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髪と栄養の関係

加齢による抜け毛・白髪に変化 髪を若返らせる7つの栄養素

中年期の抜け毛や白髪はよく見られる現象で、遺伝的要因、加齢、生活習慣などが複合的に関係しています。年齢を重ねるにつれて、髪の毛が抜けたり白くなったりしますが、このような加齢による髪の変化を改善することはできるのでしょうか?
 

加齢による抜け毛の特徴とは?

加齢による脱毛は、円形脱毛症のように急に現れるわけではなく、また若いころから始まる男性型脱毛症とも異なります。主に、髪が少しずつ細くなり、本数が減り、成長スピードも遅くなります。そのため、髪の分け目が広がり、頭皮が目立ちやすくなります。

もう一つの特徴は、白髪の出現です。一般的に、こめかみや前髪の生え際から白髪が目立ち始めます。
 

髪を若返らせるための重要な栄養素7選

遺伝による髪の悩みは変えられませんが、食生活を見直すことで、後天的な髪のトラブルは改善することができます。以下の7つの栄養素は、髪にとって必要不可欠な成分であり、食事から摂取することが可能です。

1. タンパク質

髪の主成分はタンパク質です。十分なタンパク質がなければ、髪を健康に保つことができず、トラブルの原因にもなります。良質なタンパク質は、魚、鶏肉、豆類、ナッツ、種子、乳製品などに多く含まれます。牧草で育てられたオーガニックの赤身肉も、タンパク質と鉄分を多く含み、髪に良いとされています。

2. 鉄

鉄分が不足すると、髪が弱くなり抜けやすくなります。研究によると、男女問わず、脱毛に悩む人は血清中の鉄分が少ない傾向があります。鉄は、赤身肉、鶏肉、魚、豆類、全粒穀物、ナッツ、葉物野菜などに含まれています。

3. 亜鉛

亜鉛は髪の成長や修復に関わっています。牛肉、牡蠣、カボチャの種、貝類などは亜鉛を多く含む食品です。

4. ビタミンA

ビタミンAは強力な抗酸化作用を持ち、髪の毛根(毛包)へのダメージを抑えます。『サイエンス』誌に掲載された研究では、ビタミンAには毛包の幹細胞を調整する機能があり、不足すると髪が生えにくくなることが示されています。ニンジン、メロン、ホウレンソウ、パプリカ、カボチャなどがビタミンAを多く含みます。

5. ビタミンC

ビタミンCも重要な抗酸化物質であり、体内で鉄分の吸収を助ける働きがあります。柑橘類、イチゴ、トマト、ホウレンソウ、ピーマンなどが豊富な供給源です。

6. ビタミンE

ビタミンEは強力な抗酸化作用を持つだけでなく、頭皮の血行を促進する効果があり、髪の健康維持に役立ちます。

7. オメガ3脂肪酸

オメガ3は必須脂肪酸で、抗炎症・抗酸化作用を持ち、髪の弾力やツヤを保ちます。深海魚、アマニ、クルミなどに豊富に含まれています。研究では、魚油の摂取が髪の成長を促すことも報告されています。

毎食これらの栄養素を意識して取り入れることで、髪の状態が少しずつ改善されていきます。しかし、現実には毎回完璧に摂取するのは難しいこともありますし、摂取しても吸収がうまくいかない場合もあります。そういった場合は、自分の体調に合わせてサプリメントを活用するのも一つの方法です。臨床の現場では、ビタミンD、亜鉛、オメガ3は特に不足しやすい栄養素としてよく見られます。
 

ストレスで白髪に?

食生活の見直しに加えて、精神的なストレスをうまく管理することも非常に重要です。強いストレスを感じたときに、急激に白髪が増えたという経験を持つ人も少なくありません。2020年に『ネイチャー』誌に掲載された研究によると、ストレスが白髪を引き起こす仕組みは、交感神経が過剰に活性化されることにより、黒色素の幹細胞が大量に分化し、その結果、黒色素細胞が使い果たされてしまうということです。

もしかすると、私たちは世界を見る視点や捉え方を見直す必要があるのかもしれません。できるだけ物事を前向きに捉え、ポジティブな心と感情を育てていくことが大切です。それを実現するには、日々心のトレーニングを続けることが求められます。また、現代人にとってストレスの大きな原因の一つが人間関係です。だからこそ、人間関係を少しでも良くしていこうとする姿勢も大切です。さらに、適度な運動や瞑想、規則正しい生活習慣や十分な睡眠も、ストレスの軽減と白髪予防につながります。
 

髪は全身の臓器とエネルギーの反映 

中医学の理論では、髪の健康は内臓やエネルギーの状態を映し出すものとされています。中医では「髪は血の余り物」と言い、髪の栄養は血液によって供給されると考えられています。そのため、血の巡りが悪かったり、血に含まれる栄養が不足していたりすると、体は臓器の機能を守るために、髪を犠牲にして抜け毛を起こすとされます。

体内のほとんどすべての臓器は、血の生成と循環に関わっていますが、なかでも髪の成長と特に深い関係があるのが「腎」です。中医学では「腎は精を蔵し、精は血を生む」とされており、この「精」には親から受け継いだ先天的な精と、食事や呼吸から得る後天的な精があります。そしてその多くが腎に蓄えられます。腎のエネルギーである「腎気」と「腎精」は、私たちの成長・発育・生殖・老化という生命の過程すべてに関わっており、中医においてのアンチエイジングは、この腎気・腎精を守ることに他なりません。つまり、髪の状態は腎の状態を反映しているのです。

また、心・肺・肝・脾などの臓器やそのエネルギー系統も髪の健康と深く関わっています。中医学では「心は血脈を主る」とされ、血液の流れや血管の健康は心に左右されます。「肺は皮毛を主る」と言われ、肺が血中の精気を肌や毛髪に届けます。脾は消化を司るだけでなく、血の生成にも関与します。「肝は疏泄を主る」、つまり気や血の巡りを調整し、とくに頭頂部までエネルギーを届ける働きがあります。

中医学で用いられる「心肝脾肺腎」という臓器名は、現代医学の臓器そのものだけでなく、それぞれの臓器を中心とする広いエネルギーシステム全体を指しています。つまり、髪の健康とは、全身の健康状態を反映したものだといえるのです。

だからこそ、精神的ストレスや感情の乱れが健康や髪に与える影響はとても大きいのです。なぜなら、ネガティブな感情は体のエネルギーシステムに悪影響を与えるからです。中医では「怒は肝を傷め、恐は腎を痛め、憂は脾を痛め、喜は心を痛め、悲は肺を傷める」と言われます。一見すると喜びは良い感情に思えますが、実は過度な興奮もまた身体に負担をかける「負の感情」とされます。

つまり、中医学の立場から見ると、抜け毛や白髪の予防・改善とは、髪の状態を一つの指標とした、全身の調整・ケアの過程なのです。これまで紹介した方法を理解し、日常生活で実践できれば、きっと髪も体全体も、より健康な状態へと近づいていくはずです。

(翻訳 華山律)
 

慢性的な精神、行動、身体の病気を対象とした統合医療医。中国医学の医師。精神科認定医。統合医療の楊研究所とアメリカ臨床鍼灸研究所の創設者兼ニューヨーク北部医療センターのCEO。『Integrative Psychiatry(統合精神医学)』、『Medicine Matters(医学の重要性)』、『Integrative Therapies for Cancer(癌の統合療法)』に貢献。また、ハーパーコリンズの『Facing East: Ancient Secrets for Beauty+Health for Modern Age(現代の美と健康のための古代養生法)』とオックスフォード大学出版局の『Clinical Acupuncture and Ancient Chinese Medicine(臨床鍼灸と古代中国医学)』の共著者。
何蔚