18世紀のヨーロッパでは、医師が時折、チョコレートを憂鬱症の治療に処方する医薬品として使用していました。今日では、ダークチョコレートに含まれる化合物が腸内細菌を活性化し、気分を高揚させる神経伝達物質の生成を助けることが科学的に証明されており、その甘美な一口がさらに満足感を高めることが裏付けられています。
チョコレートは甘くロマンチックなごちそう以上のものとして捉えられるかもしれません。健康、幸福、そして愛情の贈り物となる可能性もあります。
腸内環境の改善
私たちが口にする食べ物、特にプレバイオティクス(有益なバクテリアの栄養源となる)やプロバイオティクス(有益な生きたバクテリアを導入する)を豊富に含む食品は、私たちの腸内細菌叢に多大な影響を与える可能性があると、公認栄養士のシャンテル・ヴァン・ダー・メルヴェ(Chantelle van der Merwe)氏は本紙に語りました。
ダークチョコレートには、ビフィズス菌や乳酸菌などの有益な細菌に栄養を与え、クロストリジウム属などの有害な細菌を減少させるプレバイオティクスとして作用するポリフェノールや植物化合物が含まれています。
「つまり、ダークチョコレートは、炎症を軽減する微生物叢環境を作り出すことで、腸の健康を促進する可能性があるのです」と、メルヴェ氏は語りました。
健康な微生物叢は、腸のバリアを強化し、免疫反応を調整することで、炎症全体を軽減します。
腸と気分
2022年の研究では、腸と脳の関係に焦点を当て、ダークチョコレートが気分にどのような影響を与えるかを調査しました。研究者は、カカオ含有量85%と70%のダークチョコレート2種類を3週間の試験で試しました。1つのグループの参加者は85%のチョコレートを30グラム食べ、もう一方のグループは70%のチョコレートを食べるか、チョコレートを食べない人に分かれました。
その結果、85%のダークチョコレートを毎日食べたグループでは、ネガティブな気分が大幅に軽減されたのに対し、70%のダークチョコレートでは効果が見られませんでした。 また、便サンプルから、腸内微生物の多様性が改善されたのは85%のダークチョコレートを摂取したグループのみであることが分かりました。 研究者らは、85%のダークチョコレートには、腸と脳をつなぐ神経経路を通じて気分に影響を与えるプレバイオティクス効果があることを発見しました。
腸-脳相関は、気分障害の治療法として可能性があるものとして研究されています。例えば、腸内細菌を持たない無菌マウスは、不安やうつ病の兆候が少ないことが分かっています。これらのマウスにうつ病の人から腸内細菌を移植すると、同様の行動を示すようになり、腸内微生物叢が気分に影響を与えることが示されました。
ダークチョコレートがプレバイオティクスとして作用することで、腸内の有益な細菌の成長をサポートします。これにより、腸-脳相関を通じて気分が改善される可能性があります。
研究の著者によると、他の動物実験では、カカオポリフェノールには抗酸化作用と抗炎症作用があり、うつ症状の軽減にさらに役立つことが示されています。また、いくつかのヒトを対象とした研究では、特にストレスや不安が引き金となった場合に、カカオが気分を改善できる可能性を示唆しています。
適切な量と種類
「最大限の効果を得るには、ローカカオ製品または最小限に加工されたダークチョコレートが理想的です」とメルヴェ氏は言います。
カカオの含有率が高いほど、ポリフェノールも多く含まれ、抗酸化作用も強くなります。これらの抗酸化物質は、脳細胞に害を与え、気分障害の原因となる酸化ストレスを軽減する働きがあります。
登録栄養士のキャロライン・スージー(Caroline Susie)氏は、本紙の取材に対し、1日あたり30~40グラム(2枚弱)のダークチョコレートが目安だと語りました。
もっとダークチョコレートを日々の生活に取り入れましょう
説得する必要はないかもしれませんが、スージーさんは、体に良いものを十分に摂取するためのヒントをいくつか教えてくれました。
- バナナ、ナッツバター、アーモンドミルクを混ぜて、クリーミーでチョコレート風味のスムージーを作ります。
- ココアをオートミールに混ぜると、砂糖を加えなくても濃厚なチョコレート風味が楽しめます。
- お好みのミルク、ココア、少量のシナモンを使って、体を温め抗酸化物質たっぷりのホットチョコレートを作りましょう。
- ヨーグルトやチアプディング(チアシードを液体に浸して冷蔵庫で数時間または一晩置いたデザート)にココアをトッピングすると、おやつに抗酸化物質を簡単にプラスできます。
- コーヒーやラテにココアを振りかけると、朝の一杯がチョコレート風味に変わります。
- ココアをエネルギーボールやプロテインバーに混ぜると、ナッツ、デーツ、シード類と組み合わせて、満足感のある栄養価の高いおやつになります。
アボカドダークチョコレートムースのレシピ
もう一つの選択肢として、メルヴェ氏の濃厚でクリーミーなアボカドチョコレートムースのレシピをお試しください。
「チョコレートとアボカドの組み合わせは、まるで奇妙な食品実験の失敗作のように聞こえるかもしれません。でも、一口食べれば、デザートについて自分が知っていると思っていたことがすべて疑わしく思えるでしょう。ぜひ試してみてください。後悔するのは、2倍の分量を作らなかったことだけだとお約束します」とメルヴェ氏は説明します。
健康的な脂肪分、ポリフェノール、抗酸化物質がたっぷり含まれたこのレシピは、腸内環境を整え、気分を高めるのに最適なデザートです。カカオのポリフェノールがプレバイオティクスとして作用するほか、アボカドは脳の働きを高める脂肪分を含んでいます。
材料(2~3人分)
- 熟したアボカド 1個
- 無糖ココアパウダー 1/4カップ(約15g)
- 85%以上のダークチョコレート(溶かしたもの) 1/4カップ(約40g)
- 無糖アーモンドミルクまたは他のミルク 1/4カップ(約60ml)
- メープルシロップまたは蜂蜜 大さじ2~3
- バニラエッセンス 小さじ1/2
- シナモン 小さじ1/4
- シーソルト 少々
トッピング
トッピングは任意ですが、抗酸化作用を高めるために強くお勧めします。
- ブルーベリー、ラズベリー、イチゴなどの新鮮なベリー類
- 砕いたアーモンド、クルミ、ピスタチオ
- カカオニブ(カカオ豆を細かく砕いたもの)
食材効果
- アボカド:健康的な脂肪分とビタミンEを豊富に含み、肌や健康に良い効果を与えます。
- 無糖ココアパウダー:ポリフェノールが豊富で、抗酸化作用があり、免疫力をサポートします。
- ダークチョコレート:フラボノイドを多く含み、血圧の改善や心臓の健康をサポートします。
- アーモンドミルク:低カロリーで栄養豊富、特にビタミンEが多く、肌に良い影響を与えます。
- メープルシロップまたは蜂蜜:天然の甘味料で、精製された砂糖に比べて栄養価が高く、エネルギー源として優れています。
- バニラエッセンス:香りを引き立て、心地よい風味を加えるとともに、リラックス効果も期待できます。
- シナモン:抗酸化作用があり、血糖値を安定させる効果が期待できます。
- シーソルト:風味を引き立てるだけでなく、体内の水分バランスを整える役割も果たします。
作り方
- 材料を混ぜ合わせ、ブレンドします:フードプロセッサーまたはミキサーで、すべての材料を滑らかでクリーミーになるまで混ぜ合わせます。必要に応じて側面をこそぎ落とします。
- 固さを調整する:より滑らかな食感にするには、必要に応じて牛乳を足します。
- 冷やす:器に分けて、風味を高めるために少なくとも30分間冷蔵庫で冷やします。
- 盛り付けと提供:新鮮なベリー、ナッツ、カカオニブをトッピングすると、抗酸化作用がさらに高まります。
「甘いものが食べたいという欲求を満たしながら、身体に栄養を与える贅沢なデザートを罪悪感なくお楽しみください」とメルヴェ氏は語っています。
(翻訳編集 呉安誠)
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