2024年11月22日、アメリカの次期大統領トランプ氏は、国際経済の専門家であるスコット・ベッセント氏を新たな財務長官に指名したことを発表した。この指名は、アメリカの経済、規制、国際問題に大きな影響を与えるだろう。ベッセント氏はトランプ政権の「アメリカ・ファースト」の支持者としても知られており、新しい役職でアメリカ経済の黄金時代を切り開くために、その専門知識を生かす予定だ。

トランプ氏はTruth Socialで、「スコット・ベッセントを米国第79代財務長官に指名できることを嬉しく思う」と述べた。

「スコットは世界で最も重要な国際投資家の一人であり、地政学的・経済的戦略家として広く尊敬されている」とトランプ氏は語った。「スコットは長年にわたり『アメリカ・ファースト』の強力な支持者であった。私たちの偉大な国家の建国250周年を前に、彼は私と共にアメリカの新たな黄金時代を切り開くだろう」

ウォール街はトランプ氏の財務長官人事に注目しており、トランプ氏が関税を利用して世界貿易を再構築し、一期目で実施した減税措置を延長・拡大する可能性を示唆していた。

数日間の検討を経て、トランプ氏は候補者リストからベッセント氏を選んだ。情報筋によると、同氏は数日間フロリダ州のマーアーラゴでトランプ氏に経済アドバイスを提供しており、これが彼の選出に有利に働いた可能性がある。

他の候補者には、アポロ・グローバル・マネジメントのマーク・ローワンCEOやケビン・ウォーシュ元FRB理事がいた。投資家のジョン・ポールソン氏も主要候補であったが、後に辞退し、ウォール街のベテランであるハワード・ルトニック氏が商務長官に任命された。

この任命について、ベッセント氏はすぐにはコメントしなかったが、最近のウォール・ストリート・ジャーナルへの寄稿で、銀行融資とエネルギー生産を刺激するための税制改革と規制緩和を提唱していることが示された。

彼は、トランプ氏の大統領選勝利後に市場が急騰したのは、投資家が「より高い成長、より低いボラティリティとインフレ、全てのアメリカ人のための経済活性化」を期待していることを示していると述べた。

ベッセント氏の経済戦略　関税とアメリカ・ファースト

オックスフォード・エコノミクスのライアン・スウィート氏はロイターに対し、ベッセント氏が穏健な関税を支持してきたと述べた。もしベッセント氏が財務長官に就任すれば、トランプ氏の高額関税が市場に与える影響を和らげる可能性がある。

トランプ氏は選挙運動中に、全ての中国製品に60%の関税を、他の全ての米国輸入品には最大20%の関税を課すことを提案した。

ベッセント氏は8月にブルームバーグに対し、関税は「一回限りの価格調整」であり、「インフレを引き起こさない」と考えており、第2期トランプ政権下で課される関税は主に中国を対象とするだろうと述べた。

「私は、関税はある意味で制裁ではない経済制裁だと考えている。中国の経済政策が気に入らず、過剰生産が市場に溢れるのを見たくないのであれば、彼らに制裁を課すか、関税を課すことができる。これは通貨操作への対応でもある」と彼は述べた。

今週、ベッセント氏はフォックスニュースのコラムで、関税が「大統領の外交政策目標を達成するための有用なツール」であると述べた。具体的には、同盟国に自国の防衛にもっと支出させたり、外国市場を米国製品に開放したり、不法移民の終結やフェンタニル密売の阻止における協力を確保したり、軍事侵略を抑制したりするために、関税が重要な役割を果たすとしている。また、彼はCNBCに対して「段階的に層別化された関税の導入を提案する」と述べた。

アメリカ経済への影響：赤字削減と税政策

財務長官として、ベッセント氏はアメリカ最高位の経済官僚となり、世界最大の経済における財政、経済、金融の問題を管理する責任を担う。これには、税金の徴収、国家の支払い、28兆6千億ドル（約4400兆円）規模の国債市場の管理、金融規制の監督、市場危機の処理と予防が含まれる。さらに、財務長官はアメリカの金融制裁政策を担当し、アメリカが主導する国際通貨基金（IMF）や世界銀行、その他の国際金融機関を監督し、外国からの対米投資に対する国家安全保障審査を行う。

ベッセント氏は、膨張し続ける連邦赤字の解決などさまざまな課題に直面する。来年に期限が切れる減税政策をトランプ氏が延長または拡大する計画を持っているため、何も対策を講じなければ、連邦赤字は今後10年間で約6兆ドルから10兆ドル（約930兆円から1600兆円）増加すると予想されている。

ベッセント氏は、トランプ氏のアジェンダが強力な経済成長をもたらし、収入を増加させ、市場の信頼を強化すると考えているが、巨額の債務を管理することは依然として課題である。彼は支出削減と税制改革を呼びかけ、減税政策の延長によるコスト増を相殺しようとしている。

「これは共和党議会との交渉になるだろう」とベッセント氏は11月6日にCNBCに語った。「私はすでに委員会の委員長になる予定の多くの共和党議員たちと話をしている」

彼はメディアのインタビューで、国家債務問題を解決する必要性についてしばしば触れている。「債務と赤字が今日の大きな問題になると思う。アメリカ人はこれを懸念していると思う」と彼は述べ、国の赤字を減らすことが最終的に消費者価格の低下につながると考えている。

ベッセント氏は重要な交渉業務を担う

ベッセント氏はイエレン氏の役割を引き継ぎ、G7がウクライナに対するロシアの侵略に対抗するための経済支援を提供し、モスクワへの制裁を強化することを主導する。しかし、トランプ氏が戦争の迅速な終結とウクライナへの米国の財政支援の終了を望んでいるため、ベッセント氏の対応は不明である。財務長官は連邦政府と米連邦準備制度理事会（FRB）の主要なコミュニケーターでもあり、過去にはイエレン氏やトランプ氏の一期目のムニューシン前財務長官が通常、週に一度FRB議長と朝食や昼食を共にしていた。