エイズ、中国を蝕む
【大紀元日本5月12日】現在米国を訪問中の上海市政府参事、上海政法学院エイズ法律研究センター主任の楊紹剛弁護士は5月7日、ニューヨーク市フラッシング図書館に招かれ、「中国のエイズ問題の立法について」と題する講演を行った。講演の中で楊弁護士は、中国のエイズ問題の厳しい現状を紹介した上で、エイズの拡散を防止するための立法について独自の見解を展開した。
1985年エイズの感染が初めて確認され、テロリズムと並ぶ二十一世紀の難問として、人類の生存を脅かしている。中国では近年、麻薬中毒者や輸血、性の乱れなどによってエイズ患者数は毎年30~40%増加しており、政府の統計によると、既に百万人(そのうち80%が農村居住者)に達したといわれる。国連は、エイズが中国で既に大流行寸前の状態にあるとの調査結果をまとめた。この問題を解決するためには、医学界のみならず、各方面のサポートが不可欠である。楊弁護士ら法曹界の有識者は、エイズ問題に関して立法すべきであると提唱した。
現在、エイズ感染は中国で拡大していく一方であり、楊弁護士は、その原因は中央指導部の不適切な政策と各級政府の認識不足にあると見ている。 1985年にエイズによる感染が初めて確認されたとき、中央指導部は、これは資本主義国家の生活スタイルによるものだと判断し、国境での検疫を強化しただけで、国民への教育は全く行わなかった。その後、中国雲南省で麻薬中毒者の感染が確認されたのに続いて、全国各地で次々に同様の報道がなされ、人々はエイズに対して恐怖を覚え始めた。数年後、河南省で多数のエイズ感染者が発症し、人々はやっと問題の重大性に気がついた。河南省の場合、政府幹部が、収益を増やすために農民に血を売ることを勧めた。そして、造血速度を高めるために、採取した血液の一部を他の人の同型の血液と混ぜ合わせ、同量の血液を献血者に戻すということを行ったため、エイズ感染が広範囲にわたって拡散したのである。この河南省のエイズ感染の深刻な実態は、その後、ボランティア医師・高耀傑氏の努力によって明るみに出たが、高氏は政府から様々な嫌がらせを受けた。
楊弁護士は講演の中で、社会制度の関係から、中国ではまだ、海外のように法律による有効な管理を行うことができないと述べた上で、政府はこの問題に関する法整備をしなければならず、エイズ感染者に確実な援助を提供すべきであると訴えた。
現在中国で医療保険に加入している人は僅か7.7%であり、感染者が十分な治療を受けることができないのが実情である。また、感染者とその家族が嫌がらせを受けるなど、人権も充分保障されておらず、中国のエイズに関する問題は山積状態にある。
(ニューヨーク=何賓)