【ニュースレターが届かない場合】無料会員の方でニュースレターが届いていないというケースが一部で発生しております。
届いていない方は、ニュースレター配信の再登録を致しますので、お手数ですがこちらのリンクからご連絡ください。

自閉症の症状と改善に役立つ6つの方法 治療の可能性は?

自閉症は通常、幼少期に発症します。では、症状はどの様なものなのでしょか? 治療法はあるのでしょうか? 完治することはできるのでしょうか? 実際のところ、自閉症の子どもを支援・治療する過程では、親はまず自分の子どもが他の子供と違うことを認識し、受け入れなければなりません。

自閉症の一般的な症状と特徴

ある日、2歳の子どもを連れた母親が初めて診察に訪れました。子どもは診察室に入るなり、見慣れない環境と2人の医療スタッフを見て、大声で泣き出しました。

母親は「この子は人見知りなんです」と言い、抱っこして連れてこようとしましたが、子どもは暴れて母親の顔を引っかいてしまいました。お菓子やシール、おもちゃを見せても興味を示しませんでした。そこで私は、母親に子どもを安全な場所に座らせるよう勧め、小さな椅子を渡しました。その椅子には開閉できるフタがついていて、子どもはすぐに落ち着き、何度もフタを開けたり閉めたりし始めました。その様子を見ながら、私は母親に質問しました。

「お子さんは話しますか?」母親は「以前は時々『パパ』『ママ』と言っていましたが、最近はほとんど話さなくなりました。理由はわかりません」と答えました。「指示を理解できますか? 名前を呼ぶと反応しますか? 『これを取って』と言うと、持ってきてくれますか?」母親は「時々わかっているようですが、ほとんど反応がありません」と言いました。

「ほかの子どもと遊ぶのは好きですか?」

「家では一人っ子ですし、コロナ禍であまり外に連れて行けませんでした」と母親は答えました。

「では、ご両親とは遊びますか? 例えば、遊んでいるときに抱っこを求めることはありますか?」

「それはあまりありません。いつも一人で遊んでいて、あまり人と関わりません」と母親は言いました。

ちょうどその時、子どもが突然大声を出し、再び椅子のフタを開け閉めすることに夢中になりました。私たちの存在には全く関心を示さず、一般的なコミュニケーション力が不足しているように見えました。これは言葉のやりとりだけでなく、ボディランゲージなどの非言語的なコミュニケーションにも影響を及ぼします。

身体的な対人スキルには、人と目を合わせること、相手に微笑みかけること、名前を呼ばれたときに反応すること、相手の言葉や行動に注意を向けること、何かをするときに相手のことを思い出すことなどが含まれます。通常、子どもは遊んでいる途中でも、ふと親のもとに駆け寄って抱っこを求めることがあります。しかし、自閉症の子どもはこうした行動が少なく、親と積極的に関わろうとしません。言葉の発達も遅れがちで、時には発達が止まったりする傾向があります。

また、一般的に子どもは周囲の人の行動を真似しながら成長しますが、自閉症の子どもは手を振ったり、電話をかけたり、拍手をしたりするなど、大人の行動を学ぶことはほとんどありません。さらに、通常の子どもは興味のあるものを親に見せたり共有したりしますが、自閉症の子どもはそうした行動をとらず、突然叫ぶなど、場の状況にそぐわない行動をすることがあります。彼らは一人で遊ぶのを好み、最初のうちは親も、子どもが引っ込み思案で独立心が強いからだと思うかもしれません。

母親にこれらの特徴を説明すると、「でも、この子は私の言葉を真似して話します。例えば、私が『果物』と言うと、同じように『果物』と言いますよ」と話しました。

確かに、多くの自閉症の子どもはオウム返しのように言葉を繰り返すことがあります。さらに、年齢が上がると、話し方に独特のイントネーションが加わり、普通の会話とは異なることもあります。また、他人の感情を理解するのが苦手で、誰かが泣いていても笑ってしまうことがあります。人との関係性を理解するのも難しく、「母親は家族」「医者は病気を診る人」「先生は勉強を教える人」といった認識がうまくできません。そのため、親子の絆を築くのにも時間がかかることが多いのです。

自閉症の子どもは、特定の行動や興味に強いこだわりを持つことが多く、例えば、頭を振る、手をひらひらさせる、体を揺らすといった行動を繰り返すことがあります。先ほどの子どものように、同じ動作(フタの開け閉め)を何度も繰り返すこともあります。また、特定の食べ物しか食べたがらない、同じ毛布を使い続ける、いつも同じ道順で歩く、決まった服しか着たがらないといった行動も見られます。

興味の対象も非常に限られており、例えば車が好きな子は車のおもちゃに強い執着を持ち、他のおもちゃには関心を示さないことがあります。また、掃除機や扇風機など、機械的なものに異常なほど興味を示す場合もあります。

自閉症の子どもは、感覚に対する反応が通常とは異なることがあります。例えば、光るものを触りたがったり、奇妙なものを舐めたりすることがあります。逆に、人に触れられるのを極端に嫌がることもあります。音や光に対して非常に敏感な子も多く、強いストレスを感じると不安になり、怒り出したり、他人を叩いたり噛みついたりすることもあります。

また、自閉症の子どもの多くは、知的発達の遅れや学習障害を併発することがあり、一般の子どもよりも不安障害、うつ病、強迫性障害、多動症(ADHD)を発症しやすい傾向があります。睡眠障害もよく見られ、食べるものの偏りから栄養不足になり、下痢や便秘を引き起こすこともあります。これらの特徴や行動は、生後18カ月頃から現れることが多く、早期に気づくことで医師による適切な診断と治療につなげることができます。

自閉症の人々を治療または支援する単純な目標は、子供の社会的、言語的、適応的スキルを向上させ、否定的な行動(暴力、揺れなど)を減らし、学習スキルと認知スキルを向上させることです。 (シャッターストック)
自閉症のある子どもへの治療や支援の基本的な目標には、社交・言語・環境適応能力の向上、暴力や体を揺らすといった行動の軽減、そして学習や認知能力の強化などが含まれます(Shutterstock)

 

自閉症の子どもをサポートする6つの方法

自閉症と診断されたからといって、すべての子どもが同じ困難を抱えるわけではありません。自閉症の子ども一人ひとりに、得意なことや苦手なことがあり、困難の現れ方も異なります。例えば、ある子は人との関わりが苦手でも、認知能力には問題がないことがあります。一方で、言葉の発達が大きく遅れているだけでなく、知的な発達にも課題がある子もいます。そのため、支援や療育を行う際には、子どもの特性や困難さを総合的に把握し、それに合った適切なサポートを提供することが大切です。

自閉症の子どもを支援するうえでの主な目標は、社会性や言葉の発達、環境への適応力を伸ばすことです。また、攻撃的な行動や特定の動きを繰り返す行動を減らし、学習や認知能力を高めることも重要です。では、これらの目標を達成するには、どのような方法があるのでしょうか?

1. 早期診断と早期教育プログラムの実施

多くの研究によると、子どもの自閉症をできるだけ早く発見し、早期教育プログラムを始めることで、より良い発達が期待できることが分かっています。

早期教育プログラムとは、自閉症の子ども一人ひとりの特性やニーズに合わせて作られる教育計画のことです。特に効果的とされているのが、専門家が子どもの行動を詳しく分析し、応用行動分析(ABA:Applied Behavior Analysis)という手法を用いて支援する方法です。ABAでは、特定の行動が起こる原因と結果を理解しながら、望ましい行動を増やしていくことを目指します。

例えば、子どもがお腹が空いたとします(原因)。そして、ミルクの入った哺乳瓶を指さします(行動)。それを見た親がミルクを作ります(結果)。このように、行動の前後の関係を理解しながら、子どもが適切に意思を伝えられるようサポートします。具体的には、哺乳瓶を指さしたら、親と目を合わせるよう促し、それができたらミルクを作るようにします。次のステップとして、「ミルク」と言葉で伝えられるようになったら、そのタイミングでミルクを作る、というように、少しずつ適切な行動を増やしていきます。

専門的なABA教育機関では、さまざまな指導方法が取り入れられています。基本的には、教師が1人または2人の子どもを担当し、個別指導を行います。効果的な学習時間の目安は、週に最低25時間(平日5日間、1日5時間)とされています。主な指導内容は、言語の発達、コミュニケーション能力、遊び方、学習習慣、模倣、自己表現力などの向上を目的としています。また、子どもの成長に応じて定期的に評価を行い、その時々のニーズに合わせた教育計画を見直していきます。

2. 子どもの学習に積極的に関わる

一部の学校では、保護者が教育に積極的に参加することを許可しています。また、言語療法士や作業療法士などの専門家が家庭を訪問し、子どもに指導を行うこともあります。保護者は、こうした指導に積極的に関わり、専門家の方法を学んだうえで、日常生活の中で子どもと一緒に実践することが大切です。

3. 小さな学習目標を立てる

早期教育や行動分析による支援のほかに、家庭で親ができることはあるのでしょうか? もし親が、形の認識など簡単な認知力を子どもに身につけさせたいと考えている場合、学習の目標を細かく分け、一つずつ取り組むことが効果的です。親は分かりやすい指示を出し、適切にサポートしながら、成功したときには子どもが喜ぶようなご褒美を与えることで、学習を促すことができます。

例えば、最初に「これは丸だよ」と伝え、次に子どもの手を取って丸い形のものを持たせます。そして、最後に子どもが形を認識できたら、ご褒美として好きなおもちゃやおやつを与えます。

4. 刺激を減らす

感覚が敏感な自閉症の子どもは、特定の刺激に強い不安を感じたり、過剰に反応することがあります。例えば、テレビの映像、音楽の音量、服の締め付けなどがストレスになることがあります。こうした刺激をできるだけ減らし、子どもが落ち着ける環境を整えることが大切です。また、子どもとコミュニケーションを取るときは、言葉だけでなく、目を合わせる、優しく手を握る、表情を使って伝えるといった方法を取り入れるのも効果的です。ただし、急な動きや大きなリアクションは避け、子どもが安心できるよう配慮しましょう。

5. 十分な睡眠と健康的な食生活

規則正しい生活リズムを作り、子どもが毎日十分な睡眠を取れるようにしましょう。また、加工食品を控え、できるだけ栄養バランスの取れた食事を心がけることも大切です。偏食がある場合は、ビタミンを補う工夫をしたり、医師に相談して栄養補助食品(例えば栄養ミルクなど)を取り入れることも考えられます。

6. 薬による治療

自閉症の子どもは、注意欠陥多動性障害(ADHD)、不安障害、うつ、不眠、強迫症などの精神的な症状を併発することがあります。また、衝動的な暴力行為が見られる場合もあります。こうした症状がある場合は、医師に相談し、必要に応じて薬を使った治療を検討することも選択肢の一つです。
 

自閉症は治るのか?

自閉症は完治するのか? これは多くの保護者が不安に思う問題です。答えは「可能性はある」と言えます。

子どもの自閉症の特性が比較的軽度で、早期に発見され、適切な支援を受けた場合、成長とともに自閉症の診断基準から外れるケースもあります。ただし、そのような子どもでも、言葉の発達や感情のコントロール、集中力などに課題が残ることがあります。重度のケースを除けば、多くの自閉症の子どもは、早期に発見し適切な支援を行うことで、大きく成長する可能性があります。そのためには、保護者、教師、支援スタッフ、医師などが協力し、根気強くサポートすることが大切です。子どもが周囲の環境にうまく適応できるよう支援することで、できるだけ自立した生活を送れるようになる事は可能です。
 

(翻訳編集 華山律)

黃彥鈜
ニューヨークにあるハピネス小児科クリニック院長。ハーバード大学医学部およびカナダのマギル大学を卒業している。