インフルエンザの流行シーズンも終わりに近づいていますが、台湾・新光呉火獅記念病院健康管理センター副主任の劉芃梓(リュウ ホウジ)医師は、番組『健康1+1』で、早めに受診すべき重要な警告サインや、高リスク者のための予防策、旅行者が取るべき対策について紹介しました。
劉医師は、インフルエンザウイルスはほぼ毎年変異すると指摘します。そして、自身の臨床経験から、今年のインフルエンザは例年と異なり、流行の始まりがかなり早いと述べました。
通常、インフルエンザの患者数は11月頃から増加し、年末の集まりや祝祭イベントがウイルスの拡散と変異リスクを高めます。そのため、1月から2月にかけて感染のピークを迎え、3月末から4月初旬にかけて徐々に収束していきます。
しかし、今年は10月の時点ですでに感染者数が増え始めており、ちょうどインフルエンザワクチン接種の推進時期と重なっています。これは、今回の流行が例年よりも早く始まっていることを示しています。
よく見られるインフルエンザの症状
劉医師によると、インフルエンザでは一般的に以下のような症状が現れます:
• 高熱:多くの患者が高熱を発し、体温は通常38.5〜39℃前後を推移します。
• 呼吸器症状:喉の痛み、咳、鼻水などが典型的です。重症化すると、下気道に感染が広がり、咳が悪化して痰の量が増えることもあります。
• 胃腸症状:一部の患者では、嘔吐や下痢といった胃腸の不調が見られることもあります。
• 筋肉痛:インフルエンザによる筋肉痛は、通常の風邪よりも強く現れます。
インフルエンザの重症化を示す警告サイン
劉医師は、以下のような症状が見られた場合、ただの風邪と思い込まず、すぐに医療機関を受診するよう呼びかけています:
• 高熱が続く:2日以上続く高熱。
• 重い呼吸器症状:酸素不足や呼吸困難を感じる、または慢性肺疾患を持つ人において、呼吸が速くなったり、胸の圧迫感や痛みが出るなどの症状。
• 嘔吐が続く:強い胃腸症状によって脱水を引き起こす可能性があり、一部のケースでは脳炎などを示唆することも。
• 意識の変化:意識がもうろうとする、過度の眠気、精神状態の異常など。
• けいれんや発作:中枢神経系への影響が疑われる症状。
• 低酸素状態:血中酸素飽和度が94%未満の場合、体への酸素供給が不十分であるサイン。
重症化のリスクが高い人々
劉医師によれば、以下のような疾患や状態がある人は、インフルエンザが重症化するリスクが高いとされています:
• 心血管疾患または脳血管疾患
• 肝硬変、透析が必要な腎不全、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの主要臓器の慢性疾患
• 喘息
• てんかん、脳腫瘍などの中枢神経系疾患
• 極端な肥満または低体重
• がん
また、免疫力が低下している人や、長期的な飲酒、糖尿病、免疫抑制剤を服用している人、乳幼児、子ども、高齢者などもリスクが高いとされています。
劉医師は、インフルエンザウイルスは毎年複数の型が流行するが、ワクチンは監視データに基づいて、最も流行の可能性が高い型に合わせて製造されていると説明します。そのため、ワクチンに含まれないウイルス株に感染することもあります。
高リスクの人々に対して、劉医師は毎年のワクチン接種を強く勧めています。ワクチンの目的は感染を完全に防ぐことではなく、重症化を防ぐことです。
現在使用されている「4価インフルエンザワクチン」は、A型2種、B型2種のインフルエンザウイルスに対応しており、感染時の重症化や拡大を抑える効果があるとされています。
インフルエンザの重症化とサイトカインストーム
劉医師は、台湾の女優・徐熙媛(バービィー・スー)さん(48)が、日本旅行中にインフルエンザにより肺炎を発症し、亡くなったことに言及しました。彼女のケースを分析し、病状が悪化した可能性のある要因について説明しました。
徐さんは、僧帽弁逸脱症(僧帽弁の閉鎖不全)の既往歴があり、さらに喘息とてんかんの病歴もありました。過去には発熱によりてんかん発作を起こし、入院したこともあります。こうした健康上の問題を考慮すると、彼女はハイリスク群に該当し、インフルエンザの合併症による影響を受けやすい状態だったといえます。
劉医師によれば、徐さんの症状が急速に悪化したのは、「サイトカインストーム」と呼ばれる過剰な免疫反応が関係していた可能性があります。最終的には「白肺」と表現される重度の肺炎を発症し、その後、敗血症と診断されました。これは、体内で免疫反応が過剰になりすぎたことを示しています。
サイトカインストームとは、免疫システムが過剰に反応し、ウイルスだけでなく自分自身の組織まで攻撃してしまう状態で、広範囲な炎症や臓器障害を引き起こします。この現象は、比較的若い成人にも起こることがあり、重い感染症が引き金となって、急速かつ突発的に健康状態が悪化することがあります。
劉医師は、重症のインフルエンザは単に免疫力が低下した結果ではなく、場合によっては免疫の過剰反応が臓器に損傷を与え、命に関わる合併症のリスクを高めることがあると警告しています。
インフルエンザの症状が出たら、旅行はどうするべき?
旅行の予定がある中でインフルエンザの症状が出た場合、それがレジャーであれ、ビジネスであれ、計画を中止すべきか悩む人も多いでしょう。これについて、劉医師は以下のアドバイスをしています:
- 症状を見直す:症状の重さがはっきりしない場合は、旅行に適しているかどうか医師に相談しましょう。
軽い症状の場合:高熱が続かず、呼吸困難や消化器系の重い症状がなく、全体的に体調が良ければ、医師の判断と適切な薬を受けたうえで、旅行を続けることは可能です。
- 自己判断での服薬は避ける:正しい治療のためには医師の指導に従うことが大切です。薬の種類や使うタイミングは、症状の重さによって異なります。
旅行中にインフルエンザに感染した場合の対処法
旅行中のインフルエンザ感染を心配する人に対して、劉医師は以下の予防策をすすめています:
- 必要な薬を持参する:旅行計画を医師に伝え、必要な薬を十分に準備しておきましょう。
- 目的地について相談する:旅行先に関連する健康リスクについて医師と話し合い、リスクが低ければ、症状を和らげる薬を処方してもらえる場合があります。
- 風邪薬を携帯する:軽い症状に備えて、市販の風邪薬を持参すると安心です。
- 自己判断での服薬は避ける:抗生物質や抗ウイルス薬は、必ず医師の指導のもとで使用してください。
- 症状が悪化したら医療機関へ:旅行中に重いインフルエンザ症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
- 旅行保険の検討:予期せぬ医療費に備え、出発前に旅行保険へ加入することをおすすめします。診断書などの医療記録も保管しておくと、後の保険請求に役立ちます。
(翻訳編集 華山律)
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