数回の抗生物質治療を受けたりしていました。しかし、耳鼻咽喉科の医師から「乳製品を抜いた食事を試してみては?」と提案されたことで、私たち家族はようやく上気道感染症から解放されました。
なぜ乳製品の問題は議論の的になるのか?
この問題については多くの議論があります。『メディカルハイポセシス(Medical Hypotheses)』に掲載された研究によれば、「過剰な牛乳の消費は、呼吸器粘液の増加や喘息と長い関連がある」とされています。しかし、この関係は単純ではなく、従来のアレルギーの概念では説明できないとも指摘されています。研究者たちは、乳製品に反応する一部の人々は、「腸の透過性が増加している」という状態が前提にあり、それが原因で粘液分泌が増える可能性があると仮説を立てています。
この問題についての理解を深める最良の方法は、研究論文ではなく、自分自身で観察し分析することかもしれません。日々の食事や体調の変化を記録し、どの要因が症状に影響を与えているのかを確認してみてはいかがでしょうか?
自分自身で試してみる
乳製品が原因かどうかを確かめるために、少なくとも4週間の「乳製品抜きの食事」を試してみてはいかがでしょうか。この期間中は、牛乳、チーズ、ヨーグルト、サワークリーム、生クリーム、カッテージチーズなど、すべての乳製品を摂取しないようにします。
簡単なことではありませんが、もし乳製品に対する感受性がある場合は、4週間後には何らかの違いを感じるはずです。この期間が終わったら、乳製品を少しずつ再び取り入れながら、症状にどのような変化があるかを観察してください。自分自身を探偵のように捉え、食事と症状の関係を記録する「フード&シンプロム日記」をつけると、体の反応をより深く理解する助けになります。
もしこうした自己実験を行っても明確な答えが得られない場合、上気道感染症、副鼻腔炎、扁桃炎に効果があるとされるハーブ「アンゴシン(Angocin)」を試してみるのも一つの方法です。
この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。
(翻訳編集 華山律)
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