体の「湿気」って何? セルフチェックと対策方法

伝統中国医学では、肥満や腎臓のトラブル、生殖機能の不調など、さまざまな健康問題が体内に溜まった「湿気(湿邪)」と深く関わっていると考えられています。

この記事では、「湿気」が体にどんな影響を与えるのか、その原因と対策について分かりやすく解説します。また、自分で簡単にできるチェック方法や改善のヒントもご紹介します。

体に「湿気」が溜まるとどうなるの?

体内に「湿気(湿邪)」が溜まると、さまざまな悪影響を引き起こします。具体的には、新陳代謝が低下し、それが原因で肥満や脂肪肝、高血圧、心血管疾患(CVD)、さらには腫瘍のリスクが高まることがあります。

腎臓は体内の水分を排出する重要な役割を担っています。しかし、水分がうまく排出されない場合、腎臓に問題がある可能性があります。

伝統中国医学では、「湿気」が過剰になる原因として、「陽気」が不足し、エネルギーの流れが滞ることで腎臓の機能が低下し、不要な物質を排出する力が弱まると考えられています。さらに悪化すると、急性腎炎や尿の過剰、腎臓のむくみを引き起こし、腎臓にダメージを与えることがあります。

また、「湿気」が過剰になると、肝臓の「陽気」にも悪影響を及ぼし、肝臓の機能が正常に働かなくなることがあります。肝臓の経絡は生殖器の周辺を通っているため、生殖器に関する不調につながる可能性があります。たとえば、女性の場合、「冷えた子宮」が原因で妊娠しにくくなったり、男性の場合はインポテンツや湿疹などを引き起こしたりすることがあります。

さらに、中医学では「気(生命エネルギー)」を命の原動力と考えています。気は「陰」と「陽」のエネルギーに分けられ、「陰」は夜や冷たさ、「陽」は昼や暖かさを象徴します。この2つのエネルギーがバランスを保つことで、健康が維持されるとされています。「湿気」が過剰になると、このバランスが崩れ、健康に悪影響を与えるのです。

 

体に「湿気」が溜まると出る症状

体内に「湿気(湿邪)」が過剰に溜まると、以下のような症状が現れることがあります:

消化器系の不調:湿気はまず腸や胃に影響を与えます。食欲が落ちたり、水を飲んだだけでお腹が張ったりすることがあります。

頭皮の問題:頭皮を押すと、ふわふわと柔らかい感じがすることがあります。これは頭蓋内に湿気が溜まっている状態を反映しており、めまいや頭が重く感じる、まるで「重い帽子」をかぶっているような感覚を引き起こすことがあります。

「洋ナシ型」の体型:湿気が腹部やお尻に溜まると、上半身や下半身が細い一方で、お尻が不釣り合いに大きくなる「洋ナシ型」の体型になることがあります。

皮膚トラブルやむくみ:湿気が手足に溜まると、上半身には湿疹が出たり、下半身にはむくみが現れたりすることがあります。

 

2種類の「湿気」 熱い湿気と冷たい湿気

伝統中国医学では、「湿気(湿邪)」には大きく分けて2種類、「熱湿」と「寒湿」があるとされています。

熱湿(ねっしつ)

湿気と熱が組み合わさると「湿熱(熱湿)」と呼ばれる状態になります。この「湿熱」は炎症と深く関係があり、例えば関節の腫れや赤み、痛風患者に見られる尿酸結晶などが典型的な症状です。
熱湿体質の人は、体が熱っぽく感じることが多く、冷たい飲み物や食べ物を好む傾向があります。また、顔が皮脂でテカりやすく、ニキビや吹き出物ができやすいのも特徴です。汗をかきやすく、汗には独特の強い臭いがあります。尿の色は濃い黄色で、便は粘り気があり排泄しにくいことがあります。

寒湿(かんしつ)

湿気と冷えが組み合わさると「寒湿」となります。寒湿体質の人は「陽気」が不足しており、体力が弱く、疲れやすいのが特徴です。寒がりで手足が冷たくなることが多く、水をあまり飲まず、喉が渇くことも少ない傾向があります。
また、寒湿体質の人は温かい食べ物を好むものの、汗をあまりかきません。舌苔(舌の表面の白い部分)が白く厚くなりがちで、顔色が青白いことが多いです。便は柔らかく緩い状態になりやすいのも特徴です。

 

自分でできる「湿気セルフチェック」

体内に湿気が溜まりすぎているかどうかは、以下の項目を確認することで簡単にセルフチェックができます。

精神状態:重労働や激しい運動をしていないのに、朝起きた時や午後に疲れを感じることはありませんか?また、普段から疲れやすく、体が重く感じることが多い場合は、湿気が影響している可能性があります。

肌の状態:伝統中国医学では、肌の状態は湿気と深く関係していると考えられています。湿気が多いと、指の間や手のひら、足の指や足裏にあせもや湿疹ができることがあります。

手足のむくみ:体内に湿気が多い人は、夕方になると手足、特に足にむくみを感じることがよくあります。

腹部や下半身の重だるさ:中医学では、湿気は重く沈む性質があると考えられており、下半身や下腹部に重さや湿っぽさを感じる場合があります。

消化器系の不調:湿気が消化器官に影響を与えると、食欲が低下したり、胃が張っている感じや満腹感を覚えたりします。

便の状態:湿気が多い人の便は粘り気が強く、トイレの便器にこびりつくことがあります。また、排便後にスッキリしない感じが続くこともあります。

生殖器系のトラブル:湿気が多い女性は、膣分泌物が増えたり、黄色いおりものが出たり、膣感染症にかかりやすくなることがあります。一方、男性は股間のかゆみや排尿時の焼けるような痛み、尿道炎を引き起こす場合があります。

 

湿気を取り除く方法

体内の湿気を解消するために、伝統中国医学では以下の食材や習慣が効果的だとされています。

生姜

生姜は体を温め、冷えを取り除き、胃腸を整えながら湿気を排出する働きがあります。陽気を高めるため、生姜は昼間に摂るのが理想的で、夜には避けた方が良いとされています。皮をむかずそのまま水で煮て、生姜湯として飲むのがおすすめです。ただし、体力が弱い人は生姜を摂りすぎると痩せすぎてしまい、かえって虚弱になることがあるので注意が必要です。
研究では、生姜が血圧や血中脂質を下げ、心血管疾患(CVD)の予防に役立つことがわかっています。また、生姜には抗炎症作用、抗酸化作用、抗がん作用、抗リウマチ作用、抗潰瘍作用、吐き気止め、解熱作用など、多くの健康効果があります。

シナモン

手足が冷たい寒がりな人や、ベジタリアンで冷えやすい体質の人には、1~2グラムのシナモンパウダーを日常的に摂ることがおすすめです。シナモンは食べ物や飲み物に混ぜて摂取すると良く、そのまま飲み込むと粘膜を刺激してしまうため避けてください。シナモンには体を温め、陽気を高め、血行を良くする効果があります。
また、研究によると、シナモンはコレステロールを下げ、心血管疾患のリスクを減らす効果があり、さらに抗肥満作用も期待されています。

日光浴

中医学では、経絡(エネルギーが循環する通路)が体内の臓器と体の各部位を結びつけていると考えられています。経絡上には特別な働きを持つ「経穴(ツボ)」があり、各臓器に対応するツボを刺激することで、病気を改善できるとされています。
特に午前11時から午後1時の間、背中に10分程度日光を浴びると、陽気を補い、湿気を取り除く効果があります。背中には多くの経絡や臓器の反射ポイントがあるため、日光で内臓を温めることでエネルギーや臓器の働きが改善されます。

運動

運動で汗をかくことは湿気を排出するのに効果的です。ただし、夜間の運動はエネルギーを消耗し、興奮状態を引き起こして寝つきが悪くなるためおすすめできません。運動は日中に行うようにしましょう。

塩分の摂取

適量の塩分を摂取することで、心臓の活力を高めることができます。特にベジタリアンの方は陽気を増やすために塩を多めに摂ることが推奨されています。1日あたり4~6グラム(小さじ1/2~1杯程度)が目安です。

 

湿気を悪化させる要因

以下のような行動や環境は、体内の湿気を増やし悪化させる原因となります。

脂っこい食べ物や甘いものの摂取:脂肪分や糖分が多い食べ物を摂りすぎると、「湿熱体質」になりやすくなります。

生ものや冷たい食べ物の摂りすぎ:冷たい飲み物やサラダ、果物や野菜のジュースなどの冷たい食べ物を過剰に摂取すると、「寒湿体質」を引き起こす原因になります。たとえナッツや生姜などを加えても、冷たいものの摂りすぎは湿気を増やしてしまいます。

アルコールの摂取:特にビールは湿熱体質を引き起こしやすく、「ビール腹」や痛風の原因になります。

運動不足や汗をかかない生活:運動をほとんどしない、汗をあまりかかない、あるいはエアコンの効いた部屋に長時間いる生活は、湿気の蓄積を招きます。

湿気の多い環境での生活:湿度が高い環境に住んでいる場合も、体内に湿気が溜まりやすくなります。

 

この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。

(翻訳編集 華山律)

伝統中国医学の医師であり、台湾の「心醫堂中醫診所(しんいどうちゅういしんじょ)」の院長である。2008年に中医学を学び始め、台湾の中国医科大学で学士号を取得。