無視されがちな子宮頸がんの根本原因

HPVの背後にいる子宮頸がんの真犯人とは(下)

同じシリーズ

HPVワクチンの不確実な予防効果

HPVワクチンの有効性が主張されていますが、正確な予防効果は不明です。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)は、「98%以上の接種者が、一連のワクチン接種を終えてから1ヵ月後に、それぞれのワクチンに含まれるHPV型に対する抗体反応を起こす」と述べていますが、この数字に惑わされないでください。検出されたこれらの抗体は、子宮頸部をHPV感染から直接保護しません。98%という割合をそのまま臨床的な予防率に置き換えることはできません。

私たちの免疫系は、大きく自然免疫と適応免疫に分けられます。自然免疫は、さまざまな病原体に対し、その遺伝子コードや系統、変異株に関係なく戦います。

人の筋肉に注射されたHPVワクチンは、主に適応免疫、より具体的には、T細胞とB細胞、およびB細胞から産生される抗体(免疫グロブリンとも呼ばれる)を刺激します。免疫グロブリンには、効果を発揮する場所によってさまざまな種類があります。

HPVの場合、私たちの自然免疫、特に粘膜免疫が子宮頸がんの予防に大きな役割を果たしています。

HPVワクチンが入った注射器の箱。(Fadhli Adnan/Shutterstock)

HPVワクチンによって生成された免疫グロブリンG(IgG)は血液中を循環します。しかし、HPVワクチンによって誘導されたIgGは子宮頸部の粘膜領域に到達できず、HPVとうまく結合しません。HPVは主に粘膜領域に留まり、子宮頸がんは一般的に子宮頸部の移行帯で発生します。

分泌型抗体である免疫グロブリンA(IgA)は、ウイルスを排除するために粘膜領域で重要な役割を果たします。子宮頸部にIgAやIgGが存在することを示す研究はいくつかあっても、長期的に子宮頸部の局所免疫がHPV感染や子宮頸がんをいかに予防するかは不明なままです。

HPVワクチンは子宮頸がん予防に有効で、その有効性は確かなデータに基づいていると主張する人は多いですが、それらのデータは批判の余地を残しており、疑わしいものです。

ガーダシルワクチンの注射器の箱。(Ottfried Schreiter/imageBROKER/Shutterstock)

まず第一に、HPV感染から子宮頸がん発症までのリードタイムが長い(通常20年)ため、HPVワクチンの長期にわたるランダム化比較試験を実施できるかどうかが大きな課題です。HPVワクチンに関する主張は、通常、観察研究や登録研究に基づいています。

観察研究や登録データは、子宮頸がんや前がん病変に対するHPVワクチンの予防効果を支持するエビデンスを示しています。しかし、これらの研究結果を解釈する際には、先に述べた主要な危険因子に関するデータが収集・分析されているかどうか、そして異なる研究グループ間でバランスが取れているかどうかを考慮することが重要です。

例えば、New England Journal of Medicine誌(NEJM)に掲載された研究では、10歳から30歳までの約170万人の少女と女性を対象にガーダシル4価ワクチンの予防効果を調べるために、スウェーデンの登録データを分析しました。参加者は11年間追跡されました。

この研究では、ワクチン接種群と未接種群間の主な危険因子(初性交渉または初妊娠時の年齢、性的パートナーの数、経口避妊薬の使用、喫煙、一般的な健康状態など)の評価は不十分でした。

NEJMの研究によると、HPVワクチンによる全体的な予防率は約60%(若年女児では最大88%)と推定されています。しかし、子宮頸がんのリスクに関連する主な因子が含まれ、徹底的に分析されていれば、この研究の結論は無効になっていた可能性が高いです。

初性交渉時の年齢や初妊娠時の年齢などの因子を考慮しようとした研究もあるでしょう。しかし、長期にわたるHPVワクチンの研究期間中に、研究対象者の性的パートナーの数をモニタリング・コントロールすることは困難です。今のところ、こういったことを試験デザインにうまく組み込んだ研究が不足していることにも注目が必要です。

自然免疫は依然として不可欠

HPVワクチンを接種しなかったらどうなるだろうか、予防がないままだろうか、と思う人もいるかもしれません。あるいは、HPVワクチン接種を受けなかったとして、子宮頸がんから身を守るために子供にどのような助言をすればいいのか、と思うかもしれません。

HPVワクチン接種を受ける受けないにかかわらず、HPVの持続感染から身を守るには自然免疫が不可欠です。

HPV感染症の80〜90%の症例は通常、2年以内に自然治癒します。これは、がんにならないために私たちの自然免疫が鍵であることを示す強力な証拠です。

具体的には、ウイルスに対する自然免疫は主に粘膜免疫に存在します。

1918年のスペイン風邪の大流行時、ボストンとサンフランシスコの2つの医師グループが、健康なボランティアを対象としたヒトチャレンジ試験に別々に取り組みました。インフルエンザ患者の粘液や体液をボランティアの目や鼻、のどに垂らすなど、さまざまな強引な方法を用いたにもかかわらず、参加者は誰もインフルエンザウイルスに感染しませんでした。

1918年のスペイン風邪:1918年、マサチューセッツ州ローレンスでスペイン風邪が流行した際、屋外の新鮮な空気を吸って治療を受ける患者と看護師。(Hulton Archive/Getty Images)

新型コロナの大流行時にも、健康なボランティアを対象としたヒトチャレンジ試験が実施されました。参加者はSARS-CoV-2ウイルスを鼻腔内に投与されましたが、驚くべきことに53%だけが軽症状の感染で、残りの半数は感染しませんでした。

(右)アトランタの疾病対策予防センターで撮影された新型コロナウイルスの顕微鏡写真。 (CDC/Getty Images)

自然免疫はウイルスと闘うだけでなく、がんとも闘います。

私たちの体にはがん細胞と闘うための防御システムが備わっており、重要なのは私たちの自然免疫を最適化することです。そうすれば、強力な免疫系ががん細胞の兆候を速やかに発見・監視できます。

がんの監視に自然免疫の役割が不可欠であることは、十分に立証されています。

2019年9月時点で、がん治療における自然免疫を標的とした臨床プログラムには、4つの作用様式があります。腫瘍制御のために抗菌免疫を活用する薬剤と、自然免疫応答を誘導または増幅する薬剤と、自然免疫のエフェクター応答を促進する薬剤と、腫瘍床での免疫抑制を緩和する薬剤です。

腫瘍の検出は自然免疫細胞の活性化を誘導し、抗体エフェクター機能と腫瘍細胞の破壊を促進します。直接的な殺腫瘍効果に加えて、腫瘍特異的T細胞のプライミングと増殖、腫瘍部位への浸潤に関与することで、腫瘍活性化自然免疫細胞は、T細胞の生成とがん細胞に対する活性のすべての段階に関与します。

がんとの闘いは、免疫系を強化できるかどうか、そして既知の危険因子のコントロールに集中し続けられるかどうかにかかっています。

私たちにできる最も重要なことは、ホリスティックなアプローチを採用することであり、そうすれば副作用に悩まされることもありません。健康的な食事、質の高い睡眠と健康的な体重の維持、運動、マインドフルネス、瞑想、ストレス軽減法などは、いずれも免疫力の強化に役立ちます。

ウイルスを標的にするだけの戦略よりも、自然免疫力の強化に注力する方が賢明です。私たちの免疫力はダイナミックかつ臨機応変で、様々なバリエーションのウイルスと闘うことができるからです。特に、HPVワクチン接種後もウイルスが変化し続ける場合はなおさらです。

私たちの選択が重要

HPVワクチンには否定しようのない安全上のリスクがあります。最も難しい問題のひとつは、これらのリスクがベネフィットを上回るかどうかを判断することです。

第3章で述べたように、HPVワクチンのいわゆるリスク・ベネフィット分析で、対照群に傷害の原因となることが証明されたアルミニウムなどの毒素を含むプラセボを投与されたものは有効ではありません。

HPVワクチンは子宮頸がんを予防する黄金の盾ではありません。その予防効果に関する主張は非常に疑わしいものであると同時に、その害は文書で十分に立証されています。

さらに、検診に用いられるパップスメア検査は、HPVワクチン接種が導入される以前から、子宮頸がんによる死亡率の減少に貢献してきました。子宮頸がん検診は、前がん病変を取り除く二次予防の手段として定着しています。

いずれにせよ、いかに免疫力を強化し、いかに子宮頸部の健康に多大な影響を及ぼすハイリスクな行動を避けるかに、よくよく注意を向けましょう。性に対して責任ある態度を保つことは、自分自身を守る効果的でナチュラルな方法です。

誰しもが、免疫力という神聖な贈り物を自然から授かっています。リスクのある行動をコントロールし、自然免疫を強化することで、HPV感染や子宮頸がんから身を守るためのよりホリスティックかつダイナミックで妥協のないアプローチを、自信を持って受け入れることができるのです。

エポックタイムズのシニアメディカルコラムニスト。中国の北京大学で感染症を専攻し、医学博士と感染症学の博士号を取得。2010年から2017年まで、スイスの製薬大手ノバルティスファーマで上級医科学専門家および医薬品安全性監視のトップを務めた。その間4度の企業賞を受賞している。ウイルス学、免疫学、腫瘍学、神経学、眼科学での前臨床研究の経験を持ち、感染症や内科での臨床経験を持つ。