自由を犠牲にして、何が得られるのか(報道解説)

【大紀元日本5月19日】中国政府は情報統制のためにしばしば、中国の民衆や海外の華人たちへ正しいニュースを伝えようとするメディアに対し、背後で密かに妨害工作を仕掛けてきた。

その中でも現在注目されているのは、ヨーロッパの衛星通信世界大手のユーテルサット社(本部・フランス、以下「ユ社」)と、独立系・非営利の中国語放送局New Tang Dynasty TV Station(本部・ニューヨーク、以下中国名「新唐人」という)の攻防戦である。「ユ社」は「新唐人」の番組を1年前から放送していたが、自動更新が保証されているはずの会社規定を無視し、「新唐人」との契約を今年4月で打ち切る意向を提示した。

この契約が継続されるか否かという問題は、中国人にとって、中国政府の検閲を受けていない唯一の番組を見続けることができるかどうか、「知る権利」と「報道の自由」をかけた由々しき一大事なのである。

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「新唐人」は2002年2月、米ニューヨークにおいて設立され、2003年7月から本格的に世界向け衛星テレビ放送を開始した。

「新唐人」は常に中国政府による宣伝を「解毒」する役割を担っていると自負している。9.11事件が米国で発生した際、米国在住の中国人たちは、世界貿易センタービルの崩壊を喜んだ。「新唐人」の創立者はその現実を目の当たりにし、いかに中国人が偏りのない、客観的なニュースと情報を流すTV局を必要としているかを痛感したと述べている。

その後、「新唐人」は中国政府からのニュースや、政府の息のかかった海外の中国語メディアからは得られないような情報を提供してきた。例えば、「SARS」が流行したとき、中国政府がその被害を否定している間、すでに「新唐人」はそのニュースをいち早く世界へ伝えていた。また、多数の死者を出した天安門事件で暴力的な政府のやり方に反対した中国元首相・趙紫陽氏が死亡したニュースは、中国国内ですぐに放送されず、人々は「新唐人」を通じてはじめて知ることになったのである。

また、「新唐人」は中国政府が香港の自由を奪うために立法化を要請した、香港基本法第23条(反逆、国家分裂、反乱の扇動、中央政府の転覆、国家機密の窃取を禁ずる法律)についてのニュースを幅広く提供した。更に、2004年の米大統領候補ディベイトや、最近の台湾大統領選挙なども放映した。

中国政府にとって特に痛手なのは、「新唐人」が容赦なく報道する中国国内の人権問題、法輪功やクリスチャンの迫害、労働者運動や民主化運動の抑圧などである。

「新唐人」は更に、グローバル中国語新聞大紀元が発行した「九評共産党(共産党についての九つの論評)」を余すところなく伝え、その論評が引き金となった共産党脱党の動きを逐一放映している。

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中国政府は、経済的脅し、政治的圧力などで「新唐人」の放送を止めようとしている。例えば2008年北京オリンピックの放映権などもちらつかせアメとムチを振りかざしていると言われ、対中国兵器輸出解禁についてはフランス人の狡猾さが表出したと評する人もいる。

アジア太平洋メディアネットワークによると、中国の国営放送である中国中央電視台(CCTV)は、30種類もの多重衛星チャンネルのパッケージを導入し、そのうち6つのパッケージは世界の99%をカバーしている。競争の激しい通信衛星マーケットにおいて、圧倒的な購買力を持つ中国中央電視台は明らかに、どの通信衛星会社にとっても垂涎の的であろう。

2003年7月、「新唐人」はニュー・スカイ・サテライト社(オランダ)との契約によって中国向けの放送を開始したが、3日後、同社は中国政府からの圧力によって放送を暗号化した。

中国政府はその後、大陸だけでなく海外での放送に対する妨害を試みている。2003年2月、アトランタADTH社(米国)は、「新唐人」との契約をキャンセルした。キャンセルの理由として、同社は中国政府や契約しているその他の中国語放送局の反感を買う事を避けたい、というものであった。

その後「新唐人」は2004年新年際の放送を、マニラにあるマーブーハイ社を通して行おうと試みたが、この会社もマニラの中国大使館から圧力を受け、放送の前日にキャンセルとなった。

全部で6社にも上る中国と関係が深い通信衛星社は、「新唐人」との契約をキャンセル、あるいは拒否したのである。

中国政府による嫌がらせは衛星放送マーケットからの追い出しだけではなかった。「新唐人」によると、中国政府はアメリカで行われるたくさんの米中友好イベントの撮影を妨害し、スポンサーや支援団体に嫌がらせを行い、「新唐人」の番組ゲストに圧力をかけ、有望なビジネスパートナーなどにも脅しをかけていた。

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「ユ社」は、中国政府が「新唐人」の衛星放送を中止しようと必死になっていることを知っている。

ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、「ユ社」の現在のあるいは元経営者らが中国マーケットに食い込むために「新唐人」とのビジネスを利用してきたことを報告している。

「ユ社」は、「新唐人」の番組が大陸で放映されたら、中国政府が拒否してくることを知っていた。思惑通り、中国政府は「ユ社」に抗議し、「ユ社」も「新唐人」との契約をいつでもキャンセルできることを匂わせた。そして、「ユ社」は、中国とビジネスを有利に進め、契約を結んだのである。

「ユ社」は中国側との蜜月を保っている一方で、「新唐人」にもゲームを仕掛けていた。「新唐人」はホームページ上で2004年4月に行われたミーティングの内容を公開している。それによると、「ユ社」のベレタ会長は「ユ社が拘束される所の欧州放送協定には、相互主義と公平性という「ヨーロッパ精神」が根ざしており、中国政府やその他公権力の圧力や経済的なインセンティブがあろうとも、「新唐人」の中国語放送をキャンセルしたりはしない」と述べた。更に同社は、「当社のチャンネルを中断するには、フランスの最高裁判所からの命令が必要であろう」とも述べた。

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「ユ社」はパリの裁判所で勝訴し、今年4月15日に「新唐人」との契約を打ち切る準備を進めていた。しかし、「ユ社」は、「新唐人」が持つ強い支援層を過小評価していたようである。78名の欧州議会議員は、「新唐人」の放送継続を支援する書簡に署名し、53名のカナダ議会議員も同様の書簡にサインした。

「国境なき記者団」の記者たちも強い支援を表明し、160ものNGO団体がブッシュ大統領に書簡を送り、「新唐人」の代わりにこの案件の仲裁をするよう要請した。世界から、何万にも上る署名が集まった。

議員からブッシュ大統領へ送られた書簡には、次のように書かれていた。「今日まで、アメリカはユ社と深く提携してきたが、これから先、独裁政府の側に付き、報道の自由を踏み躙るような衛星会社を、米国民の税金が支援する意味はない」。

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両社は今や必死の攻防戦を展開している。「新唐人」は、既に「ユ社」を信用できないが、他に行く当てがない。また「ユ社」も、5月21日を最終期限とし、その後中国との契約を進めていく可能性を示しているが、交渉が遅々として進まない様子を見ると、「ユ社」がそれを断行することによる利害の程を慎重に吟味しているようである。

「ユ社」は、今回の決定はあくまでも「ビジネスの採算性」によると主張している。しかし、「自由」は何ものにも代えられないということを忘れてはならない。恐怖とプロパガンダによって13億もの民衆をコントロールする政府を擁護することによって、つまり、“自由”を犠牲にして、なにが得られるのであろうか?「ユ社」が今週末、「自由」の価値を見直してくれることを望むばかりである。

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