栄養の盲点

肉食だけでは危険? 意外な栄養不足が明らかに!

肉中心の食生活は、一見するとシンプルで健康的に思えるかもしれません。しかし、最新の研究で、このような食事法が重大な栄養不足を引き起こす可能性があることが明らかになりました。

カーニボアダイエット(肉や動物性食品を中心に摂取する食事法)は、肉、魚、卵や一部の乳製品を含む動物由来の食品のみを摂取する、非常に制限的な食事法です。このダイエットでは、果物、野菜、豆類、穀物、ナッツ、種子など、他の食品カテゴリーを完全に除外します。

カーニボアダイエット

カーニボアダイエットが注目される背景として、代謝疾患の増加が挙げられます。このような背景の中、従来の栄養指導に挑むような新しい食事法への関心が高まっています。医師は通常、果物や野菜、全粒穀物を含むバランスの取れた食事を推奨しますが、一部の人々は植物性食品を完全に排除するような、より制限的な食事法を選択しています。

このような流れの中、オーストラリアとニュージーランドの研究者が行った最新の研究が、栄養学の専門誌「Nutrients」に発表されました。この研究では、近年注目されているカーニボアダイエットの4つのバリエーションが分析されました。その結果、ビタミンB12や亜鉛といった一部の栄養素は推奨摂取量を上回る一方で、ビタミンB1(チアミン)、マグネシウム、ビタミンCなどの重要な栄養素が大幅に不足していることがわかりました。また、ナトリウムの摂取量が推奨量の15~20倍にも達していることが特に懸念されています。

この研究では、カーニボアダイエットの微量栄養素の構成や全体的な栄養の十分性について詳しく調査されました。研究者たちは、オーストラリアとニュージーランドの国の栄養基準(Nutrient Reference Values: NRVs)と比較し、この食事法が引き起こしうる栄養不足について重要な知見を明らかにしました。

 

4種類のカーニボアダイエットが分析される

研究者たちは、4種類のカーニボアダイエットの微量栄養素の組成と全体的な栄養の十分性を分析しました。この研究では、19~50歳の男女向けに、性別ごとに2つの食事プランを作成しました。男性と女性の両方で、1つのプランはカルシウムの摂取を目的として乳製品を含み、もう1つのプランは鉄分やビタミンAなど必須微量栄養素を補うためにレバーを取り入れました。カーニボアダイエットには明確な定義がないものの、研究者たちは、タンパク質がエネルギー摂取の25~30%を占め、残りのカロリーが主に脂肪から供給されるように設計しました。

これらの食事プランはナトリウム摂取量が懸念されるものの、参加者はカーニボアダイエットについておおむね肯定的な体験を報告しました。特に糖尿病患者は、インスリンの必要量や糖尿病治療薬の使用、体格指数、血糖値の指標が顕著に減少したと述べています。しかし、これらの結果は自己報告に基づくため、参加者による偏りがある可能性があると研究者たちは指摘しています。

 

カーニボアダイエットは特定の栄養素の推奨摂取基準を超えた

カーニボアダイエットがいくつかの栄養素について推奨摂取基準を超えていたことも明らかになりました。この研究では、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB12、セレン、リン、亜鉛、ビタミンB6、ビタミンAといった栄養素が推奨基準を上回っていました。しかし、チアミン、マグネシウム、カルシウム、鉄分、ビタミンC、ヨウ素、葉酸などが不足していました。特に食物繊維の摂取量は極めて低く、推奨摂取量の1%未満でした。また、4種類の食事プランのうち3つではカリウムが不足していました。

この研究の著者であり、インスリン抵抗や妊娠糖尿病、妊娠中の栄養に特化した専門家である登録栄養士のシルビア・ゴーデケ氏は、「これらの栄養素の不足を特定することは、どのサプリメントを摂取すべきかを判断するのに役立ちます」とエポックタイムズに語っています。また、「この食事を実践している人で特に乳製品を摂取していない場合はカルシウムを補うべきです」とも指摘しています。「一般的な見解として、カルシウムが不足すると骨からのミネラルが枯渇する可能性があります」とも付け加えています。

研究者たちは、カーニボアダイエットを実践することで、特定の微量栄養素の必要量が減少する可能性があると推測しています。例えば、カーニボアダイエットを実践している人々はビタミンCの必要量が少なくなるかもしれません。ビタミンCはアミノ酸のカルニチンを合成するために必要ですが、カルニチンは肉に豊富に含まれているため、結果としてビタミンCの必要量が減る可能性があるという考えです。しかし、これを裏付けるにはさらなる研究が必要だとしています。

また、特定の食品を追加することで栄養不足が改善されることもわかりました。例えば、乳製品を追加することで男性のカルシウム摂取量が74%、女性が84%増加しましたが、それでも1000ミリグラム/日の推奨量には届きませんでした。一方、レバーを取り入れることで、女性の鉄分摂取が推奨量を満たしました。さらに、ヨウ素入りの塩はヨウ素不足を解消しました。研究者たちは、カーニボアダイエットを実践する人々には、乳製品や内臓肉を取り入れるか、カルシウム、マグネシウム、カリウムのサプリメントを摂取することを検討するよう推奨しています。

 

メリットとデメリット:専門家の意見

 ニューヨークのマンハッタン医療オフィスに勤務する内科医および肥満医学の専門家であるパウネル・ヴカシノフ博士は、この研究には関与していませんが、カーニボアダイエットのメリットとリスクについて次のようにエポックタイムズに語っています。このダイエットの高タンパク質および高脂肪は満腹感が得られ、カロリー摂取量を減少させると説明しました。

また、加工食品や砂糖を排除することで血糖値の安定化や食欲の抑制に役立つ可能性があります。このダイエットは食事の選択肢が限られるため、多くの人々にとって食事計画が簡単になる利点もあります。

一方で、ビタミンC、E、K、葉酸、食物繊維の不足、長期間の維持の難しさ、高飽和脂肪摂取による心血管リスク、そしてファイトニュートリエント(植物栄養素)や抗酸化物質など植物由来化合物の欠如が懸念されています。ヴカシノフ博士は、カーニボアダイエットを実践する人々には定期的な血液検査を受け、必要に応じて医療提供者と相談して食事を調整することを推奨しています。

 

(翻訳編集 山本 拓)
 

がん、感染症、神経変性疾患などのトピックを取り上げ、健康と医学の分野をレポート。また、男性の骨粗鬆症のリスクに関する記事で、2020年に米国整形外科医学会が主催するMedia Orthopedic Reporting Excellenceアワードで受賞。