慢性的な痔にお悩みの方へ 中医学で痛みを軽減

健康視点

は、多くの人が抱える身近な悩みですが、恥ずかしくてなかなか相談しづらい問題でもあります。この症状は、日常生活に大きなストレスを与えることがあります。主な症状として、排便時の痛みや出血、さらには「何かが挟まっているような違和感」を感じることが挙げられます。ただし、痔は思っているほど怖いものではありません。正しいケアをすることで、不快感をやわらげ、場合によっては完治させることも可能です。

ピンポイントで症状を改善する治療

45歳の李さんは、慢性的な便秘に長年悩まされていました。ある日、辛い食事をした後、ひどい肛門の腫れ、耐えられない痛み、そして目に見える出血を経験しました。そこで私たちは、簡単な「薬草スチーム治療」を勧めました。翌日には痛みが軽減し、5日間続けたところ、出血や腫れはほとんど消えていました。

1.薬草スチーム治療のレシピ

材料

  • よもぎの葉(乾燥または生)20グラム
  • スベリヒユ(Purslane)30グラム
  • 苦竹(Bitter bamboo shoots)15グラム

作り方

  1. よもぎの葉、スベリヒユ、苦竹をしっかりと水洗いします。
  2. 材料を鍋に入れ、1.5リットルの水を注ぎます。
  3. 煮立たせた後、水が約1リットルになるまで煮詰めます。
  4. 煮汁を洗面器などの容器に移します。
  5. スチームを肛門にあてて治療します。水温が快適な温度に冷めたら、患部を15分ほど浸します。

1日1回、5日間連続で行ってください。

このスチーム治療は、痛みやかゆみを即座に和らげ、患部の「熱」を取り除き、解毒し、血行を改善します。また、炎症を抑えて不快感を軽減する効果があります。

よもぎ(Mugwort) よもぎはアジア諸国で「長寿の薬草」として親しまれ、2千年以上も医療、食事、入浴、艾灸(もぐさを使った熱療法)、蒸気療法などに広く利用されてきました。伝統的には止血作用が重要視されており、現代ではよもぎのエッセンシャルオイルが注目されています。このオイルには抗菌、抗ウイルス、抗炎症、抗酸化、さらには抗がん効果もあると言われています。

スベリヒユ(Purslane)スベリヒユは、多彩な薬効成分で知られています。抗菌作用、抗酸化作用、抗炎症作用だけでなく、抗糖尿病、抗潰瘍、抗がん、神経保護効果など、幅広い効能を持つ植物です。

苦竹(Bitter bamboo shoots)苦竹には、抗酸化作用と抗炎症作用があり、伝統的な治療法において重要な役割を果たします。これらの特性から、薬草スチーム療法にぴったりの材料と言えるでしょう。

 

2. 改良版「槐角丸(Huai Jiao Wan)」の処方

38歳の張さんは、夜遅くまで働く生活が続き、辛い食べ物を好んでいました。その結果、次第に排便時に肛門の痛みや出血を感じるようになりました。私たちは、彼女の体調を整えるために改良版の「槐角丸」の処方を提案し、同時により健康的な食生活を心がけるようアドバイスしました。その結果、1週間後には出血が止まり、痛みが大幅に軽減、さらに全体的なエネルギーのレベルも向上しました。

この処方は、特に「湿熱」によって引き起こされる痔に効果的で、鮮やかな赤い出血や肛門周辺の灼熱感を伴うケースに適しています。

材料

  • 槐花(Pagoda tree flowers)12グラム
  • 地榆(Great burnet)15グラム
  • 黄芩(Baikal skullcap)10グラム
  • 当帰(Chinese angelica root / Dang gui)10グラム
  • 生地黄(Raw rehmannia root / Sheng di)12グラム
  • 枳壳(Bitter orange / Zhi ke)10グラム

作り方

  1. すべての薬草を水に30分浸けておきます(酵素分解を防ぐため)。
  2. 水を切り、鍋に入れます。薬草が水で3~5cmほど覆われるように水を足します。
  3. 強火で煮立てた後、弱火にして20~25分煮込みます。この煎じ液をボウルに移します。
  4. 2回目の煎じ液を作るため、同じ薬草に再び水を足し、1~2cm覆われる程度にします。再度煮立て、弱火で15~20分煮込みます。
  5. 煎じた液体を濾し、1回目と2回目の煎じ液を合わせます。
  6. 朝食後と夕食後の1日2回、飲んでください。

この処方は、血液を冷やして出血を止め、血液の循環を促進し、血瘀(血行不良)を解消することを目的としています。特に「湿熱」が下半身に溜まっていることが原因で発生する痔を治療するのに適しています。

槐花(Pagoda tree flowers) 中国では古くから、痔や血便、血尿、さらに子宮や腸の出血の治療に広く使われています。

地榆(Great burnet) 傷の治癒、血液を冷やす効果、熱を取り除く効果があり、抗炎症作用も持つ薬草として伝統的に使用されています。

黄芩(Baikal skullcap) 中医学で定番の薬草で、体内の「熱」を除去し、「湿」を乾かし、解毒する効果があります。フラボノイドの一種であるバイカリンを含み、抗がん作用、肝臓保護作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、抗酸化作用など、多彩な効果が確認されています。

この処方は「湿熱性便秘」が原因の痔に特化したものです。原因や症状の性質、体全体の状態によっては異なる中医学の処方が必要になる場合があります。そのため、正確な診断を受け、適切な治療を行うためには、必ず資格を持つ医師に相談してください。

 

中医学から見た痔の原因について

中医学では、痔は体内のバランスが崩れることで現れる症状の一つと考えられています。主な原因として、以下の3つが挙げられます。

1. 湿熱の蓄積

辛い食べ物やアルコールを頻繁に摂取すると、体内の「湿熱」が下半身、特に直腸や肛門に蓄積されることがあります。この湿熱の蓄積が原因で、腫れや排便時の出血などの症状が引き起こされます。

2. 気虚と直腸脱

排便時に力みすぎることが慢性的に続くと、肛門周辺の筋肉が疲労し、中医学でいう「気」と「血」の流れが不十分になります。「気」とは、体を動かし、臓器を支える生命エネルギーのことを指し、一方、「血」は体を潤し栄養を与える役割を持っています。

中医学では、「気」には血液を一定の場所にとどめる働きがあるとされています。そのため、「気」が不足すると、肛門周辺の筋肉や血管が弱くなり、痔が飛び出しやすくなるのです。

3. 血瘀(血の滞り)と血行不良

長時間座りっぱなし、便秘、または排便時の過度な力みは、肛門周辺の血液循環を悪化させます。その結果、静脈がうっ血し、いわば「詰まり」のような状態になり、時間とともに痔が形成されてしまいます。

中医学では、痔の治療は症状を緩和するだけでなく、体内のバランスを整えることを重視します。痔のような症状は、体の内部で何かが正常に機能していないという「メッセージ」として捉えられます。そのため、根本的な原因を解消することで、症状の持続的な改善を目指します。

 

食事の見直し

食事は、痔の改善と管理において非常に重要な役割を果たします。腸を潤し、排便をスムーズにするために、以下の2つの簡単なレシピを試してみてください。

1. バナナハニードリンク

材料

  • 熟したバナナ 1本
  • はちみつ 大さじ1
  • ぬるま湯 適量

作り方

バナナをつぶして、はちみつと一緒にぬるま湯に混ぜます。毎朝、1杯を飲みましょう。

2. 黒ごまのお粥

材料

  • 黒ごま 30グラム
  • もち米 50グラム

作り方

黒ごまともち米をよく洗い、一緒に鍋に入れて煮込みます。とろみが出てお粥の状態になったら完成です。これを1日1回食べましょう。

このお粥は、体を養い、エネルギーや活力を高め、全体的な健康をサポートします。

また、食事はできるだけ軽めにし、葉物野菜や食物繊維が豊富な食品(オートミール、セロリ、さつまいもなど)を積極的に取り入れることをおすすめします。

 

再発予防のポイント

痔の治療後、再発を防ぐためには、日々の生活習慣を見直すことが大切です。以下のポイントを参考にしてください。

1. 規則正しい排便習慣をつける

毎日同じ時間にトイレに行く習慣をつけましょう。排便時間は5分以内を目安にし、力みすぎないように心がけてください。また、排便中にスマートフォンを使うのは避けましょう。

2. 長時間座りっぱなしを避ける

デスクワークなどで長時間座る必要がある場合は、1時間ごとに5分間立ち上がって体を動かしましょう。また、肛門周りの筋肉を鍛える骨盤底筋トレーニングもおすすめです。肛門の筋肉を10秒間締めた後、30秒間リラックスする動作を1セットとし、1日3セット行いましょう。これにより肛門周辺の筋肉が強化されます。

3. 肛門を清潔に保つ

特に排便後は、肛門をぬるま湯で洗浄し、細菌感染を防ぎましょう。日々のケアが再発予防につながります。

4. 食事はあっさりとしたものを心がける

辛い食べ物は避け、体に優しい食事を心がけましょう。

上記で紹介した薬草の中には、聞きなれないものが含まれているかもしれませんが、多くは健康食品店やアジア系の食料品店で購入可能です。ただし、体質には個人差があるため、具体的な治療計画については、専門の医師に相談することをおすすめします。

 

この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。
 

(翻訳編集 華山律)

慢性的な精神、行動、身体の病気を対象とした統合医療医。中国医学の医師。精神科認定医。統合医療の楊研究所とアメリカ臨床鍼灸研究所の創設者兼ニューヨーク北部医療センターのCEO。『Integrative Psychiatry(統合精神医学)』、『Medicine Matters(医学の重要性)』、『Integrative Therapies for Cancer(癌の統合療法)』に貢献。また、ハーパーコリンズの『Facing East: Ancient Secrets for Beauty+Health for Modern Age(現代の美と健康のための古代養生法)』とオックスフォード大学出版局の『Clinical Acupuncture and Ancient Chinese Medicine(臨床鍼灸と古代中国医学)』の共著者。
M.D.