脂肪肝を改善する鍵は腸内フローラに! 避けるべき2つの食習慣

脂肪肝は世界的な健康問題となっており、肝硬変や肝がんの主な原因であり、他の多くのがん患者にも見られます。しかし、脂肪肝は症状がほとんどなく、多くの患者が自分が病気であることを認識していません。不健康な食生活が脂肪肝をどのように引き起こすのか、また、どのような食事が改善につながるのかをみていきましょう。
 

砂糖・脂肪の多い食事が、
脂肪肝を促す細菌を活性化させる

ミズーリ大学コロンビア校の最新の研究では、食事が腸内の特定の細菌構成を変え、肝臓の脂肪蓄積につながる代謝プロセスを引き起こす様子が明らかにされました。この研究結果は2023年1月に「ネイチャー」誌で発表しました。

脂肪肝は、約24%のアメリカ成人に影響を及ぼしており、子供の数も増加しています。脂肪肝は遺伝や消化器系の病気とも関連がありますが、特にアメリカの標準的な食生活が明確なリスク要因で、混乱の原因となっています。高脂肪食が健康に良いのか悪いのか、どの種類の脂肪が避けるべきなのか、そして、すべての糖分が有害なのか、果物や蜂蜜に含まれる果糖は安全なのかという点です。

この研究ではマウスに、砂糖・脂肪ともに多い西洋風食事を与えました。研究者たちは、肝臓の炎症や線維化に関係する代謝物 2-オレオイルグリセロールの生成に関与する微生物として、Blautia producta (B. producta) と呼ばれる微生物を特定することに成功しました。この物質は肝臓の炎症や線維化と関連があるとされ、脂肪肝を持つ患者の肝臓にもその蓄積が確認されています。

「食物と腸内フローラがどのように相互作用して、肝疾患の発症に関連する代謝物を生成するのか、私たちはようやく理解し始めたところです」と、研究を共同で主導している南京医科大学の李広福副教授は科学専門メディア「サイエンス・デイリー」に寄稿した記事で述べています。

李氏は、「これまで特定の細菌や代謝物、そしてそれらが関わる潜在的なメカニズムは十分には理解されていませんでしたが、この研究によってそれらの具体的なメカニズムが明らかになりつつあります」と話しています。

腸内微生物群は、消化管に生息し、私たちの体の機能を支える多種多様な微生物の集まりです。これらは特に数千種類の細菌を含み、腸内フローラまたはマイクロバイオータと呼ばれ、人間の健康にとってまだ十分に研究されていない領域です。これらの微生物が生成する代謝物は、消化や血液循環を含む様々なプロセスに関わるアミノ酸、脂質、糖分などを含みます。

最新の研究によると、砂糖と脂肪の多い食事が原因で発生する特定の細菌が、脂肪肝を引き起こす可能性がある(Shutterstock)

子供もこの病気にかかるリスクがあり、非アルコール性脂肪肝は健康にとって脅威です。

肝臓は消化に不可欠な器官で、門脈(肝臓に入って行く静脈)を通じて血液や食事からの微量栄養素や毒素を取り込みます。これらの毒素は血液から除去され、尿や便として体外に排出されます。血液は再び循環系に戻り、最終的に心臓へと運ばれます。門脈、小腸、肝臓は「腸肝軸」と呼ばれます。

肝臓は体内で最も大きな臓器で、約2.3キログラムの重さがあります。多くの複雑なプロセスを担い、体全体に影響を及ぼします。余分な脂肪が蓄積された肝臓は炎症を起こし、損傷することがあり、これが非アルコール性脂肪性肝炎へと進行することがあります。これが脂肪肝の病状が悪化したものです。

アメリカ肝臓基金会のデータによれば、900~1500万人のアメリカ人がこの進行した脂肪肝疾患に罹患しており、肝臓に傷や硬変を引き起こし、肝がんのリスクを高めます。非アルコール性脂肪肝炎の患者数は、2015~2030年にかけて63%増加すると予測されています。

非アルコール性脂肪肝症のリスク要因には、以下のものがあります。

• 肥満
• インスリン抵抗性または2型糖尿病
• 高コレステロールまたは高トリグリセライド
• 高齢
• 代謝症候群

脂肪肝は新しい健康リスクとして認識されており、アメリカの若者にも影響を与えています。アメリカ肝臓基金のデータによると、この疾患は子供の肝疾患の中で最も一般的です。子供の肥満が増えるにつれ、この20年でこの疾患は2倍以上に増加しました。子供の5%から10%が脂肪肝を患っているとされています。

「脂肪肝は世界的な健康問題です」と、肝がんと肝臓手術を専門に研究するKevin Staveley-O’Carroll博士は記者会見で述べています。「これは肝がんや肝硬変の主な原因であり、私が診た多くの他のがん患者も脂肪肝を抱えていることが多く、本人たちはその事実を知らないことが多いのです。通常、これが原因で治療可能な手術を受ける機会を逃してしまいます」

子供の肥満が増えるにつれて、脂肪肝になる子供も増加している(Shutterstock)

また、2種類の腸内細菌が脂肪肝を引き起こす可能性があるとされ、抗生物質の使用もリスクを高めます。

脂肪肝は自体はなかなか発見されにくいかもしれませんが、腸内フローラの変化がその手がかりとなることがあります。B. productaがマウスの肝臓炎症と線維化を引き起こすことがわかっているほか、特定の細菌株が肝臓の問題や肥満と関連していることが分かっています。

肥満は、主に厚壁菌門(こうへききんもん)とバクテロイデス門という二つの細菌群と関連しています。これらは便の検査で見られる健康状態を示す生物マーカーとして知られています。また、乳酸菌や疣状(いぼ)微生物などの微生物群に基づく他の生物マーカーも、肝臓の早期線維化を示唆します。

研究チームは、彼らの新しい発見が、特定の食事や微生物による治療法の開発に役立つと述べています。実験の一環として、マウスには抗生物質の混合物を投与しました。この治療により、肝臓の炎症と脂肪が減少し、脂肪肝のリスクも低減することがわかりました。

しかし、人間にこの治療法を適用すると、合併症が生じる恐れがあります。医師の指導により、抗生物質の使用を控えるよう求められているためです。抗生物質の過剰使用は、微生物のバランスを崩し、病原菌が腸内フローラを上回り、病気を引き起こす原因となります。脂肪肝の不均衡の主要な原因とも考えられています。

ロガース大学のマーティン・ブレーザー教授は、彼の著書「失われた微生物」で抗生物質の過剰使用に警鐘を鳴らしています。彼は医学、病理学、実験室医学の教授としても活躍しています。

「強力な抗生物質は有益な細菌に影響を及ぼす可能性があります」と彼は2014年の著書で指摘しています。「それらの変化はすべて何らかの代償を伴います。私たちは既に多くを変えてしまい、その損失はすでに発生しています。しかし、その全体を理解したばかりで、まだまだこれからです。問題はさらに深刻化するでしょう」

抗生物質の使用を脂肪肝の原因として現時点で断定するのは時期尚早かもしれませんが、マウスとマイクロバイオームの研究には限界があることに注意することが重要です。

「Nutrition Facts」の創設者であるマイケル・グレガー博士は「大紀元時報」に対し、「実験用のげっ歯類(ネズミなど)を用いた研究結果を人間に当てはめることには本質的に難しさがある」と述べています。

それでも、この研究方法が主流である理由は、マウスと人間の腸内マイクロバイオームが約90%が厚壁菌とバクテロイデス属で構成されているためです。「Microbiome」誌の2021年の論文では、この研究手法の複雑さと利点について検討しています。論文では、実験室での精密な技術とプロセスが、げっ歯類と人間の比較をより信頼性のあるものにしていると指摘しています。

論文は次のように結論づけています。「限界はあるものの、マウスモデルは人間の病気を研究する上で貴重で、実用的で、代替不可能なツールであり、どの動物モデルも人間の病気を模倣する上で100%理想的ではない」
 

植物ベースの食事で脂肪肝を予防

アメリカの典型的な食生活が問われる場合、この新しい研究は重要となるでしょう。病気の背後にあるメカニズムが明らかになり、飽和脂質と糖分の多い食事を避けるべきだということが示されています。

脂肪肝はその問題点から注目されていますが、予防は可能です。治療されない肝硬変は、最終的には肝不全や肝がんを引き起こす可能性があります。しかし、良い知らせは、脂肪肝は回復が可能で病気の初期の警告サインであること、そして肝臓は自己修復する力をある程度持っていることです。

健康的な体重を保つことに加えて、クリーブランドクリニックは地中海式の食事を推奨しています。この食事法は、野菜、果物、健康的な脂肪が豊富で、魚や家禽(鶏肉、アヒル肉など)も適度に含まれています。

野菜、果物、健康的な脂肪を豊富に含む食事は、肝臓の健康にとても良いとされている(Shutterstock)

健康的なライフスタイルの専門家、マイケル・グレガー博士は、2021年の脂肪肝を避けるためのポッドキャストで、食生活を変えることが脂肪肝に迅速な効果をもたらすと述べました。

「毎日の炭酸飲料1缶が脂肪肝のリスクを45%高め、毎日14個のチキンナゲットを食べる人は、7個以下しか食べない人と比べ脂肪肝になるリスクが3倍になる」と彼は指摘しました。

グレガー博士は、植物ベースの食事が健康に非常に良いと考えています。それは脂肪肝のリスクを減らすだけでなく、心臓病のリスクも同時に減らすことができます。「心臓病は脂肪肝患者にとって最も一般的な死因です」

「実際、ランダム化比較試験によって、健康的な植物ベースの食事とライフスタイルが心臓病を改善できることが証明されています。薬やステント手術(内腔を保持するための小さい器具の挿入)せずに動脈を健康に保つことが可能です」と彼は述べています。

さらにグレッグ氏は、「心血管疾患が悪化して死亡に至らなければ、脂肪肝の人は肝硬変を発症するリスクがある」とも指摘しています。

(翻訳編集 井田千景)

イリノイ大学スプリングフィールド校で広報報道の修士号を取得。調査報道と健康報道でいくつかの賞を受賞。現在は大紀元の記者として主にマイクロバイオーム、新しい治療法、統合的な健康についてレポート。