健康の視点
息苦しさや咳は、天気や環境が変わるときによく起こる呼吸器系のトラブルです。こうした症状は、中医学のツボ押しや食事療法を活用して体質を整えることで、喘息をうまくコントロールしたり予防したりすることができます。
中医学では、喘息を「熱喘(ねつぜん)」と「寒喘(かんぜん)」の2種類に分けます。専門家は脈の状態や症状をチェックして、どちらに当てはまるかを判断します。例えば、「熱喘」の人は黄色っぽい痰が出たり、体が熱っぽくなったり、熱が出ることが多いです。ひどい咳が続いたり、顔が赤くなったり、首が腫れることもあります。さらに、イライラしやすくなることもあります。このタイプの喘息には、体を冷やす効果のある薬や食べ物が効果的です。
一方、「寒喘」は冬の寒い時期や気温が急激に変化するタイミングに起こりやすく、白っぽい泡状の痰が特徴です。この場合、体を温める食べ物を取り入れることで改善が期待できます。
中医学では、食べ物や薬草はそれぞれ「冷性」「熱性」「温性(中間)」といった性質を持つと考えられています。体の状態や症状に合わせてこれらを使い分けるのがポイントです。
喘息の「ヒューヒュー音」はなぜ起こるの?
喘息で「ヒューヒュー」という音が聞こえるのは、気管が狭くなって息がしづらくなるからです。気管が炎症を起こすと、内壁にある細かい毛(線毛)が互いに触れ合うようになります。体はこれを「異物が入っている」と勘違いし、線毛が激しく動くことで気管にムズムズ感(かゆみ)を引き起こします。そして、咳がひどくなると、その結果として「ヒューヒュー」という音が聞こえるようになるのです。
喘息を改善する2つのツボマッサージ
中医学の「子午流注(しごるちゅう)」という考え方は、喘息治療にも効果が期待できるとされています。この理論では、人間の体に流れる「気」と「血」が12の経絡(生命エネルギーの通り道)を循環し、それぞれの経絡が1日を12に分割した時間帯に対応していると考えます。各時間帯では、その時間に対応する経絡を流れる「気」と「血」が特に活発になり、その経絡に関係する臓器も一層活動的になります。同時に、その経絡にあるツボも刺激に対して敏感になるため、鍼灸やマッサージの効果が高まるとされています。
例えば、午前3時から5時の時間帯は「肺経(はいけい)」と呼ばれる経絡に気が集中します。この時間帯は、肺に関連する不調がある人が咳をしやすくなる時間でもあります。この時間に肺経のツボを鍼やマッサージで刺激すると、喘息やその他の肺の病気を効率的に改善することができるとされています。
午前3時から5時の間は、肺の「気」が最も活発な時間帯です。この時間帯に喘息の発作が起き、すぐに医療を受けられない場合、「尺沢(しゃくたく)」というツボを押すことで、咳を和らげたり、痰を減らしたり、喘息の症状を改善することができます。
一方、午前5時から7時の間は肺の「気」が徐々に弱まり始める時間帯です。この時間帯に発作が起きた場合は、「太淵(たいえん)」というツボを押すことで、肺の「気」を補い、心臓の働きを助け、咳や痰を和らげる効果が期待できます。
これら2つのツボを、それぞれの時間帯に合わせてマッサージすることで、喘息の効果的な改善が可能です。
暑い季節に注意!
冷たい水やシャワーが喘息を引き起こす可能性
暑い季節になると、多くの人が冷たい水を飲んだり、冷水シャワーを浴びたりして涼を取ります。しかし、これが喘息の引き金になる場合があることをご存知でしょうか?
実際のケース
30年以上前のこと、ある母親が喘息の症状で苦しむ子どもを私の診察室に連れてきました。その子どもは息を吸うたびに、目を閉じ、肩を持ち上げ、お腹を突き出すような動作をしていました。
古代中国医学の名著『傷寒論(しょうかんろん)』には、「運動後に汗をかいた状態で冷たい水や氷水を飲むと喘息を引き起こす」と記録されています。この患者も、運動後によく冷たい水を飲んでいたために喘息が悪化していました。そこで私は、「麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)」を処方しました。その結果、この患者は2回分の服用で症状が改善しました。
麻杏甘石湯に含まれる主な漢方薬には、それぞれ独自の効果があります。まず、麻黄(まおう) は、風邪や気管支喘息、鼻詰まりなどの症状を改善するために使われ、気道を広げて呼吸を楽にする効果があります。次に、杏仁(きょうにん) は、咳や喘鳴(ぜんめい)、喘息、肺気腫、気管支炎などの呼吸器疾患に広く使用されており、呼吸を穏やかにする作用が特徴です。
また、甘草(かんぞう) は、咳を鎮める効果や、痰を出しやすくする作用で知られています。さらに、喉の痛みを和らげる効果もあり、気管支の細胞を保護しながら酸化や炎症ストレスを軽減する働きも持っています。
そして、石膏(せっこう) は、中医学で体の熱を冷ます作用があるとされ、抗炎症効果にも優れています。特に、熱による炎症を抑えるのに役立つほか、石膏に含まれるカルシウムイオンが免疫反応を調整し、抗炎症効果を高めることも研究によって確認されています。
蒸し梨で喘息や咳を改善
蒸し梨は喘息の改善に役立つ食べ物です。特に、氷砂糖とアーモンドを一緒に蒸した梨は、咳を和らげる効果があります。黄色い梨でも緑の梨でも効果的ですので、お好みに合わせて選んでみてください。
中国では、梨の濃縮エキスである「梨膏(なしこう)」が、咳や痰といった呼吸器疾患の治療に1,000年以上も使われてきました。また、肺の疾患に広く使われる中医学の漢方薬として「川貝母(せんばいも)」があります。これは、咳を鎮めたり、痰を取り除いたりするだけでなく、抗炎症作用、喘息を抑える効果、さらには抗酸化作用も持っています。
さらに、「百合、白きくらげ、蓮の実、なつめのスープ」は、百合、白きくらげ、蓮の実、なつめを使って作る伝統的な中華スープで、咳や喘息に悩む人の体質改善に役立つとされています。
喘息を持つ人は「冷性」の食品を避けることが大切です。具体的には、バナナ、みかん、鴨肉、冷たい飲み物やアイスクリームなどは控えましょう。また、すでに咳や喘鳴(ぜんめい)が始まっている場合には、レンブ(水リンゴ)、スイカ、マンゴー、パイナップル、メロンなども避けてください。これらを摂ると気管がさらに収縮し、喘鳴が止まらなくなる可能性があります。
冷たい空気も喘息の原因に
冷たい空気もアレルゲンの一種であり、喘息を引き起こすことがあります。私の近所に住んでいた方も、冷たい空気にアレルギーがあり、朝晩に大きな喘鳴(ぜんめい)を伴う息苦しさを訴えていました。
何世紀にもわたり、中医学では「小青龍湯(しょうせいりゅうとう)」が喘息の治療に使われてきました。古代の医学書『傷寒論(しょうかんろん)』には、「小青龍湯」から麻黄(まおう)を取り除き、杏仁(きょうにん)を加えることで喘息の効果的な治療が可能になると記録されています。私自身も臨床でこの処方を頻繁に使いますが、使用する際は必ず医師の指導のもとで行うことをお勧めします。
さらに、研究では、小青龍湯が慢性喘息モデルのマウスにおいて、気道の炎症を抑え、気道リモデリング(気道の構造変化)を防ぎ、特定の免疫調整効果を持つことが明らかになっています。
四君子湯で脾と肺を養い、喘鳴を予防
喘鳴を防ぐためには、体の抵抗力をしっかりと高めることが重要です。喘息は主に肺、脾(ひ)、腎(じん)の機能に関連していますが、特に肺が最も重要とされています。中医学の五行説では、脾は肺の「母」、腎は肺の「子」として位置づけられています。
中医学には、「虚(不足)には母を補い、実(過剰)には子を瀉す」という考え方があります。これを喘息に当てはめると、気虚(ききょ:エネルギーの不足)の場合は、肺を養うために脾を補う必要があります。一方、過剰な状態では、腎気を養うことで肺を整える必要があります。
脾と肺を補いたい場合におすすめの処方が、「穿(せん)四君子湯(しじゅんしとう)」です。この処方は効率的に脾と肺の機能を高める効果があります。ただし、この処方には沈香(じんこう)が含まれており、高価であることが特徴です。また、使用する際には、必ず専門医の指導のもとで行うことが推奨されます。
注意点:この記事で紹介した漢方薬は、健康食品店やアジア系の食料品店で購入できる場合がありますが、体質や症状は人それぞれ異なります。必ず専門の医師や漢方医に相談して、自分に合った治療法を見つけてください。
この記事で述べられている意見は著者の意見であり、必ずしもエポックタイムズの意見を反映するものではありません。エポックヘルスは、専門的な議論や友好的な討論を歓迎します。
(翻訳編集 華山律)
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